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街の個性

フランスのパリ北駅からタリスに乗って、ベルギーの首都、ブリュッセル南駅に到着した。少し遅延もあったが、1時間30分くらいで、しかも陸路で違う国に行けるという感覚が面白かった。エアビーで宿を取ってあったから、そこにスーツケースを置いて、中心地の方に向かった。LEONという緑のネオンが印象的なお店の前で、大学の友達2人と合流した。友達と海外で待ち合わせたのはこれが初めてだった。フランスの1人旅が寂しかった訳ではないけど、少し安心した。ムール貝のワイン蒸しとポテト、飲み物はベルギービールを注文した。シャンゼリゼ通りで食べ損ねたムール貝は、ベルギーの名物でもあるらしく運が良かった。派手な味ではないけれど、なんだか手が止まらないような料理だった。自分はビールはそんなに飲まない人だけど、このベルギービールは飲みやすかったし、ビールが美味しいという感覚が初めて分かった気がした。

ムール貝とベルギービール
印象的な緑のネオン

ムール貝を楽しんだ後は、さっそく世界で1番美しい広場と言われるグランパレスに向かった。周りの建物がライトアップされていて、まるで展示されているような雰囲気だった。そこまで広くないのがまたいい。次の日昼間にも訪れていみたけど、夜の方が全然いいと思う。

グラン・パレス

ブリュッセルはコンパクトな街だから1日あれば、歩きで十分見て回ることができる。最高裁判所、芸術の丘、教会、小便小僧など一通り回った。グランプラスの近くにある商店街、ギャルリー・サンチュベールはアーケード街で、格子状の柱がついたガラス張りの天井はワールドバザールを連想させる感じだった。通りを歩いていて、目立つのはチョコレートやワッフル屋さんだったが、ウィンドウにレースや小さな兵隊の人形を並べているお店が目に止まって入ってみた。中はすごくこじんまりとしていて、他のお店の現代的な雰囲気とは対照的だった。ブリュッセルのレースは古くから歴史を持つ工芸品らしく、確かに見てみると、繊細で華麗なイメージのレースが多く置いてあった。大きめのレースを買っても良かったが、値段も張るし、使い道が思いつかないので、ブリュッセル市庁舎が織られた置物用のレースを買った。部屋に飾る。

小便小僧
ブリュッセルの街並み
ギャルリー・サンチュベール

ブリュッセルの観光で忘れてはいけないのが、ポテトである。これは後で調べてわかったことなのだけど、フレンチフライ、つまりフライドポテトの発祥地はベルギーらしい。第一次世界大戦中にベルギーでフライドポテトを目にした時、人々がフランス語を話していたことから、フレンチフライと名付けられたらしい。とにかく、ポテト愛好家として食べない訳にはいかなかった。ブリュッセルの中心地にはいくつかフライドポテト専門店があるが、まずその一番有名そうなFritlandに行った。迷わずLargeを頼んだ。結論から言うと美味しい。美味しいけど、この美味しさを表現するための言葉を持ち合わせていない。もし自分が今までしてきたポテト経験に基づいて、この美味しさを表現するなら「めっちゃ調子いい時のマックポテト」。こういうと、なんだ結局マックのポテトかよと思われるかもしれないけど、この表現が一番的確に美味しさを表していると思う。もちろん、ポテトの太さとかじゃがいもの質感みたいなものは全く違うのだけれど、味に関して言えば調子いい時のマックポテトで合ってると思う。一度食べてみれば、言いたいことがわかるはず。あとでもう一回食べた。

