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関東大震災から100年~神奈川県の想定地震と藤沢市の取るべき対策

9月1日は関東大震災が発生してから100年になります。関東大震災ではマグニチュード7.9、現在の震度6強から7に相当する激しい揺れがあったとされます。死者や行方不明者は10万人を超え、明治以降では最大の災害となりました。

10万棟以上の住宅が倒壊したほか、火災の延焼がすさまじく、旧東京市の4割が焼失したそうです。

神奈川県の被害は甚大

関東大震災といえば、隅田川沿いなど都内での被害が思い起こされますが、実は震源が神奈川県西部だっただけに県内の被害も甚大でした。

神奈川県立歴史博物館では、特別展を開いていて、被害の実相が分かります。

神奈川県震災誌によりますと6万以上が全壊していて、火災で亡くなった方を中心に3万人以上が死亡したということです。

被害がひどかった横浜市では、関内地区が焼け野原になり、県庁も全焼しました。東京でも猛威を振るった火の竜巻、火災旋風も見られたということです。

津波も海岸線を襲いました。真鶴や三浦半島では6メートル、鎌倉から江の島にかけては3メートルの高さだったそうです。

あまり知られていませんが、丹沢から箱根の山地にかけて大きかった被害が土砂崩れです。いまの御殿場線も地震の影響で線路が寸断されたそうです。気象庁の資料によりますと台風の影響で土の中に水分がたまっていたことも土砂災害をひどくしたとしています。

直下型と海溝型に分かれる地震

わたしは新人のとき、取材したのが阪神大震災でした。神戸ではビルや家屋が倒壊し、焼け野原になった地区もありました。伝言を貼った紙があちこちに貼られていたのが忘れられません。一方で現地に入るとまちが壊滅しているというテレビでの印象とは違って、比較的新しい建物は倒壊せずに残っていることに驚きました。

震源が都市に近い直下型の地震は、いきなり突き上げるような大きな揺れが起こるのが特徴で、被害としては建物の倒壊と火災の発生が挙げられます。このため最も重要な対策は建物の耐震化を進めることとなります。

もう一つ大事なのが都市計画です。藤沢市の防災計画にも明記されていますが、敷地の細分化を抑え、緑地などを確保することが防災上、重要です。

東日本大震災は阪神大震災とはまったく被害が違いました。さぞかし建物が倒壊したことだろうと思っていたのですが、内陸部の被害が比較的少なかったのに比べて、沿岸部は津波に襲われ、まちごとなくなっていました。

海のプレートの境界で発生する海溝型の地震は、地震の規模が大きく、小さい揺れの後、大きな揺れが起こるのが特徴で、しかも揺れが長く続きます。被害も建物の倒壊のほか津波を伴う恐れがあります。津波への対策は想定区域外に逃げるか、高台に避難するかということになりますが、支援が必要な方には厳しい面もあり、新たな対策が必要です。

想定される6つの地震

今後30年の間に70%の確率で起こると言われるのが「首都直下地震」です。2万人を超えると想定される死者のうち7割が火災によるとされています。東京の場合、木造住宅が密集している「木密地域」での火災が懸念されています。また地震発生から数日後、停電が回復したときに発生する「通電火災」も注意が必要です。

神奈川県は想定される地震を6つの絞ってそれぞれ想定被害などをまとめています。▲「首都直下地震」は、マグニチュード7.3の「都心南部直下地震」として記載されています。直下型としては被害は最も大きく、藤沢市でも全倒壊が650棟、死者が30人と想定されています。

▲「三浦半島断層群の地震」はマグニチュード7の地震です。発生確率は高くはありませんが、藤沢市では全倒壊が320棟、死者が20人と想定されています。
▲「神奈川県西部地震」はマグニチュード6.7の地震です。藤沢市には最大で3メートル以上、5メートル未満の津波が来ることが想定されています。全倒壊は10棟ですが死者は50人とされています。

▲「東海地震」は駿河湾を震源とするマグニチュード8の地震です。藤沢市には最大で3メートル以上、5メートル未満の津波が予想されています。全倒壊は40棟、死者は20人とされています。

▲「南海トラフ地震」は駿河湾から宮崎県の日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とするマグニチュード9の地震です。藤沢市には最大で5メートル以上、10メートル未満の津波が想定されるほか、全倒壊は160棟、死者は40人とされています。

▲「大正型関東地震」は相模トラフを震源とするマグニチュード8.2の地震で、発生確率は高くはありませんが、最大規模の被害が想定されています。想定される津波の最大の高さは5メートル以上、10メートル未満で、全倒壊は2万8000棟余り、火災は120か所、死者は3200人を超えるとされています。

地震による主な被害は、建物の倒壊による圧死、津波による溺死、そして火災や土砂崩れであることを考えれば被害を減らすための準備にすべてがかかっていることは明らかです。

建物の耐震化促進を

藤沢市では住宅の耐震化率の目標を95%に掲げていますが、去年は90.7%となっていて、なかなか進んでいません。とくに木造の戸建ては83.3%にとどまっていて、戸数としては2万戸の耐震性が不足していることになります。藤沢市では耐震化に向けた補助制度を設けており、対象にはダイレクトメールを行なうなどしています。しかし例えばお年寄り住まいでは、住宅の改築も難しいと思いますので一部の部屋などを耐震化する「耐震シェルター」の活用も検討してほしいと思います。

また盲点となってるのが不特定多数が利用する建物です。学校や病院、福祉施設、商業施設、工場などが対象で、こうした建物には耐震診断を行なう義務があります。

藤沢市への報告によりますと震度6強から7の地震が発生した場合、▲倒壊する危険が高いとされたのが、「フジサワ名店ビル」、「藤沢プライム」、それに駐車場などが入っている石上の「神中第三ビル」などです。また▲倒壊の危険があるのは「ホテル法華クラブ湘南・藤沢」です。いずれも改修などを明らかにしていますが、大がかりであるだけにすぐとは行かないのが実情です。財政的な支援と共に利用客への周知が必要だと思います。


新たな津波対策、ライフジャケットの可能性

長い海岸を抱える藤沢市としては津波対策は欠かせません。藤沢市は発生確率は低いものの、最大限の津波に対応するため、相模トラフを震源とするマグニチュード8.7の地震、「相模トラフ沿いの海溝型地震(西側モデル)」を想定しています。第一波の到達時間は6分で、最大11.5メートルの津波が12分後に湘南港海岸に来るとしています。

藤沢市は避難ビルを確保するため140件と協定を結んでいます。しかし避難ビルは国道沿いなどに集中していて、どうしても避難が間に合わない空白地が存在します。津波による死因の9割が溺死です。支援が必要な方々もいることから、これまでのように「津波から逃げる」ことが第一ですが、「津波に巻き込まれた場合」の対応についても考えるときだと思います。

その一つがライフジャケットの可能性です。研究機関の実験では、ライフジャケットを着けなかった場合、ダミーは水中に沈んでしまいましたが、着けた場合、頭部は水上に浮かび続けたことが判っています。東北大学では民間と協力して津波用のライフジャケットを開発しています。頭部をがれきからどう守るのかなど課題はありますが、研究していく価値はあると思います。

最後までお読みいただき、まことにありがとうございます。


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