2017年7月の記事一覧
三宅勇介の「詩歌横断的現代詩評」:引用をめぐる問題のアクチュアリティーについて―後期吉岡実論(その2)
前回、吉岡実の詩型を取り上げ、トポロジー的な解釈を試み、中期の多行俳句のような横への志向から、後期の長歌的な縦への志向への変化の中で、それがどのような潜在的可能性を持つのかという事を考えて見たのだが、今回は、もう一つの後期吉岡実の詩の特徴である、自作品への、さまざまな芸術分野からの文章や会話の引用の問題を考えてみたい。
吉岡実がそうした他者の文章や会話を、自作品に積極的に取り入れ始めたのは、『サ
大岡信を読む(1):「大佐とわたし」
大佐とわたし
旧き悪しき戦略思想家たちに
大佐 大佐 大佐
あなたを愛しているのはわたしです
あなたはどこへいらっしゃるのですか
退屈な朝八時 学校へいらっしゃいますか
大佐 大佐 大佐
わたしがあなたを愛するのは
わたしが爆弾を愛するからである
引金の奥につまっている
可能性の精密なかたまりを
愛するからである
十万個の部品が
いっせいに連動する地震的な美しさを
愛するからである