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秋の月

駅を出て友と話す束の間の 今日の区切りのスマホ時間

  小一時間 電車に揺られ帰宅する。
この頃は、最寄りの駅に立つと、とっぷりと日が暮れて時々なんとなく切なくなる時がある。そんな時、家までの道々、彼女と話す。仕事のはなし、子どものはなし。ひとつ違いの彼女は、元職場の他支店の同僚。途中で、別の会社に行き 社員顔負けのバイタリティーで65才まで勤めた。今は、私と同じ職種で、他会社で働く。気丈で優秀な女性だ。
 そんな彼女が、就活をするわと、この歳で言い出した。どこに行っても、難なくこなす実力を持っているのでものたりなかったのだろう。そんなこと
思い出して、今夕 電話した。。
すると 思いもしないことが起きていた。。。。
車が行き交う大通りで聞こえにくかったせいもあったが、思わず大声で聞き返していた。
 「えっ?事故?なに?」「今、入院してるの?」
夕飯の買い物をしての帰り道、横断歩道を渡っていたら突っ込んできた車にぶつけられたと話す。雨が降りしきる夕方だった。足首の骨折をした。膝も擦りむいた。 何人ものひとが集まってきた。
口々に目撃者になるからねと言い合う。
救急車で運ばれ、お嫁さんを介して息子さんに電話で伝えた。 仕事を中断し車で迎えに来て、日ごろはにべもないこが、ご飯を作り、お薬のお水を持って来たという。
 彼女は、言った。
「なんやろ、最近 なんか ばたばたしてたからなあ。。。就活とか。それに、やたら 親のこと考えてたんや」
 ん?なに?あれをしたらよかったとか?
「ううん。なんか ほんとに私のこと考えてくれるのは 親だったなあって思ってね」と話す。子どもも独立した。夫さんは高齢だ。
そんな気丈な彼女がつぶやく。
 なにが起るかわからん・・・。
 だよねえ。。ほんとに。なんかさ 万事休すという時、
 最後は「おかあちゃん」って呼んでしまうかもしれんね。
この頃、私も よく思い出すよ。
 そう 話してるうちに家に着いた。じゃあね、と電話を切る。
ふと玄関先から見える月をぼんやり眺めた。
明るくて大きくて、見ているうちに いつのまにかなみだがぼろぼろ零れてた。


旅に出よう
スーツケースを一つ持ち夢を食みつつ列車に乗ろう



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