私たちの世界はマトリックスの世界なのだろうか
1999年に登場した映画『マトリックス』は、人類が現実だと思っている世界が実はコンピュータによって作り出された「マトリックス」と呼ばれる仮想世界であり、本当の現実世界での人間たちはコンピュータに支配され、眠らされているだけなのだという世界観を示し、話題となった作品である。
『マトリックス』が出るよりも以前に、批評家の柄谷行人は『内省と遡行』において、形式化を徹底した先には決定不能性しか残らないという問題に取り組んでいた。柄谷は病に取り憑かれていたかのごとく、世界の形式化に