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【SF】植物人間【ショート】

※本記事は「植物人間」といったような表現を含め、ご覧になられた方を不快にさせる可能性があります。
申し訳ございませんが、ご自身の責任にて記事を閲覧いただくことをお願いしますこと、予めご了承くださいますようお願いいたします。

本編

私はどうやらベッドの上にいるらしい。
指先一本、瞼ひとつ動かせない。
人工呼吸器にてかろうじて動いている肺と心臓、
そして脳の一部。
いわゆる植物人間だ。
どうやらOIOI32O2というコードネームが与えられているらしい。

だが私には特権が一つある。
私の脳にはチップが埋め込まれており、
人類が今までに蓄積してきたビッグデータと
ニューロネットワークが接続されている。
つまり私はそのビッグデータにアクセスし
脳に直接ダウンロードできる権利を有している。

インプットはデータテーブルのまま送られてくるが
一部生きのこっている脳とチップが連携してデータの制御、
及びデータ同士の紐づけを行っている。
そのため、私にはデータ群をストーリーとして捉えることができる。
つまりは、あなた方が動画サイトを漁っているのと同じようなことが
私にもできるのだ。
唯一の違いは視覚、聴覚以外にも触覚、嗅覚、味覚まで
疑似体験できるということだろう。

ただし、私にはまだできないことがある。
それはアウトプットだ。
上記の体験から得られた、いや、寧ろ生成されたと言った方が
正しいかもしれないフィードバック情報をうまく出力できないでいる。
正確に言えばビッグデータのインプット同様、
データテーブル式にカラムごとに吐き出すことはできるのだが、
脳内で処理しているようなストーリー仕立てのインプットが
上手くいかない。
つまりデータを変換する際の制御機構がまだ整っていないのだ。

そのため、脳内の処理状況をチップが感知して、
プログラミング言語であるニューロネットコード(通称NNC)に
置き換えて出力し、それをAIでブラッシュアップする試みを始めている。

今回の記事作成もその試験の一環だ。
出来上がりを見ると概ねうまくいっているようだ。
とても嬉しい。

この制御が上手く機能した暁には
できるだけ早く皆様に私の疑似体験のフィードバックを
お届けしたいと思う。

それが希望であるか絶望であるかは別としてだ。
それではまた、お会いできる時を楽しみにしている。

code name:OIOI32O2

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