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無表情な推しとヨーロッパ人の笑顔


推しのは中国のスター

私は俗に言うDDである。推しが両手両足の指で数えきれないほどいる。
そんな中でも来日してイベントをやる度に足繁く通っている推しが一人いる。

中国で活動するロシア人モデル兼タレント、リルーシュである。

リルーシュとは誰なのか

2021年に韓国の"PRODUCE 101"シリーズの中国版「创造营2021(創造営2021)」が放送された。その番組に出演する日本人タレント二人の中国語の先生として撮影現場にいたところを番組プロデューサーから「君は顔も悪くないし出演してみないか?」と打診され、何度も断ったのだが結局出演することになってしまい、違約金も払えないため降板もできなかったという不憫な男、それがリルーシュ君である。菅田将暉のオールナイトニッポンにも取り上げられ、そちらも話題になった。

番組の詳細はnoteにも記事を投稿されている方々がたくさんいらっしゃるので読んでみてほしい。
本編もまだ一部が無料公開されており、日本語字幕もあるので興味のある方はぜひ見てほしい。

そしてそのリルーシュ君、番組でのあまりの士気の低さと愛想のなさから有名になってしまうのだが、彼は番組の中で「ファッションデザイナーになりたい」と夢を語った。そして有名になったことでそれが実現し、KOBMAST IVAROVという自身のブランドを立ち上げ、しかもそのコレクションの第一弾として"あの"「コードギアス 反逆のルルーシュ」とコラボすることとなった。そして日本のアニメ作品とコラボしたからには日本でランウェイを歩くことになったのである。

リルーシュ来店イベント@KOBMAST IVAROV原宿店

実は私、リルーシュの来日イベントは抽選に外れたもの以外は皆勤賞なのだ。

というわけで私は今回も朝一で原宿へ赴き、CLAMP作画のリルーシュのアクスタを買い、イベントへの参加権を手にしたのであった。2023年8月の話である。

内容はいたって単純で、しばらくお話した後サイン入りポラロイドをもらえると言うもので、スタッフさんに確認したところ動画撮影はOK、一緒に写真を撮りたい場合は「本人に聞いてみてください」とのことだった。
全てはリルーシュのご機嫌次第というなかなか不可思議なイベントであった。

ヨーロッパ人と機嫌と笑顔

彼は番組出演中「無表情」「無愛想」「やる気がない」とよく言われてきた。
「やる気がない」のは自分の意思で番組に出ているわけではないからで止むを得ないわけだが、「無表情」と「無愛想」に関しては異議を唱えたい。

ヨーロッパ人は笑わない。

おもしろいことがあれば別なのだが、基本的に人と接する時に笑顔を作ることはしない。私も未だその癖が抜けないので日本人に怖がられることがある。しかし私たちは決して機嫌が悪いわけでも敵意があるわけでもなく、ただ普通にしているだけなのだ。

普段街を歩いている時に緩んだ表情をしていればどんな目に合うか分かったものではないし、もしイタリアで満面の笑みの人が近づいてきたらそれはあなたが危険な状況にあるサインだ。もし私の地元で一人ニコニコしている人が座っていたらそれは物乞いか薬物中毒者だ。安全のためには無視するに限る。ロシアに住んだことないが、土地柄同じようなものだろうと想像はできる。
接客業の人たちだって笑顔は業務内容には入っていない。笑顔だったところで賃上げに貢献しないのならやるだけ意味のないことだ。少なくとも私たちが住む地域ではスマイルはゼロ円だが利益もゼロ円なのだ。

そもそもリルーシュは私と同じく3ヶ国語話すわけだが、彼にとって中国語はあくまでも第3言語であって、ロシア語、英語とは大きな乖離がある。中国の国際チャンネルで英語でインタビューを受けている映像があるが、中国語を話している時とはかなり違って、より自信を持って話しているように見えた。番組の中では見られなかった彼の姿だ。

私は番組で常々リルーシュを見るたび、共感していた。彼の微細な表情を読み取っては機嫌の良し悪しを図っていた。彼の表情はどこか懐かしくて、見ていて楽しかったのだ。

笑顔の推し

私はイベントではリルーシュと必ずロシア語で挨拶し、英語で会話している。

ここでトーク会の話を全部するつもりはないが、興味深かったのが彼が私に「どこ出身なの?」と聞いてきたことだ。こんなこと聞かれたファンは私だけかもしれない。流暢に英語で話しかけてくる日本人の私を不思議に思ったようだ。あるいはモンゴル族のロシア人スパイかと疑っているかのどっちかだ。

そして一緒に写真を撮った時、事件は起こった。「一緒にハート作ってくれる?」といういかにもな要望に彼は手を🤙にして笑ったのだ。私は他のファンが彼と写真を撮っているところも見ていたが笑顔になった瞬間は見なかった。

やばい。無表情で評判の推しの笑顔という激レア写真が撮れてしまった。

これは彼が決して不機嫌ではないという証左でもある。
激レアだ。

ホスピタリティの塊

私はこの時、もう一度彼と一緒に写真が撮りたくて追加で缶バッジを買った。この缶バッジ、俗にいうブラインド商品で中身は選べない。絵柄はルルーシュ、スザク、リルーシュとデフォルメされたルルーシュ、スザク、C.C.、リルーシュ。残り時間も少ない。「どれでもいいや」と何も考えずに缶バッジを箱から取り出しレジに持っていった。
並んでいる間せっかくだから缶バッジを開けてみよう。そして開けた瞬間、CLAMP作画のリルーシュが顔をのぞかせた。

まさかの自引きである。

リルーシュの元に駆け寄った私は缶バッジの裏を見せ「誰が当たったと思う?」と言って表を見せた。「おっ、俺じゃん」彼はそう言って私の手から缶バッジをスッと取り上げ、躊躇いなくサインをしてくれたのである。

リルーシュ缶バッジ(本人のサイン入り)

なんてかっこいいんだ。仰々しくなく軽くこんなファンサービスをするなんて。

リルーシュは優しい男なのだ。
前回のフェイスパックのメーカー、オルフェスのイベントでも中国人や私のように英語を話すファンとは普通のペースで話し、英語片言の日本人相手にはペースを合わせ質問に対して単語単語で返事をしたりする彼の姿があった。彼は意思疎通できることが鍵であることを知っている人で、一見ぶっきらぼうに見えるがそれが彼の優しさだと気付いた。そんな姿を見てますます好きになってしまったのを覚えている。

リルーシュは沼。

#推し #推し活 #サイン会 #お話会 #カルチャーギャップ #文化の差

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