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道風✖️雪景色 (継色紙より)

ふゆごもり おもひかけぬを このまより はなとみるまで ゆきぞふりしく

写真:https://unsplash.com/@isaacvig


ポップミュージックは今やサブスクでの流通が主流で、1曲ずつ売られている状況だが、10年ほど前まではCDでも流通していた。1組(1人)のアーティストが曲を10曲ほどまとめてCD「アルバム」を1つ作成し、「アルバム」単位で販売する。

9〜11世紀の日本(平安時代)のかなの書は逆の流れがあった。ある書家が書を書いてどこかに送ったりしたものが、後に「誰それが書いたものシリーズ」としてまとめられ、1冊になった。ただしその頃は流通物のトレーサビリティが低いので、誰が書いたかはっきりしないもある。故に「おそらく」この人が書いたであろう書をまとめた物、という冊子が出来上がり、そのクレジットは「作者 ○○」ではなく「伝 ○○」となる。

冊子のタイトルは、作者本人がつけた訳ではなく、後から誰かが付けているので、比較的分かりやすい。書が書かれる紙のサイズは、実はとても様々で、サイズごとに名前がついている。現代でもA4、B5など、サイズで名前がふられているのと同じシステム。書の場合、多くの人にとって馴染み深いのは「半紙」サイズか。(想像通り、「全紙」サイズもある。)そして、冊子のタイトルには、紙のサイズを示す名前が含まれているので、書の作品サイズが大体分かる、という仕組み。

今回臨書したのは 「伝 小野道風(おののとうふう)」の「継色紙(つぎしきし)」という冊子にある4枚目の書。実物はおおよそ13センチ✖️26センチ。色紙、と聞いて思い浮かべる大きさの通り。

道風先生自身は894年生まれ966年没、9世紀〜10世紀の人で、かなの書を始めた第一人者。芸術・スポーツを通して、何かが優れている3人をまとめて「ビッグスリー」という銘打つ事が多いが、かなの書にもやはり「ビッグスリー」がおり、道風先生はその1人。

道風先生の面白いところは、あくまでも私見だが、昨日までクラシック音楽を中心に演奏していた人が、ヘヴィメタルに手を出し始めた感がある所。クラシックもヘヴィメタルも曲の構成に「様式美」という共通点がある。ヘヴィメタルの演奏家の方はクラシック音楽の素養がある方が多く、クラシック音楽の様式美をきちんと理解した上で、違うジャンルの音楽を創作している。

漢字の書もハイレベルの道風先生は、漢字の、特に草書が持つ曲線美をかなの書でも表現出来るだろう、と考えてチャレンジしたのではないかと推測する。実は、道風先生のかな文字は比較的直線の要素が多く、「優美」というより「枯淡」と評される事もある。とは言え、かなの書という新ジャンルを開拓するというエポックメイキングな事をやってのけ、しかもそのジャンルの作品が1000年後の21世紀でも「美しい」とい評価を受けている。これは十分すごい話。




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