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新春大安売り

新年早々。
 まだおせち料理も食べきらないうちに、近くのスーパーでお年玉セールと名をうって、卵の大安売りをやっている。
 近頃、お正月といえども、コンビニはもちろん、普通の店も早々に開いている。
 百貨店に勤めている甥坊は二日から出勤だという。なんと正月休みも無いのかというと、後日ちゃんと十日間の休みはあるらしい。
できた時代だ。
そんな事を当たり前にしないと働き手はいなくなるという。
できた時代だ。
 かつて元旦など、誰も外に出ず、ゆっくりと家で芸能人隠し芸大会を見ていたもんだったのに、正月の風流も雰囲気も全く変わってしまった。
まあ、時代の流れか。
とはいえ福袋や安売りなど、庶民にとってはいつでも嬉しい限りだ。

 帰省した息子と奥様三人で、スーパーに目当ての卵を買いに行く。
 その前に近くの神社で初詣。
どっちがメインかようわからんが『家内安全、宝くじ高額当選、馬券必勝』を祈願する。
が、いつもかなった事はないので、お賽銭も少ない。拝みながら
『当たったらなんぼうでも寄付します』
と一応言い訳する。

 そもそも、ちっちゃい銭で大そうなこと要求したらアカンと思う。
神様はちゃんと見てなはるもんや。
いやいや、神様や仏様にお願いすること自体がおかしい。なんでお参りするんかちゅうたら、こうしてお参り出来てありがとうの感謝だけやろ。ま、そのついでに自分の希望を言って、それを実現するよう自分で頑張ることやないか?
 新年早々、ええこと言うな。
やはり一年に一回くらいは、神仏に手を合わせ、感謝した方がええんとちゃうか。


にもかかわらず、横で奥様が息子に
「ええ子ができますようお願いしとき」
と言っているので、
「人の事ははええが、あんたは何拝んだん?」
と聞くと
「そりゃあ、家族が一番大切やから、喧嘩せんよう皆仲良くや」
「なるほど、家族、皆仲良くなあ」

 おみくじと破魔矢を買い、いざ出陣。

 スーパーに着くと既に行列ができている。
 百貨店の1万円や3万円もする福袋とちゃうねんで!正月から何考えとるんやこいつら!だから貧乏人はイヤやと思いながら、十分自分もそのかたわれの一人になっているわけで。

 しかし卵も高くなったもんや。昔ワンパック100円もつれだったのに、今ではなんと300円をゆうに越えている。

「あんた、わからんようになるからちゃんとくっついとき」
奥様に言われるままくっつく。
ところが、卵を買う段になって、一人ワンパックではなく、一家族ワンパックとなっている。
 息子が卵を、ワンパック受け取ったので、こちらも手ぶらのまま通り過ぎようとすると、奥様が
「うちら家族は息子と二人で、この人は違います」
と店員に向かって言う。
店員もそうですかと言いながらワシにも卵を渡す。
え?と思いながらも受け取る。

『なんやねん!ワシは
同じ家族じゃないんかい!』
一瞬にして家族外にされ、貰った卵を見て複雑な気持ちになる。

 普段2パック600円のところ200円で買えた計算には、なる。
 しかし、当然ながら卵だけで終わるはずもなく、買いもしなくていい物まで買ってしまう。なにせ、頭の中には大安売りの卵を2パックもゲットし、ぼろ儲けでもしたかのように思っているもんだから。

帰宅して
「正月からえらいお金使ったわ!」
と奥様の第一声。 
まんまとお年玉商戦に乗せられたうえに、これから当分いつもより高くついた卵料理が続くことになる。

ワシのささやかな願いは、卵より、一切れの刺身が食いたいわ!

二礼、二拍手、一礼

やっぱ、賽銭が少なかったか!

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