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【食文化の継承は食の安全に繋がる】

私はソムリエを生業としている為、味覚のスペシャリストだと思われることが多いですが 、自分では特に味覚が人より優れているとは思っていません。

しかし、「味わう」ことが大切な仕事の1つでもありますので、現在味覚を維持するために心掛けていることは、「食品添加物を意識して見極める」ということです。

私は幼少時代、両親の意向でいわゆる「ファストフード」はほとんど口にした記憶はありませんし、学生時代の野球部では、監督の指導でカップラーメンや炭酸ジュースが禁止でした。当時はあまり深く考えていませんでしたが、成人になり現在の職業に就いてから はとても感謝し、それが礎にもなっています。

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普段何げなく摂っている添加物の中には原材料に思ってもいないものが含まれていたりします。その一例を挙げましょう。

「コチニール色素」または「カルミン酸」という添加物表記を目にしたことがあるでしょうか?

ハムやソーセージなどの鮮やかなピンク色や、炭酸ジュースやお菓子などにも使用される着色料の名称です。
原料は、カイガラムシ科エンジムシです。想像できますか?

ヨーロッパでは、中世から染料として使用されていた歴史もありますし、動物由来の色素なので、化学的に合成された色素よりも安全性は高いという向きもあるでしょう。

しかし、残念ながら弱い毒性がありアレルギー反応を発症する場合があります。原因はエンジムシの除去しきれなかったタンパク質であるようですが、
イタリアの有名な赤いリキュールにも以前は使用されていましたが、現在は使用を止めています。しかしそれでも尚、鮮やかな赤色を出す為に、合成着色料に頼っているのが現状です。

それだけ添加物は私たちの生活に切っても切り離せないものになっているということでしょう。

私は、添加物すべてを否定するつもりは全くございませんし、この自粛生活の中で、コンビニ弁当や冷凍食品、レトルトパウチ食品が活躍したことは周知の事実です。

ただ、なかには人体に少なからず影響を及ぼす可能性がある物も含まれるということを忘れてはいけません。

ですので、日常生活でそれらを見極める意識をしています。

食の安全とは、その国、その土地で風化することなく現代に受け継がれている食材や伝統料理、郷土料理がそれにあたると信じています。

本当に豊かな食とは何か、伝統の食文化に目を向けることで、見た目に囚われない豊かな食の本質が見えてくるはずです。

先日とあるテレビ番組で、北海道の農家さんの言葉でとても印象に残っているのが、

「私たち生産者の仕事は、命を育てることだが、収穫という作業はそれを一度殺めてしまうことだ。その野菜にまた命の息吹を与えてくれるのが料理人なのだと思う」

ワインにも全く同じことが言えるでしょう。

ではその、料理やワインを給仕するソムリエの使命とは何なのか、

それは、食文化を継承させること、すなわち食の伝道師であるべきだと、私は肝に銘じているのです。

             ※画像はWikipedia参照

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