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「破獄」吉村昭

実在した「脱獄王」白鳥由栄(しらとりよしえ)をモデルにした小説。
白鳥は漫画「ゴールデンカムイ」の脱獄王、白石のモデルにもなっている。
なので、ゴールデンカムイファンにはぜひ一読をすすめたい。

網走監獄の様子が四季を通じて描かれていて興味深い。

あと、戦中戦後の、刑務所運営の難しさが書かれている。
働き盛りがどんどん兵隊にとられるし、物品に乏しくて刑務官の制服がボロ。囚人の屋外作業の見張りだって、粗末な制服で寒くて辛い。
体を動かしてる囚人よりある意味辛いんじゃないか。
食べ物も、おかしなことに囚人の方が豪華。
豪華といったら語弊があるけど、刑務官が白米食べられない状況で、囚人は白米を食べられたのだ。
これは戦中に市井の食糧事情が悪化する一方、刑務所のご飯を粗末にすると暴動なんかが起きて収集つかなくなるから減らせない、とか色々事情があったそうだ。

脱獄王目線だけではなく、刑務所をとりまく環境、刑務官のこと、世の中のことなど広く書かれていて読み応えがある。

なんやかんや、白鳥は人を死に至らしめているから、脱獄するのを応援する気にはなれないが。

終盤、「貴重品だったタバコを警察官がくれたから」、そんな理由であっさり捕まる。
その後、心ある刑務官に出会い、刑期を全うする。

読んだら網走刑務所博物館に行ってみたくなる。というか、読んでから行った方がきっと楽しめる。

吉村昭さんの小説は読み出すと止まらない。

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