展覧会「洛西ニュータウン」
私が初めて洛西ニュータウンに訪れたのは2年前に京都市西京区に引っ越してきた頃だ。
自宅からニュータウンへ向かう道中の地域では、古くから竹の子農家が営われており、今も一部だが広大な竹林が残っている。そして竹林の中、登山のように延々と坂道を登ると、徐々に視界が開け、洛西ニュータウンの高層住宅群の景色が広がっていた。
郊外へと向かう道のりで、小さな計画都市と出会う。なんだか不思議な風景体験だった。
□洛西ニュータウンの誕生から今について
1975年に洛西ニュータウンの入居は始まった。
1950年代後半から京都市内でも人口増や工業化による郊外での乱開発が問題となっていた。そこで竹の子の農業地域として未開発のままだった京都市南西部において、民間に先んじた公的なニュータウン計画が行われた。
市街地から遠い山沿いに立地した洛西ニュータウンであったが入居開始から5年で全戸数の60%が入居、最盛期には3万5000人だったものの、現在は若年層の流出に伴い22899人に減少する。
人口の中での高齢者の割合は、京都市の平均より遥かに高い。それはこの70年代のニュータウン計画がベビーブーム世代の強い住宅需要に応えるためのものだったこと、そして彼らの子世代は町外へと移住しているからである。
当初は京都市営地下鉄東西線が延伸される計画であったが、財政難を理由に計画が頓挫しており、公共交通手段は未だバスのみである。1980年にこの地に移設された京都市立芸術大学は京都駅東部の再開発事業により2023年、移転する。
かつての拡大指向からコンパクトシティに向け、これからの都市像が転換していく中、現在、京都市において洛西ニュータウンが話題として触れられることは少ない。
突如、山麓部の田園地帯に公共事業として誕生したこの一帯の風景は激動の変遷を持っている。だが実際に街を歩くと、それとは裏腹に、私や皆と同じような、一般的で普遍的な暮らしの風景が広がっている。
歴史ある観光都市として有名な京都市の、あまり目を向けてこられなかった側面の一つとして、この街を記憶する。
6月2日(木)より個展「洛西ニュータウン」を開催致します。
個展「洛西ニュータウン」
2022/06/02(木)~12(日)
12:00~18:00
※最終日午後4時閉廊
BAMI gallery
京都市下京区二人司町21
アクセス
http://combine-art.com/html/gallery/ga_access.php
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