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#10 複雑な現実をシンプルに分析するには「意図」が必要だ

前回のポートフォリオ分析により、D事業は「市場シェアが低く、市場成長率も低い」とされ、「負け犬」のレッテルを貼られてしまいました
「君の担当事業は、分析によると負け犬だから、やるべきことは即時撤退だ」と、社長以下、役員の前で、経営企画室長に宣告されたのです
Ⅾ事業担当役員は、反論しようとしますが、市場シェア、成長率のデータに間違いはなく、結論は揺るぎません

でも、担当役員には会社に貢献しているという自負があります
彼は「自分の事業は他事業に比べ利益率が高いのに、それが分析に反映されないのがおかしい」と考え、スタッフにポートフォリオ図の作成し直しを命じました
そうしてできたのがこの図です

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タテ軸は市場成長率で同じですが、横軸を利益率にしました。円の大きさが売上高です
そうすると、「負け犬」であったⅮ事業は「金のなる木」に分類されます
撤退どころか、少しでも長く事業を継続し、多くの利益を生み出してもらうべき事業です
そして、「花形」とされていたA事業は問題児に転落します。市場の伸びにより売り上げが大きくなっているが、利益率が低いからです
C事業に至っては「金のなる木」だったのが、「負け犬」になりました
成長率の低い市場で低い利益率のため、撤退を求められるポジションです
売上の多寡やシェアではなく、どれだけ利益貢献に重きを置く視点に立てば、この結論は動きません

なぜこんなことが起こるのか


理由は簡単です。現実の事象は複雑な要素が絡まった「立体」です
立体をナイフで切って断面(平面)を見せて、全体を語るのは無理があります。必ず、落ちる情報が出ます
数ある情報から二つを選んで2軸4象限の図を作るため、二つの情報を選んだ時点で、「何が重要か」という作成者の価値観が入ります

そこで受ける側は「なぜその軸なのか」「他に重要な要素がないか」を考えなくてはなりません
明快な図によるレッテル貼りを感じたら、まずやるべきことです
ぼうっとして相手の土俵にのると、その時点で勝負がついてしまいます

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