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来週の相場見通し Vol.1(20/6/8~20/6/12)

*株式(日米を想定)、米金利、ドル円を中心に議論します

①先週の相場振り返り(6/1~6/5)

株式市場は大幅上昇。
懸念された米中対立問題はトランプ大統領が強硬な動きに出なかったことでリスクセンチメントは改善された状態で週初を迎える。月曜から週半ばあたりまでは、ISMやADPなどの米経済指標が改善を示し、ロックダウン緩和が徐々に広まる中でリオープン期待からの楽観論が市場を支配する展開に。先週時点で上方にブレイクした株価は、ショート勢の買戻しを巻き込みながらスピード感を伴って上昇。米国の抗議デモや米中対立HL(中国の国営企業に対する米国産大豆購入の一時停止指示)などのリスクオフ要因も存在したが、悪材料はほぼ無視する形での一方的な値動きとなった。週後半、4日(木)にはECBが大規模な追加QEを決定すると、発表後こそ大幅上昇するも、その後は足もとの株価上昇ピッチが速かったことから利食い売りに押される。結局は欧州株はマイナス転で引け、米株も前日レベルで引ける。今週最大のイベントとなったのは5日(金)の5月分の米雇用統計。750万人の雇用者減が予想されていたが、ふたを開けてみると250万人超の雇用者増と目を疑うようなポジティブサプライズ(最も強気なエコノミスト予想でも80万人減だった)。結果を受けリスクセンチメントは一段と改善し、株価は大幅上昇。NASDAQはコロナショック前の2月の史上最高水準まで回復、S&P500も3200レベル、NYダウも27000レベルとコロナショックによる下落の80%程度までカバーされる。
米金利は、株価と歩調を合わせる形で週を通して上昇基調で推移。
短期金利は政策にアンカーされていることもあり、週を通してベアスティープの動きとなる。ただ、雇用統計発表後の大幅ベアスティープ後はさすがに反動が入り、そこから引けまでは継続してブルフラット。
為替市場では、円安ドル高が進行も全体ではドル安が加速。
ECBの大規模追加QE決定後もERが対ドルで大幅上昇するなど、今週はひたすらリスクセンチメント改善=ドル安の動きが続いたが、金曜の雇用統計発表後はさすがにドルの買戻しが入った。一方、ドル円はリスクセンチメントに支えられ109円半ばまで上昇する円安ドル高となったため、クロス円は久しぶりに大幅上昇の1週間となった。

<メンバーコメント>

H:リスクオンムードのなか、債券市場は需給が緩んだこともあり、週後半にかけて金利上昇・株上昇が続いた。ファンダメンタルズは悪材料への反応は限定的である一方で、好材料に対してはしっかり反応する相場だった。

U:DM株で始まったアンワインドの動きが、ついにソブリン、EMまで波及してきた印象。金利はFEDの対応が注目されるが、金曜のオペ予告が超長期減額で期待を下回っても反応薄だったのは、もはやスティープナーが超コンセンサストレードだからか。

K:テクニカル指標ベースに見ているが、先週は全ての指標で強気度が増加し続けた

S:雇用統計の数字は滅多に見られないレべルのポジティブサプライズ。株は2週前くらいから上抜けしてからは買い遅れた人やショート勢が買わされ続ける形で終わりが見えない上昇だったが、雇用統計がダメ押し的な動きになったかもしれない。


②テクニカル指標

移動平均をベースとした分析では、いずれの対象市場も強気度が増加しており、簡単には軟化しそうにない状況。引き続き強気姿勢を維持。


③来週の注目イベント

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来週の経済指標・入札等のスケジュールで注意したいのは、米入札(10,30年)、Fedオペ、FOMC、日本のメジャーSQあたり。
引き続き米中対立に関連するHLには要注意。また米国の抗議デモは収束が見えず、今のところマーケットの反応は軽微だが引き続きリスク要因。また、Brexitに関しても今月末までに交渉期間の延長有無の判断がされる予定だが不透明感が強い。


④来週の相場見通しディスカッション

*投資のジュークボックスでは、市場テーマを「需給環境」「ファンダメンタルズ」「金融政策」「テクニカル」「その他(地政学等)」の5つの観点でとらえ、どのテーマでどう市場が動くかについてメンバー全員で議論していく

H「需給環境が支配する流れで、株は買えてない人が引き続き買ってくる相場、債券は米10年金利が1%手前まで上昇してきたので、一旦は買っていいレベルだと思っている。なので株・債券いずれもロングのイメージ。注意したいのは米中対立HLで、流れを変える可能性があるので注意。ファンダメンタルズについては、これまでは悪くて当たり前という中で市場の注目度は低かったが、雇用統計を受けて捉え方が変わる可能性も。雇用統計で目線が上がってしまったため、逆にここからは悪い数字が出てくれば、以前のようにスルーされない可能性もあると思うので、指標リスクにも注意したい。今週はFOMCを控えるがノーイベントだと思う」

