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秋の香り


秋の気配にときめく季節がやってきた。
朝晩の涼しさや落ち着いた空気。
憂いを抱えた日の朝や夕刻でさえ、
秋を感じることで少し心が晴れる。

4つの季節が巡るこの国で
いつのまにか秋が1番好きな季節になっていた。

暑さが和らいでくるこの頃になると、実家の玄関のドアから入ってきた心地よい涼風の記憶が蘇る。

同時に、小学生の頃母親が焼いてくれた
アップルパイ、一緒に作ったチャイのスパイスに入ったシナモンやクローブの混ざった幸せの香りが蘇り、胸いっぱいに吸い込みたくなる。

帰宅途中、うちが近づくにつれて強くなっていく甘くて芳ばしい匂い。
「この美味しい匂いが、うちからだったらいいな」
心躍らせながら、早足で帰った。いつも鼻の勘は確かだった。


今年の夏はシュワっと軽く、清涼感のあるジンジャーや弾けるような柑橘の香りに親しんだ。

でも、香りもそろそろ衣替えの時期。
今の気分は少し重みがあってコクのある、シナモンやクローブ、それから来月には旬を迎える林檎や葡萄、ワインの香り。それから、、、そうそう、この間街を歩いていると、爽やかでありながら華やかな甘みのある香りに、思わず振り返った。
香りの元を探すと、小さな果実に袋が被せてある、梨だった。梨も。まもなく旬を迎える。

秋とひとくちに言っても朝と夜、
初秋と晩秋で寄り添ってほしい香りは違う。
今秋はどんな香りに出逢うだろう。

今日はひとまず、アップルティーの香りを焚きながら机に向かうとしよう。

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