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瞳・元気 少女漫画の両面性


かつて、少女漫画雑誌「花とゆめ」は、
その雑誌名がアンチテーゼかと思えるような妙なハードさがありました。

多くのヒロインが孤独に戦っており、
確かにイケメンは出てくるけど、
役に立ったり、本質的には役に立たなかったり、部分的だったり。


瞳・元気 〜KINGDOM 

という漫画は、
ファンタジーでもなく好きなタイプの絵でもなくて、なのにスルーできない、
いまだに記憶に残る漫画です。

簡単に言うと
「誰もみんな裏切る」と思う、メンタルの傷ついた少女が、
人を信頼する彼と出会い、自分も信じてみようという勇気を持つ話。

生徒会長のイケメンの彼に強引に生徒会に入れられ、戸惑いながらも、美人の友達もできて、楽しい日々が始まる、

と、言ってしまえばそうなのですが、
周りの悪意の解像度が高く、現代的なんですよね。

だからこそ、勇気を出して信頼したのがたまたま報われるのが、沁みるというパターン。

闇と光が際立ち、痛いほどでした。


かつ、王子様である彼が、魔法ではなく、
人の協力や組織体制作りや根回し、お金の使い方に、当時出始めの携帯電話、なんていう、すごーく現実的な方法と、

根気強い寄り添い
という最強の手段で彼女を支えていくので、納得感がありました。


彼はなぜか微妙に腹が立つキャラではあり、
それは"性的に彼女でなくては不可能"、
というエゴのキャラ付が、
「子供にはムリ!理解不可!」
だった部分が大きいと思うのですが、

男女の心の問題には、性的なものが、
ハードかつデリケートに関わるんだね

というお勉強には、非常になりました。

なお、彼は老後も死んでも、彼女を支えきりそうな感じがあったので許さざるを得ず、
そこが上手い着地点だったと思います。


今、ホワイト社会を語る段で、
少女漫画の彼氏、みたいな
漂白性が男性に押し付けられる」

と言う形でサンプルとしてまとめて語られますが、

あんまり少女漫画をイメージで言い過ぎると、

ブラックすぎる社会を押し付けられ、
ホワイトな社会を夢見ていた世代の旗手だった漫画家さんを否定する事になり、

伝わるものも伝わらなくなると思います。

人間として間違ったことはせず、見た目はできるだけ整えよう、
という意識ではダメなのか?と思います。


なにより、昔の子にとって、少女漫画はろくな事言わない大人にさらされてた中での
「悪い人ばかりじゃないよ」
という、希望あるいは慰め、だったので。

どの時代もしんどいのが社会だけど、
手を取り合うことを諦めない、
という大原則だか、大幻想だか分かんないものは、
いつもどこかで示されていてほしいものです。


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