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JFP団体設立の経緯(ステートメント)

歌川達人
映像作家・アーティスト。主にドキュメンタリーのフィールドで活動する。立命館大学映像学部卒業後、フリーランスとしてNHK番組やCM、映画の現場で働く。短編ドキュメンタリー「時と場の彫刻」がロッテルダム国際映画祭2020、Japan Cuts 2020で 上映される。JFP発起人。

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20代前半、私はいくつかの映画現場で働きました。仕事に不慣れだった私は、作業が追いつかず、不眠の日も多く、怒鳴られたり、人格否定されることも日常茶飯事でした。睡眠不足にも関わらず、運転せざるを得なかった若い制作スタッフが交通事故で亡くなった話も何度か耳にしました。次第に、壮絶な労働環境に耐えられなくなった私は、映画現場の仕事から離れていくようになりました。

その後、私はこう思いました。

「映画制作現場の問題は、現場の先輩たちが悪人だから起こるのではなく、システムや環境に問題があるから発生してしまうのだ。であるならば、システムや環境を変えることができれば、私が苦しんだ問題はなくなるのではないだろうか。」

そう考え、日本映画の労働環境やダイバーシティを考える活動に精を出している時期がありました。しかし、その際、必ずと言っていいほど浴びせられる言葉がありました。「それはお前が言うべきことではない」「映画制作者として尊敬される立場を得たときに、初めて、あなたの言葉に重みが生まれるのだから、今のあなたがやる必要はない。そんなことより、もっと働いて経験を積みなさい。」と。

しかし、上の世代が課題解決のために、何か具体的な策を講じているでしょうか。当事者である若い世代が課題解決に向き合って、声を上げていける環境を作っていかなければ、いつまで経っても良い環境へ変わっていかないのではないか。

映画業界の若手人材不足や低賃金長時間労働環境を嘆きつつ、昔は良かったと酒場で愚痴をこぼすだけではみっともないし、次世代に対する説明責任を果たしていないのではないか。せめて、「自分の世代ではちゃんと課題に向き合ったのだ」と未来に託せるような資料や成果を残したい。

主な論点は、「ジェンダーギャップ・持続可能な労働環境・若手人材不足」です。有名監督や業界団体の意見だけではなく、比較的立場の弱い人々(若手人材や女性)が声を上げられる回路を作るためにも、私たちは様々な人々と連携し、課題解決に向けて活動していきます。


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