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怒らない人イコール優しい人と考えていませんか?

今日は少し考えさせられるテーマについてお話ししたいと思います。私たちが普段の生活の中でよく耳にするフレーズの一つに、「あの人は怒らないから優しい」というものがあります。でも、果たして本当にそうでしょうか?
 
私は老人ホームで介護士として働いています。日々、多くのお年寄りと接しながら、その方々の生活を支えるお手伝いをしています。

その中で、時に怒りたくなることやストレスを感じることも少なくありません。しかし、それが直接的に「優しさ」とどう結びつくのかを考えさせられる場面に何度も遭遇してきました。
 

怒らない=優しい、の落とし穴


「怒らない人」は確かに一見すると平和的で優しい人に見えるかもしれません。争いごとを避け、周囲の人々に穏やかな印象を与えることができるからです。しかし、怒らないことが必ずしも優しさを意味するわけではないと感じることがあります。
 
例えば、ある入所者様が介護の際に困難な行動をとることがありました。その方は認知症が進行しており、しばしば介護者に対して苛立ちや混乱をぶつけることがありました。私はその方に対して常に冷静でいるよう努めましたが、ある日、私が注意を向けずに他の作業をしていると、その入所者様がベッドから転落してしまいました。
 
この出来事は私にとって大きなショックでした。なぜなら、私は怒りを抑え冷静でいることが「優しさ」だと思っていたのですが、その結果として重要なサインを見逃し、大切な方を危険な目に遭わせてしまったからです。
 

真の優しさとは?


では、真の優しさとは何でしょうか?私はそれは「相手のことを本当に思いやる気持ち」だと考えています。時にはそのために厳しい態度をとらなければならないこともあります。例えば、入所者様の安全を守るためにルールを守らせる必要があるときです。
 
ある入所者様が毎晩ベッドから起きて歩き回り、転倒の危険が高かったときのことを思い出します。その方は独立心が強く、自由に動き回りたいという気持ちが強かったのですが、私たちの役割はその方の安全を守ることです。

何度も説明し、時には強い口調で「ここで待っていてください」とお願いしました。その結果、一時的にその方が私に対して不満を持つこともありました。
 
しかし、その後、その方が怪我なく安全に過ごせるようになり、少しずつ信頼関係が築かれていくのを感じました。私の厳しい態度は一時的にその方を不快にさせたかもしれませんが、長期的にはその方の安全と幸福を守るために必要なものでした。
 

怒りと対処法


怒りを感じること自体は自然な感情であり、それを否定する必要はありません。重要なのは、その怒りをどのようにコントロールし、建設的に表現するかです。

怒りを感じたときには、まず深呼吸をして冷静になることが大切です。そして、その感情の根底にある問題を見つめ直し、適切な対処法を考えることが必要です。
 
老人ホームでは、入所者様やそのご家族とのコミュニケーションが非常に重要です。時には意見の食い違いや誤解から怒りが生じることもあります。

そのような時には、まず相手の話をしっかりと聞き、その後で自分の意見を冷静に伝えることが大切です。感情的になってしまうと、解決すべき問題が見えなくなってしまいます。
 

介護士としての優しさの本質


介護士としての優しさとは、ただ「怒らない」ことではありません。入所者様の尊厳を守り、安全を確保し、彼らが安心して過ごせる環境を提供することです。そのためには、時に厳しい態度をとることも必要です。また、同僚やご家族との協力とコミュニケーションも欠かせません。
 
日々の業務の中で、私たちは多くのストレスにさらされることがあります。しかし、そのストレスをどう乗り越え、入所者様に最良のケアを提供するかが、私たちの優しさの真価を問われる部分だと思います。
 

おわりに


最後に、「怒らない人イコール優しい人」という考え方について再度考えてみてください。真の優しさとは、相手のためを思い、時には厳しい態度をとることも含まれるのではないでしょうか。

私たち介護士は、入所者様一人ひとりの生活を支え、その幸せを願って日々努力しています。その中で、感情をコントロールし、最善の行動をとることが求められます。
 
これからも入所者様のために、本当の意味で優しい介護士を目指していきたいと思います。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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