東大の科類別特徴(理科一類編)

今回は東大の理科一類に関して、自分なりの考察を踏まえながら述べていきたいと思う。
一言でいうと超格差社会である。異次元の天才から合格最低点で合格した普通の人(とは言ってもかなり頭がいいのは間違いない)の差が極端に激しい科類である。

昨今のトレンドを見ていると理科一類の難化が著しいようだ。米国発のAIブームにより情報系の学部の人気が急激に高まっていること背景にあるようで、今では東大理三、京大医学部医学科、阪大医学部医学科、東京医科歯科大学に次ぐ難易度になってきたようだ。理科一類は合格者が1000人程度いるので、その平均をとってもこれらの医学部とそん色がないという事実からその層の厚さには驚愕せざるを得ない。(ただそれでも筆者は医学部医学科への進学を勧めたい、特に発達障害持ちであれば)

筆者が受験生であった頃から理科一類は難関であり、高校でも学年のトップ3は全員理科一類に進学していた。ちなみに筆者の高校は普通に医学部にも学年の4分の1程度は進学していたが、彼らを差し置いてトップレベルの学生は理科一類に進学していた。勿論彼らは東大模試でも理科一類の中で上位を占めているのだが、それでもそれよりも上の学生が全国では20人程度存在したと記憶している。東大の冠模試では当時は名前とその方の高校の所在地まで記されていた。前にも記述したが、文科二類などはその上位層が東京、神奈川で占められているのだが、理科一類になるとその限りではなかった。勿論、東京、神奈川、兵庫等も上位に多いのだが、トップ10のレベルであっても普通に地方の名前が入ってくるし、トップが地方ということもあった。中高一貫の進学校の存在が思いつかないような地域だ。
何が言いたいかというと、理科一類の上位に来ているには、数理系科目の本当の天才たちでこれらの科目においては生まれ持った才能がものを言うので、いくら都会できちんとした教育を受けてきてたとしても、これら本物の天才には勝てないということだ。
イメージとしては、どれだけお金をかけても浜辺美波や橋本環奈、大谷翔平などのいわゆる「ギフテッド」には勝てないのと同義である。ただその分発達障害の学生も多く、彼らは何かを犠牲にして東大にやってきたような気がする。
では合格最低点付近になるとそれは凡人なのかというとそうでもないと思う。筆者の高校でもかなり成績が良かった学生でも普通に落ちていた。彼らの合格最低点を聞くと理科二類には合格していたことが大半なので、もうどうしても東大に入りたいなら理科二類にした方が賢明なのではないかと思う。
筆者も実は最初は理科一類を目指していたが、あまり理科に興味が持てず、文系に途中で進路変更した。今振り返ってみると理系にしていても何とか合格していたかもしれないが、配点が大きな数学の運要素が強いので浪人していた場合にそのプレッシャーの中で理科一類に合格していたかと聞かれると正直自信が持てない。
あまり医学部をdisると叩かれてしまいそうだが、そこまで難しくない問題を精度高い確率で解けるか否かといった点と比較的多浪が認められやすいことから理科一類の方を受験するプレッシャーは医学部よりも高いのではないかと思う。
本当に理系科目に秀でている学生が医学部ではなく東大理系に集まるのはマクロな日本の将来を考えたときには良いことであると思う。(ミクロな個人の人生という観点で見ると医学部医学科で将来期待できる待遇の期待値は東大理系のそれを上回るのでここに経済学の世界でいう合成の誤謬があると思う)医学部に進学してから大事なのは理数系科目の才能ではなく、とにかく暗記力だということはよく聞くので。

