宗教や信仰についての雑記 #64
◯小さな舟、大きな船
自分はまるで小さな舟のようだ、と思うことがときどきあります。
小舟は軽いため、小さな波にあっても大きく揺れてしまいます。
それと同じように、小さな出来事にも心が揺れ動いて、すぐにイライラしたりクヨクヨしたりしてしまうことがよくあります。
一休さんのとんち話に、屏風の虎が飛び出して暴れて困るのでなんとかしてほしいと、難題を持ちかけられたというものがあります。
それに対して一休さんは、自分が虎を捕まえるから屏風から追い出してください、と答えたそうです。
これは禅の不安に対する考え方を表したもののように思えます。
禅には、不安な心を絵師が自分の描いた虎を見て恐れおののくことに喩えることがあるそうです。
それは、自分の心が生み出した想像や幻想に恐れを抱く、不安とはそういうものだということだそうです。
そんな不安から解放されるためには、自分自身の心を統御する強い精神力が必要となります。
でも誰もがそんな強い精神力を持っているわけではありません。そんな弱い人には何か大きなよりどころとなるものが必要です。
日本に伝来した仏教は大乗仏教と言われています。ご存じの方も多いでしょうが、この大乗とは文字通り大きな乗りもののことであり、多くの人を救うことができる教えという意味が込められています。
阿弥陀仏の誓願は大きな船に喩えられることがあるそうです。大きな船は小舟と違い、ちょっとやそっとの波に揺らぐことはありません。それに乗ればゆったりと平穏に過ごせます。
「我」という小さな船を乗り捨てて、大きな船に乗り換えよ。
自分はまるで小さな舟のようだと思うということには、そんな阿弥陀仏からのメッセージが込められているのかもしれません。
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