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馬奈木厳太郎氏による性加害について:ステートメント

榊氏の性加害が明るみになってから1年が経ち、その間、被害当事者の方々が声をあげ、性加害やハラスメントをなくそうという様々な動きがありました。しかし、明るみになった事案の多くは、被害者の納得のいく帰結には至らず、加害者は被害者に謝罪すらしないままです。

残念ながら、期待されていた業界内でのルール作りも未だ進まず、結局は加害者側も正式なペナルティを受けることなく活動できています。更には時間を置き、事態が収束していないにも関わらず、復帰してしまう加害者もいます。

そのようなもどかしさを抱えるなか、文化芸術活動を支援し、ハラスメント防止講習に携わってきた、弁護士の馬奈木厳太郎氏が性加害によって提訴されました。

救いを求めた先で再び傷つくかもしれないという懸念は、これまでも性被害を訴えづらい理由の一つでした。本件はそうした不安をさらに大きくするもので、これまで被害者救済に心を砕いてきた皆さんの努力を踏み潰すような、許されない行為です。まずは被害者の方が護られ、1日も早く穏やかな日々に戻れるよう祈っています。

同時に本件は、馬奈木氏をハラスメント対策の有識者として、権威付けに手を貸してしまった映画関係者にも責任の一端があるのではないでしょうか。なぜなら任命責任があるからです。「ハラスメント対策を訴える映画関係者たちと、一緒に活動する弁護士」として、馬奈木氏が社会的に認知されてしまったため、被害者は被害を訴えづらくなり、苦しんだことが想像出来ます。 

例えば、昨年11月にドキュメンタリー映画『After Me Too』の上映後、馬奈木氏はハラスメント対策に関するトークを実施しました。主催者は馬奈木氏の性加害報道後、真っ先にお詫びのステートメントを公表しました。誠実で迅速な対応です。

他方で、馬奈木氏を起用してきた映画関係者から、上記のような対応が多く見られないことを大変残念に思います。JFPが実施した「日本映画業界における労働実態調査2022-2023」の自由記述欄を読むと、馬奈木氏の件は氷山の一角だと認識できます。

映画業界の性被害・ハラスメントについて当事者が語る言葉には、「泣き寝入り」「たくさんあって書ききれない」といった言葉が多く見受けられました。私たちが目にしている実態は、数多の苦しみのほんの一部でしかないことを思い知らされます。

同時に、「プロデューサーは監督と同様にセクハラをする存在、あるいは相談したけれど助けてくれなかった存在」、「男性スタッフは直接加害に加わっていないものの、女性スタッフが性的言動に晒されている場で加害者の側に立つ、ハラスメントを強化する傍観者」とアンケートに答えた女性たちは語っていました。

ハラスメントおよび性加害は、人権の問題です。

大手映画会社に限らず、インディペンデント映画関係者・劇場・配給・映画祭等、映画に携わる全ての人々が認識すべき問題です。

打開策として、"ハラスメント防止の啓発・教育プログラム"の早期導入・実施が必要ではないでしょうか。映画制作現場に限らず、映画教育現場・映画祭・配給・劇場など業界全体での実施が望まれます。他にも、映画人を救済する相談窓口、加害者へのペナルティや更生プログラムなどの実施も検討すべきです。

2023年春以降、映画制作適正化機構の取り組みがスタートします。映画を取り巻く環境で人権侵害が起こらぬよう、映画関係者・観客・メディアと注視していく必要があるのではないでしょうか。
今後、ハラスメント・性加害の事案に関して、被害者の救済が最優先にされることを強く求めます。

2023年3月27日
一般社団法人 Japanese Film Project

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