ココロ(14)
映像を送信してきた他の惑星の知的生命体から、再び、映像が送られてきた。
地球のために何かをしたいという。
人類は、何を言うべきか。
私は、彼らを「A」と呼ぶことにした。これに意味はない。アルファベットの最初の文字だからである。
ちなみに「Q」にも意味はない。
地球の最大の課題は、人類の絶滅の危機である。
果たして、そんな恥をさらすようなことを言うべきなのか。
人類の議会、国連の意見は割れた。
面子を重んじる人間は、言うべきではないと主張した。
人類の存続を優先するべきだと考える人たちは言うべきだと言った。
多数決の結果、言うことになった。
すべての情報を聞いたAは、子供の欲しい男女に、ボットによってつくった、二歳児の子供をあたえてはどうかと言ってきた。
子供を見れば、欲しくなるという理屈だった。
これは、大成功した。
一気に子供が増え始めた。
地球は活気づいた。
Aにお礼をしようという意見が国連で採決された。
では、何がいいのか。
国連は、募集した。
私とQは、何がいいのか、話し合った。
感謝の気持ちを形にすることだということで合致した。
では、どういう形にするのか。
私とQは、一番好きな音楽が一緒だった。
ベートーヴェンの第九。
私は、この曲を聴くと、毎回、ベートーヴェンの人生を連想する。
貧困、暴力、失恋、難聴などの苦難、そして友情。
真の友情こそ、この世の宝だと思う。
それは、その人のレベルで友情の深さが決まる。
匿名で、国連に、第九を提案した。
他にも、同じ意見が多かったようで、採用された。
ベルリン・フィル。
最高の歌手。
合唱。
Aにも、感謝の気持ちは伝わった。
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