U「株は周りを見ても買えてない人が多い感じなので、自分もロングのイメージ。ただ、債券については具体的にどのプレーヤーが買ってくるイメージ?AM系はロング超気味に見えたり、金利系のETFフローも流出超に転じてるので、本当にしっかりとした需要が出てくるのかどうかと。。」

H「1%であればリアルマネー系は買ってくると思う。絶対値バイヤーは利回り確保に苦しむ中でやっと戻ってきた米10年1%水準手前というのは十分買いたい水準にあると思う。」

S「債券の需給環境という意味では、今週は米3-10-30年入札を控えていて、また、小幅ではありながらもFedは来週分もQE減額をしてきたけど、それでも需給良好のイメージ?」

H「もちろん供給が控えていることは確かだけど、入札に向けての調整(コンセッション)は先週の大幅上昇でおおかた終えていると思う。」

U「僕は、今週は需給に加えて金融政策が重要だと思ってて。株については、雇用統計を見て、買えてない人たちが改めて買わなくちゃいけない流れかと思う。債券については、Fedは来週分もQEを減額してきたけど、金曜の発表後の市場反応は軽微。先週は大きくベアスティープしたため、もし何かFedに思いがあれば、月曜日のオペの中身で表現してくる可能性があると思うので、そこには注目している。Fedの介入姿勢がみえなければ来週前半は金利が上昇するリスクがあると思ってる。一方、水曜のFOMCでは久々に経済見通しが示されるが、そこで改めて厳しい経済見通しが示され、積極的な金融政策で対応していく姿勢が強調されれば、素直に5-10年ゾーン中心にブルスティープで反応するんじゃないかな。」

S「株については、現在はショート勢の巻き戻しとロングし遅れた人たちが追随買いする相場付きなので、ポジションが一旦クリアになる先物・オプション満期のタイミングまではこの流れが続くイメージで、日本で言えば来週末、米国で言えば再来週末、なのであと1-2週間はじわじわ上昇かと思っていたが、雇用統計を見てちょっと気持ちが変わってきた。逆説的かもしれないけど、素直にポジティブな結果が出て大幅上昇したことで、一連の上昇を一旦やり尽くした可能性があるようにも思う。実際、雇用統計後は出来高を伴って上昇したものの、その後は週末を控えた動きだといえばそれまでだが、反動の動きが目立ち、株はやや上げ幅を縮小、金利は大きくブルフラットで反発。振り返ってみれば、この2週間の株価上昇は、「経済活動再開期待」、「米中対立激化回避」みたいなある意味漠然としたネタで連日上昇してきて、なぜか一番の上げ材料そうなECB追加緩和ネタで弱含むなど説明しにくいマーケットだったが、素直な雇用統計の動きで一連の流れが一旦終わるかもしれない気がしてきた。ただ、そんなに強い自信はない。笑 金利は、株が一服するという前提であれば素直に買いかと思う」

K「僕はあくまでテクニカルベースでみているが、足もとの値動きは非常に強く、見ている指標でも強気度が上昇してきている。今週内に強気度のレベルが軟化するにはそれなりの下落が必要になるため、引き続き株は強気目線継続だと思っている。」

S「僕以外はみんな株は強気ってことだね。笑 もともとはデリバ期限までは買われるイメージで、別に株上昇シナリオに違和感はないので合わせます。金利は、全体的には買って良さそうだけど、リスクを警戒しながらという感じかな。あと、議論してなかったけど、為替(ドル円)はどう?」

U「ドル円はずっと小動きが続いていたけど、やっと上に抜けてきて一気に109円ミドルまで到達した感じだよね。この動きをどう考えるか。」

H「オプション市場を見ても特に大きくリスクを意識しているような兆候はなく、落ち着いている印象。金利に影響を受けながら動きそうなイメージ。」

S「最近はリスクオン=ドル売り(ただしドル円を除く)の動きだったけど、リスクオフが来た時に=ドル買いになるのだとしたら、その時もドル円は安定推移する可能性もありそう。」

U「僕も今週は金利ベースの動きになると思うので、債券のロング目線に合わせて、ドル円も横ばい~小幅円高ぐらいのイメージかな。」


⑤来週の相場見通し結論(週末対比)

株:小幅上昇
ポジション:小幅ロング

引き続き需給環境が影響し、買わざるを得ない人、買い遅れている人が追随買いのマーケットを想定。ただし先週の上昇ピッチからは減速するイメージ

金利:横ばい~低下 
ポジション:ニュートラル~小幅ロング

米10年金利0.9%は1%をバックに相応の需要が見込めるレベルとみるも、足もとの上昇モメンタムが強いことや今週に入札を控えることなど警戒要素もあることから、ニュートラル~小幅ロングに

為替(ドル円):横ばい~円高
ポジション:小幅円ロング

為替は金利動向が影響する環境と予想。金利のポジションと整合的なポジションとして小幅円ロング

その他の留意点

・米中対立関連HL
・米抗議デモおよび政府対応HL
・コロナ関連HL(リオープンHL、ワクチン関連HL、感染者関連HL)

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