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夏目漱石『こころ』感想

たぶん高校生のときに一度読んでいる。
恋愛にも人の心理にも疎かった当時、特段思うところはなかった。

大人になった今読むと、まず「K」の心の動きに色々と思うところがあった。若者が身近な女性に好意を抱くのは自然なこと。下宿先のお嬢さんに恋するのもまあ普通だ。
ところがKは哲学的な青年だった。
そして親友が恋を出し抜く。
単に、恋に敗れて失望したのではない。
高校生の時は失恋して死んだと思ったけれど、今読むとそれだけではない、というか、失恋そのもののせいではないと思った。

そして「先生」。先生もまた俗物とは一線を画す。それ故、恋が成就してからの煩悶が続く。

『舟を編む』のドラマで『こころ』の感想を喋り合うシーンで、「遺書、長っっ!」ていうシーンがある。
たしかに長い。

先生もKも、それぞれが頭の中でぐるぐる考えてお互いに孤立しながら悩みあってる。途中から、なんで先生はこんなに「妄想」してるの?と思った。

もし、お嬢さんへの恋心を互いにぶつけて殴り合いでもおっ始めるタイプなら、自殺などしないのだろうな。
読みながら、さっさと告白せい、と思わなくもなかった。でもそれができないのだ。

この歳になって読んだら、先生とKのこころに引っぱられた瞬間があった。恋の部分ではなくて、根源的な孤独に関する部分で…。引っ張られた感じに、少し恐怖を感じた。

一度読んだ小説だったけど、読み出したら続きが気になり、半ば一気読みに近い感じで読み切った。

しかし漱石って心境描写上手いなあ。
あと、帰省した時なんかに一週間もするとだんだん持て余されることとか、「あーわかるわ」って細かい記述にうなずきながら読んだ。

改めて、漱石の書く文章が好きだなと思った。

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