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被害者支援のために出来ること:韓国映画界の事例から

相談窓口・予防講習を設けたとしても

昨今、ハラスメント対策の必要性が社会的に高まり、相談窓口・予防講習を求める声が増えてきました。

他方で「現場でどのように性暴力・ハラスメント事件を処理すれば良いか」、分かりやすく具体的な手順を示したガイドラインが認知されていません。

事件処理を求められる制作会社・プロデューサー・現場スタッフが、具体的な処理方法が分からず、途方に暮れてしまうケースも少なくありません。

被害者心理として、相談窓口は設けられたけれど、組織の事件処理手順に十分な信頼がないなどして、泣き寝入りせざるを得ない場合も想定されます。

この難しい問題に、どう向き合えば良いのか。

今回、JFPでは韓国映画 性平等センター”ドゥン・ドゥン”から許可を得て、「映画制作者のためのセクハラ・性暴力事件処理ガイド」を日本語翻訳しました。「被害者支援の観点」が明確に盛り込まれています。
映画制作に限らず、広くアート制作現場におけるハラスメント対策の参考にしていただけますと幸いです。

韓国映画 性平等センター”ドゥン・ドゥン”
「映画制作者のためのセクハラ・性暴力事件処理ガイド」全23ページ

「映適」のガイドライン

2023年4月、「日本映画制作適正化機構」が立ち上がり、適正な映画制作のためのガイドラインが映画製作者連盟日本映画製作者協会日本映像職能連合の三者間の協約のもと発表されました。

「映適」は、協約により定められたガイドラインに沿って、制作された作品に「映適マーク」を付与するものです。契約書の取り交わし、労働時間遵守や休息の確保、ハラスメント講習や窓口設置の義務づけなどが提示されています。

作品の申請は任意、審査料は作品規模により10-25万円。申請作品に従事するフリースタッフは「スタッフセンター」加入が必須となり、スタッフの作品報酬の1%を運営費として支払うことになります。つまり、製作側ではなく、長時間労働・低賃金で苦しむスタッフ側からギャラ1%を徴収する仕組みです。

日本絵映画制作適正化機構HPより

同時に、ハラスメント・性加害対処のガイドラインが示されました。

申請作品では下記が義務付けられます。*詳細は上記リンクから

  • 事前のハラスメント講習やトレーニングの努力

  • ハラスメント防止責任者を置くこと

  • 相談窓口の設置

  • 映適の相談窓口の案内カードの配布

申請しない作品でも、ハラスメント対策を

これまで一切のルールが無く、それぞれの制作体制の中で取り扱うしかなかったハラスメント、悪質な暴力や性加害の問題について、申請作品のスタッフは映適に報告をすることが可能になりました。

しかし、全ての作品が映適に申請する・できるわけではありません。申請料の支払いに加え、様々な対策を設けたり、外部委託するには、資金も時間も人手もかかるからです。

韓国映画 性平等センター”ドゥン・ドゥン”の「映画制作者のためのセクハラ・性暴力事件処理ガイド」では、被害者支援の観点を考慮された、事件処理の手順が具体的に示されています。

「映適へ申請しない作品でも、安心して働ける職場を用意したい」と考える、監督やプロデューサー、スタッフの役に立つ資料です。参考になれば幸いです。

一般社団法人Japanese Film Project

韓国語翻訳:大塚大輔
日本語翻訳:近藤香南子  /  協力・文章作成:歌川達人
協力:韓国映画 性平等センター”ドゥン・ドゥン”

※本シンポジウムは、トヨタ財団 2021年度研究助成プログラム「日本映画業界におけるジェンダーギャップ・労働環境の実態調査」(代表:歌川達人)の助成を受けて開催します。
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

【JFP年間サポーターのお願い】
一般社団法人 Japanese Film Project は非営利法人のため、継続的な活動に際し、資金繰りが課題となっています。JFPでは、映画界の労働環境・ジェンダー格差改善に向け調査活動を継続していくため、年間サポーターを募集します。活動に賛同し、応援の寄付をいただけます際は、下記より、ご支援いただけますと幸いです。


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