運と一日一善
私は本当に運がいいんだか悪いんだかよくわからない。
一応「運がいい」＝「運をつかめる人」だと思ってはいるのだが、ここ連日とあるアイドルグループのイベントに行って不思議なことが続いている。
円神リリースイベントin animate池袋本店
私は現在障害者委託訓練に通っていて、日曜日以外は基本的に休みがない。平日のリリースイベントだったが、もし買えたら初回盤のCDを買って特典会であるサイン会に参加しようと思っていたのだ。なぜなら初回盤には以前参加したライブのDVDが付いていて、それがどうしても欲しかったのだ。
普段はメガネだけど今日はコンタクト。訓練にもいつもすっぴんで行っていたが今日だけは綺麗に化粧した。髪もトリートメントして、服もいつものメンズライクではなくリボン付きのブラウスで行った。気合は十分。メンバーにも何を言おうかちゃんと考えて行った。
しかし当然ながら着いたのが他の人より遅く、目の前でイベントの優先入場券さえもなくなってしまった。レジで「もう初回盤は売り切れですね」と告げられた時の絶望たるや。
せっかく来たのだしと通常盤を一枚お買い上げし、お見送り会に一周だけ参加することにした。
最初に列の先頭に並んでいた誕生日を迎えたばかりの最推しの宮里ソル君に「26歳おめでとう！」というと「ありがとうございます！！」と元気よく90度のお辞儀を披露してくれた。体育会系な彼はやはりこういう時姿勢が綺麗だ。
あくまでもお見送り会なので立って話す時間はなく、今回カップリング曲の振り付けを担当した瀧澤翼君に「振り付け楽しみにしてるね！」というのが精一杯だった。
最後の方で私の目を引いたのが草地稜之君だった。彼はファンサービスが良くて、Xでも「草地」とポストに書いてあったり、リプライやリポストには必ずいいねしてくれる。いつもそれが嬉しかったのだが、その本人が目の前に立っててちょっと面食らってしまったせいで私は目を見開いて「はっ！！稜之君！！」とやたらデカい声を出してしまった。すると彼は優しい声で「かわいいね」と一言だけ言ってくれた。「あ、ありがとう…」ちょっと照れてしまった。
なんだか救われた気がした。
彼らもアイドルとして「ファンはおしゃれして会いに来てくれてること」を理解しているから出た言葉ではあるのだろうけれど、それをいざ口に出して言われるとやはり驚くし、嬉しい。
「一生懸命障害者委託訓練に通って勉強してない大金をはたいて資格試験を受けているのに欲しいCDも買えないなんて」と正直悲しかったのだが、これで報われた気がする。
普段特典会には滅多に参加しないので、アイドルのさりげないファンサービスで心がこんなに満たされるとは思わなかった。本当に驚いた。
感謝の気持ちを稜之君の名前をタグ付けして伝えた。その次の晩、彼がいいねをくれた。
よかった。想いは届いたんだ。そう思った。
円神リリースイベント in ららぽーと立川立飛
立川は自宅からかなり遠い。かなり早起きしないとCD販売開始時間には間に合わないし、その時間に行ってもおそらく売り切れてしまうだろう。
我が家は夜私の録画したテレビ番組を見る時間をくれる。しかし母が見たい番組が夜ある時は見せてもらえない。イベント前日の夜私は「今日は委託訓練もあって、仕事もして疲れたし、とにかく今日は早く寝るから」と母に告げてあったのだが、「何時までテレビ見るの？」と聞くと「22:45まで」と返事が来た。「じゃあ先に寝るね」と言うと「マンゴー買ってあるから22:30に食べましょう」と。
母も抗うつ剤を処方されているようで、機嫌を損ねると面倒なので付き合うことにした。そして10時半にリビングへ行くと母はテレビを見ていた。「私は剥けばいい？」と聞いても「ちょっと待って」と。
寝たいのに寝られない。
翌朝8時に起きた。終わった。もう間に合わない。
まあ、ミニライブもあるしと駄目元で行ってみようと家を出た。CD売り場にはもう長蛇の列ができていた。大量のCDを抱えた人たちで列を成していた。レジで聞くと当然のように初回盤は売り切れ。またか。まあそうだろうな。優先観覧権もなくなってライブは前にも行けないし、「じゃあいいです。」といって諦めて列を離れた。