首都圏の超進学校と地方公立出身の生徒がどの程度の割合で存在しているかは定かではないが、間違いなく言えるのは文系よりは地方出身者が多いということである。背景としては理系科目に関しては能力がある学生であれば、塾などに頼らなくても一人で完結してしまうし、官僚の魅力が低減してしまった今、そもそも地方から東大文系には進学するメリットがあまりないことも背景にはあると思う。(それに加えて、地方では社会2科目を学校で学習できる体制がないため、最初から東大文系は進学先の選択肢から外れてしまうということもあるのかもしれない)
理科一類は全部で1000人ほどいるのだが、9割弱は男子である。そのためインカレサークルの大多数は理科一類の生徒が占める。筆者も周りに理科一類の生徒が多かったが、彼らといる時が一番気楽だった。男子校上がりも多い上、現在進行形で男子校なの発達障害気味のものが多かったというのもあるのかもしれない。
雰囲気でいえば、文二と理一は似ているところがあると思う。両方男子校で、どちらかというと実利的な人間が比較的多いと思う。ただ理科一類はより男子比率が高く、クラス40人の中で女子は2~3人とかそのレベルであるみたいだ。
理科一類の多くは工学部に進むのであるが、前述したように昨今では情報系の学科が非常に人気を博している。具体的には理学部情報学科、工学部計数工学科、工学部電子情報工学科辺りである。これらの学科群に加えて、工学部機械B、システム創成学科辺りも対象になるかもしれない。ちなみに筆者がそこそこ詳しいのは、二年生を二回送っており、二回目の進学振り分けでは本気で文二から工学部計数工学科を筆頭に工学部を目指していたからだ。計数工学科は当時からすでに人気があり、文科二類から行くには相当なハードルがあった。(結局、点数がそこまで上がりきらず計数工学科には届かなかず、色々考えた上で経済学部に進学した)当時人気があったのは、情報系ブームという実利的な理由よりも、応用数学を扱っており、単純に優秀な学生が目指していたからだと思う。
理学部の情報学科に関しては、当時は全く人気ではなく平均以下の点数であっても進学出来たと記憶しているので隔世の感である。
筆者が理科一類の友人から聞いた話では情報系の学科は総じて他の工学部の学科と比較して拘束時間が短いという観点でホワイトであるとのことらしい。化学系や生物系の学科と比較して深夜に及ぶ実験がないことが背景にあるのかもしれない。
金融機関で働いていると分かるのだが、クオンツやアクチュアリー、トレーダー、リスク管理などの数理的な素養が要求される分野においては、どこであっても東大の情報系学科を出た人を見かける。金融専門職の採用担当者からすると、これらの学科で情報系の学問を確り修めている学生は喉から手が出るほど欲しいはずだ。ただ近年では、IT系(データサイエンス含む)でもこれらの学生の需要が高まっているし、総合商社などの異業種もこれらの学生の確保に積極的になっているので相当厳しい獲得競争があるのではないかと思う。ちなみにクオンツやアクチュアリーは別に必ずしも情報系である必要はなく、東大工学部であればどこの学科であっても内定獲得の可能性は高いと思う。それほど東大工学部の学生に対するニーズは高いのだ。ちなみに仕事をしていても彼らは優秀である。人間的に怪しい人は結構多いが、それをカバーしてお釣りが来るほど理数系の能力が高いと思う。
特に債券やデリバティブ、リスク管理などの高度な数学的素養が要求される分野においては彼らの能力が際立つと思う。
筆者の意見ではあるが、どうしても情報系の学科に行きたいのであれば、東大理一はおススメしない。進学振り分けでそこの学科を狙うにはかなりの不確実性を伴うからだ。そうであれば、京大や東工大の情報系学科または一橋大学のデータサイエンス系の学科を狙う方が確実にこれらの学科に進学できるため賢明な選択肢だと思う。(とは言え、これらの学科も既にかなりの難関になってしまっているのが難点ではあるが)。別に院から東大に入ることも出来るし(そちらの方が難易度は低いし)、これらの学部学科を出ていれば東大に匹敵する就職先を確保することも可能だと思うからだ。(何なら東大の他の学部学科よりはよほど実務的で就職先も良いだろう)
情報系学科の話が長くなってしまったが、筆者が在籍していた十数年前は、工学部航空宇宙工学科や物理工学科、理学部物理学科に最優秀層が進学していた。かつては純粋な物理系の方が人気があったのだろう(今ほど実利的な観点で学部学科を学生が選んでいなかったのかもしれない)
これらの学部学科が今どうなっているのかは分からないが、近年の理科一類の難化ぶりを見る限りではきっと全般的に学生のレベルも上昇しているのではないかと推察する。

工学部全般で見ればTwitter等を見ていると近年では、IT系やコンサルへの就職者が増加しているようだ。筆者が卒業した頃はまだ製造業(いわゆるメーカー)への就職者が多かったので、こちらもかなり変化が生じていると思う。近年、都心部への一極集中と製造業回避の動きがかなり強まっているので日本の将来が心配ではある。

先ほど医学部医学科の方が工学部進学よりもおススメであると書いたが、あくまで筆者の意見ではあるが医学部医学科であれば5年程度遅れて入っても(何なら30代前半で入っても)人生お釣りが来ると思うので、最初は東大理系に入って、途中で興味を失ってしまったり、就職活動で躓いた場合に医学部医学科を再受験するのもありかなとは思う(実家が太い場合に限る)。医学部→工学部の進路変更は将来の働き口がなくなるという観点で正直厳しいが、工学部→医学部であれば、社会人になってからでもやり直しが効くからだ。こうしたこともありその2つで迷っているのであれば、最初はとりあえず東大理系に入ってしまうのも手かもしれない。

筆者の周りでも理一出身で医学部医学科を再受験した学生・社会人は知っているだけでも10人程度知っている。彼らは全員半年から一年程度の学習で医学部に合格しているし、それも理三を筆頭に阪大医学部、千葉大医学部、横浜市立大の医学部等錚々たるところに余裕で合格している。こういったこともあるので東大理系の学生はいつでも医学部に行けるというオプション付きで学生生活を送っていたのかもしれない。(実際にその権利を行使するのは勇気が必要だとは思うが)
色々書いてしまったが、東大理系はやはり相当優秀でおススメの進学先であるというのが筆者の結論である。