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海外映画界のリサーチ

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JFPでは、海外映画界のリサーチを実施しています。
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「なぜキム・ギドク特集上映が中止になったのか」を考えるために

1)上映中止の経緯と論点2021年12月に都内劇場で予定されていた特集上映「キム・ギドクとは何者だったのか」が多くの反対の声により、中止となりました。 特集上映を企画した配給会社クレストインターナショナルは、下記のコメントを残しています。 上記の出来事を受け、映画界の内外問わず、「なぜ特集上映を中止するのか」「やりすぎではないか」「キャンセルカルチャーだ」というような言説が、多く見受けられました。 しかし、そもそも日本の映画人や観客は、「キム・ギドクが何をしたか」を知っ

韓国映画界の【契約書ひな型】:スタッフ・監督・俳優・上映配給

JFPでは、令和5年度文化庁委託事業「芸術家等実務研修会」を受託。「映画スタッフのための契約書ひな型」を作成し、2月上旬にWeb上で無料公開を予定しています。詳細は以下リンクにて、順次更新。 https://jfproject.org/contract 本事業では、韓国映画界の事例を参考にしています。韓国映画界では、多数の契約書ひな型が一般公開され、実際に撮影現場で使用されています。今回はその中から、以下4種類を翻訳しました。 日本と韓国では法律が違い、直接比較できない部

被害者支援のために出来ること:韓国映画界の事例から

相談窓口・予防講習を設けたとしても昨今、ハラスメント対策の必要性が社会的に高まり、相談窓口・予防講習を求める声が増えてきました。 他方で「現場でどのように性暴力・ハラスメント事件を処理すれば良いか」、分かりやすく具体的な手順を示したガイドラインが認知されていません。 事件処理を求められる制作会社・プロデューサー・現場スタッフが、具体的な処理方法が分からず、途方に暮れてしまうケースも少なくありません。 被害者心理として、相談窓口は設けられたけれど、組織の事件処理手順に十分

海外調査vol.01 :文化創造産業の法規制編

本調査シリーズでは、自国の映画界活性化に向けて、各国が実施する取り組みや法案などを調査していく。 第一弾は、多国籍ストリーミングサービス事業者(NetflixやAmazonなど)に対し、財政的貢献を義務化する法案や取り組みの初期調査を実施。 日本映画界における共助の仕組みが議論される昨今、参考資料として活用いただけますと幸いです。 どういった取り組みか?欧州では、NetflixやAmazon Primeなどを始めとした多国籍ストリーミング事業者に、国内映画産業への財政的

セクハラ・性暴力の定義(韓国映画・性平等センター“ドゥン・ドゥン”)

このページでは、韓国映画・性平等センター“ドゥン・ドゥン”が公表している「セクハラ・性暴力の定義」をセンターの許可を得て翻訳しています。 昨今、日本でも性加害の問題が取り上げられてますが、その対策防止策の参考にしていただけますと幸いです。 韓国語の原文掲載サイトはこちらから 【セクハラ・性暴力とは?】▼性暴力(sexual violence)とは?現行法では「わいせつ行為」や「強姦」を「性暴力犯罪」と狭く規定して処罰しています。しかし現在「性暴力」は、個人の性的自己決定

韓国リサーチvol.02(DGK 性暴力防止委員会)

DGK(韓国映画監督組合)性暴力対策委員会のお二人に話を伺った。 ▼DGKと性暴力防止委員会とは?DGK:DGKは監督達が所属するギルド(共同組合)です。(※解説文「ギルトとユニオンの違いとは?」文末記載) ドンリョン:私は性暴力防止委員会の2期委員です。隣のヒョンジンさんは1期委員でした。今日は、DGK性暴力防止委員会の活動を中心にお答えできればと思います。 ヒョンジン:韓国映画業界では、性暴力ハッシュタグ運動がありました。性暴力防止委員会は、その後に作られた委員会で

性暴力防止のための行動綱領(DGK 韓国映画監督組合)

▼はじめにこのページでは、韓国映画監督組合(DGK)が公表している「性暴力防止のための行動綱領(こうどうこうりょう)」をDGKの許可を得て翻訳しています。 昨今、日本でも性加害の問題が取り上げられてますが、その対策防止策の参考にしていただけますと幸いです。 ▼中・支・申 行動綱領“中止(Stop)、支持(Support)、申告(Report)”の原則 韓国映画監督組合員がセクシュアル・ハラスメントを認知、目撃した場合、すぐにその行為を中止させ、被害者や告発者の味方となっ

韓国リサーチvol.01(韓国映画・ジェンダー平等センター"ドゥン・ドゥン")

▼韓国映画・ジェンダー平等センターとは?Q:団体設立経緯を教えてください。 最初は ”女性映画人会”があったんです。2016年に、”文化芸術界内の性暴力”というハッシュタグ運動がSNS上でありました。それを受けて、実際に文化芸術業界でどういう性暴力があったのか、その実態を調べる必要があった。 その後、映画業界の中でも「ジェンダー格差を無くす動きが必要だ」「性暴力を解決しなければならない」という認識が確かに芽生えた。そういった流れの中で、男女平等と性加害の撲滅に取り組むセンタ