もはや通常盤を買う金ももったいない。私は今月もう3回資格試験を受けて、3万円以上使っているのだ。医療費だって自立支援を受けているとはいえ、精神科以外も何箇所も通っているのでそれなりにかかる。私の稼ぎも月3〜4万程度なので、基本的に前職の貯金から出している。
CD販売列を抜けたのは昼頃、ミニライブまでだいぶ時間がある。建物内に入って店舗を見ていた。かわいいブラウスやスカート、化粧品がたくさんあって欲しかったけど我慢。どうやら父によると前日も母が苛立っていたらしく、なだめるべくお土産になるようなものを探した。
するとその時だった。
母親におんぶされていた子供が突然廊下の真ん中で嘔吐してしまったのだ。おんぶしていたものだから母親の服にも吐瀉物はかかってしまっていて、なかなか大変そうだった。近くにいた一人の女性が「これ使って！」と小さいビニール袋を手渡した。何もないよりはいいだろうが、とにかく母親は子供を二人連れてが何から手をつけたらいいかわからないくらい大変な状態だった。
あっという間に人だかりができていた。家族連れもいた。しかし見ているだけで誰一人助けようとしない。
これは良くない。そう思った私は近くの店舗で呼び込みをしていた店員さんに声をかけた。「向こうで女の子が吐いちゃってて…係員さんかどなたか呼んでいただけますか？あの人だかりができてるところです」と事情を説明すると「わかりました。ありがとうございます」と言って対応に当たってくれた。
ちょっといいことをした。正直そう思った。
ミニライブが始まる時間が近づいたので会場である広場へ向かった。すると円神のメンバーがリハーサルをしていて、私たちファンは声援を送った。開演が遅れる旨告知があり、その場にいたほぼ全員がまた店内に引っ込んでいった。
そしてしばらく時間が経ってミニライブが開演した。
「立川のみなさん初めまして！僕たちが円神でーす！！」と元気よくリーダーの瀧澤翼君が挨拶をしていると、遠くを見渡していた最推しの宮里ソル君が私のお名前ボードに気づいていたらしく、手を振ってくれた。周りにソル君のボードを持った人はいなかったように思う。これは特定ファンサってやつだ！私は喜んだ。
CDは買えなくて気落ちしてたけどライブが楽しかったこと、ソル君が手を振ってくれて嬉しかったこと、人助けもできたことをXに投稿した。ソル君がいいねしてくれた。正直驚いた。彼からXでいいねをもらったことがなかったから。
初回盤と購入特典を求めて
この日を持ってメンバー全員でのリリースイベントは終了した。もう特典会はない。
しかし初回盤CDを買えないまま私は終われない。どうしても思い出のライブのDVDが欲しいんだ。渋谷TSUTAYAにはサインの展示があって、しかも購入特典でブロマイドがもらえると言う話だった。帰りに駄目元で寄ってみよう。まだあるかもしれない。
しかしディスプレイを見ると通常盤しか置いていない。ヤバい。でも念の為店員さんに聞いてみよう、と2階の店員さんにスマホでユニバーサルミュージックの商品ページを見せて「これってまだありますか？」と尋ねた。店員さんが奥から出して来たのは通常盤、改めてDVD付きの初回盤を探していると伝えるとさらに奥からその商品が出て来た。即お買い上げした。特典のブロマイドまでもらえた。推しは引けなかったけど十分ハッピーである。
お金がなくても小さな幸せが大きな幸運
どんなに私が障害者でしっかりした仕事につけなくて月給3万円でも、
そしてキャリアアップのために忙しく委託訓練に通って資格試験でその金が全部吹っ飛んでも、
推しが何気ない一言をかけてくれたり、
笑顔で手を振り返してくれたり、
そして少しでも誰かの役に立てたならそれは私を幸せにする。
前向きに生きる理由になる。
今回起こったことは全部不幸中の幸い。なんだか報われない、そんな気がしていても顔を上げると小さな幸せが見えてくる。
そんなこともあるのかもしれないなと思えた不思議な二日間だった。
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