Fritland のポテト

ブリュッセル王立美術館は、異なる3つの美術館から構成されている。時間があれば全部見て回りたかったのだけれど、昼過ぎにはアムステルダムに出発しなければならず、今回は一つだけ訪れた。ルネ・マグリットはベルギー出身の画家であり、その哲学的な作品は日本人にも人気が高いらしい。帽子を被った多数の男性が浮遊している『ゴルコンダ』は、自分もなんとなく見覚えがあった。マグリット美術館は彼の作品を200点以上も所蔵していて、彼の作風を知るには最適の場所だった。現代アートには今まであまり興味が湧かなかったのだけれど、彼の作品は自分のストライクゾーンに見事にハマった。絵のタッチが具体的すぎず、抽象的すぎないのと、斜に構えた哲学的メッセージが特にいい。帰りに彼の作品の中でも一番気に入った『イメージの裏切り』が印刷されたエコバックを買って帰った。

チョコ

アムステルダムは、凄くハイテクな街だった。電車やバスに乗っていると東京にいるような気分になって眠りそうになった。特徴的だったのはやっぱり、運河の多さだと思う。アムステルダム中央駅を中心として放射線状に広がっていて、地面の高さと同じ位置にある運河がまるで蜘蛛の巣の糸みたいに張り巡らされている。どこかに行くときは、運河の橋をいくつ渡ったかが目印になる。といってもちゃんと数えていないと、どの通りも同じような景観だからGoogle マップがないと絶対迷子になると思う。

アムステルダムの運河

チーズ専門店がたくさんある。チーズはヨーロッパの国ならどこでも有名だと思うけど、アムステルダムはダントツで多い気がする。いろんなお店に入っては、あらゆる種類のチーズを試食した。ナチュラルなやつから少し塩気がきいたスパイシーなもの、胡椒やハーブなどのフレーバーがついたものまであった。試食しただけでかなり満足だったが、寮でワインを飲むときのつまみにいいと思って、1つスパイシーなやつを買った。

チーズ食べ放題

オランダ名物の食べ物とは何か。今まで全く知らなかったけど、コロッケらしい。その証拠?にオランダにはコロッケの自動販売機がある。扉の中で保温されていて、アツアツの状態で食べれる。牛肉のコロッケを買った。日本のコロッケと違って、周りの衣がかなりサクサクしているのと、中身がクリーミー。味は結構しっかりついていて、衣が分厚いクリームコロッケみたいな感じ。

コロッケの自動販売機
牛肉のコロッケ

風車を見に行こうということで、アムステルダムから電車で20分くらいのザーンセスカンス村に行った。駅を出た瞬間から甘いチョコレートみたいな匂いが漂っていて、最初は誰かの香水かと思っていたが、少し歩くと近くにカカオ工場があった。駅から風車がある場所まで、街全体がカカオの匂いで充満していた。嫌いでもないけど、鼻に付く。帰りにココアの粉を買って帰った。

風車群
ザーンセスカンス村
ココアはセルフで作る方式

風車は観光客で賑わっていた。オランダらしい風景といえばそれは間違いないが、風車が5,6基並んでいるだけで、観光名所としてはイマイチだと思う。昔は何十基もあったらしいから、それは圧巻の風景だっただろう。観光名所としてはイマイチだとしても、オランダの伝統的な雰囲気を感じる場所としてはちょうどいい場所だと思う。特に、アムステルダムの都会的な街並みと対照的で落ち着いた雰囲気を楽しめる。いいお皿に巡り合えた。

運河クルーズからの眺め
アムステルダム国立美術館
まさにヨーロッパの夜景

イギリスの空港からブライトンに行くまでのバスが遅れたが、それ以外は何の問題もなく無事に家に帰れた。自分でもよく何ともなく事前の旅行計画を完遂できたなと感心する。今回の旅行で、ヨーロッパという言葉の解像度が少し上がった気がする。陸続きでありながらも、それぞれの都市に個性があって面白かった。特定の何が違うというわけではないけども、言語、食べ物、建築、人々の雰囲気などによって、その都市らしさみたいなものが形成されているんだと思う。行きたかった場所が全て周れたわけでもないし、見過ごしたものだって無限にあるはず。またいつか旅行しにきたい。

風車村で買ったお皿

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