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海外展開巧者のキッコーマン

海外売上比率が驚異的

日本の食品メーカーで海外売上高比率が一番高い企業を知っていますか?

日清食品?味の素?カルビー?
など様々な予想があると思いますが、1位はタイトルの企業「キッコーマン」です。

https://gyokai-search.com/3-syokuhin.htm


上のグラフを見てもわかるようにキッコーマンは海外売上比率が7割以上でほとんど海外で稼いでいる企業と言えます。

実際にキッコーマンのHPを見ても海外売上比率が高いことをアピールしています。

https://www.kikkoman.com/jp/works/overview.html


また、事業利益については海外が約9割を占めており、キッコーマンの軸足は完全に海外にあることがわかります。

https://www.kikkoman.com/jp/works/overview.html


キッコーマンと言えば醤油ですよね。
醤油は日本の調味料のイメージですが、なぜキッコーマンは海外に軸足を移しているのでしょうか?

それは日本の1世帯あたりの醤油への支出が年々減っているからです。

https://www.kikkoman.com/jp/ir/assets/pdf/factbook_2023_bi_j.pdf


日本国内で醤油への支出が減ると当然ですが国内市場は成長しません。
つまり、少ないパイを国内メーカーで奪い合うことになります。
そのため、キッコーマンは海外へ軸足を移しているのです。

実際に海外の醤油市場は右肩上がりで成長しています。
キッコーマンの海外での醤油売上も長期的に成長しているので今後もさらなる拡大が期待できます。

https://www.kikkoman.com/jp/ir/assets/pdf/factbook_2023_bi_j.pdf


現在の成長牽引はアメリカ

現在の海外売上の成長ドライバーは米国です。
実はキッコーマンは早くからアメリカで事業を始めており、1957年には販売会社を設立していました。

そして醤油がどんな料理にも合うことを現地の人に知ってもらうために、スーパーマーケットで試食デモンストレーションを行うなど地道に認知度を高める営業を展開していました。

https://www.kikkoman.com/jp/corporate/about/oversea/development.html


「肉料理に醤油が合う」ということが徐々に広まっていくことで醤油はアメリカの食文化に浸透していきます。
今ではテリヤキソースを中心に醤油は高い人気を持つようになり、家庭用・業務用どちらも安定的に成長しています。

https://www.kikkoman.com/jp/ir/assets/pdf/factbook_2023_bi_j.pdf


このようにキッコーマンは現地の食文化に醤油を浸透させるべく地道に営業活動をしてきました。
その結果アメリカは今ではキッコーマンの屋台骨を支える地域になったのです。

ちなみに、キッコーマンの海外営業の基本戦略は2段階のステップを踏みます。

まず最初に醤油を使いたくなる場面を食文化に沿って提案することで周知を図り(ステップ1)、次に現地生産体制を整えることで一気に家庭へと根付かせる(ステップ2)という2ステップです。

つまり、まずはBtoCで一般家庭に醤油を根付かせることを優先しています。

そのためステップ1である提案営業が非常に大切になります。
アメリカでは「肉に合う調味料」というキーワードで攻め、現在の成功につながっています。

未来への種まき

現在のアメリカ市場をキッコーマンは「成熟ステージ」と位置付けています。
すでに醤油はアメリカの食文化に根付いており、安定的な収益を生み出す地域となっているからです。

https://www.kikkoman.com/jp/ir/assets/info202403.pdf


そしてキッコーマンはアメリカだけに満足するのではなく他の地域でも醤油文化を根付かせようとしています。
つまり第2のアメリカを作ることでさらなる成長を目指しているのです。

キッコーマンは今特に注力しているのがインド市場です。

インドの人口はすでに世界1位であり、GDP成長率も8.2%(23年)と勢いがあります。
ちなみに日本は1%台なのでいかにインドに成長の余地があることがわかると思います。

キッコーマンももちろんこのインド市場を獲得するべく営業を行っており、「インド中華」というキーワードに目を付けました。

インド中華はベジタリアンが多いインド人が食べられるように野菜が中心の中華です。
そしてインド特有のカレーやスパイスの味ではなく、ニンニクや生姜、トウガラシで味付けされているのが特徴です。

インド中華


カレーをはじめとするスパイス中心の料理が多い中で「インド中華」は異なる味付けのため、ここにキッコーマンは商機を見出します。

アメリカでは一般家庭(BtoC)から徐々に醤油の認知度を広めていきましたが、インドではインド中華屋を営む食堂や屋台のシェフにまず醤油を使ってもらう戦略を展開しています。

つまり、まずBtoBからインド市場を開拓しようとしているのです。

「インド中華屋はプロのシェフがキッコーマンの醤油を使っているからおいしい」という評判を生み出すことができればいずれ家庭にも広まっていくでしょう。

もちろんインド中華はインド国内全土で食べられているわけではありません。
しかし、インド中華をトリガーにして他の料理に横展開していくことで徐々にインドの家庭に醤油は広まっていくのではないでしょうか。

一度成功した海外展開の方法に縛られず柔軟にアプローチ方法を変えるキッコーマンは海外展開の巧者と言えると思います。

インドでもキッコーマンというブランドを確立できればまさに「天下無双のキッコーマン」とも言っていいと思います。

キッコーマンがますます世界での立ち位置は高めることを国内から応援するのもいいのではないでしょうか。


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