名古屋グランパス戦 (Home)

 前々節、前節と望外の6ポイントを獲得したとはいえ、相手を圧倒するクオリティを見せつけたのものではないし、懸命にまずは守備を全員で頑張った上での幸運が重なっての結果だと思っていた。なので、今節の結果も当然とまでは言えないまでも、想定内ではあったし、幸運がそうは続くものではないことは、多少なりともサッカー観戦歴のある人なら自明のセオリーの一つであろう。
 二連勝から得た自信のようなものは、試合の入りからチーム全体から感じされたものの(「ちゃんと試合をすれば、おれたちは勝てる!はず。」)、逆にチグハグさも序盤から感じさせた。それは具体的には、ライン間の連携におけるスムーズさの欠如。パスが50cmずれる、走り込むタイミングがワンテンポ遅れる、カバーしてほしいスペースからちょっと離れている。その蓄積が徐々に焦燥となって伝わってきた。特に中盤から前線へのフィードの質が低く、この拙さだと今日は難しそうだなと予感させるものだった。
 だが、こういう「ちょっとおかしいな、合わないな」という入りはそれこそどんな強豪チームにもあるわけである。それでも試合終盤に訪れるスクランブルの時間帯も含めれば、どの試合でも仕留めるチャンスが数度はあるものなので、そのチャンスの数をいかに増やすか、準・決定機で終わるところをプラスαで紛れもない決定機に漕ぎつけるか、という観点から見ると、かなり不足感のある試合になってしまった。
 なお、当記事はミッドウィークのリーグカップ長崎戦の後に書いているわけだが、その内容・結果は度外視している。後出しジャンケン的に論を進めるのはどうかと思うし、そもそもだがメンバー構成から見てもリーグとカップ戦は純粋に別枠として捉えた方が良さそうなので。
 
 確かにグランパスの守備陣は堅かった。あえて食いつかず、「振られない」賢さが一貫してあった。結果、サイドでは「そこそこ」ボールを持てるけれども、所謂ポケットを取るシーンは少なかった。マイナスの折り返しを合わせるような決定機も限られていた。その辺りは老練な米本・稲垣の本領発揮と言ったところか。和泉・山中の両WBも、本来は攻撃的な選手のイメージだけれど、この試合では巧みなポジション取りでじわりじわりと磐田の面々にストレスを与えていた。また、グランパス全体に言えることだが、うまくファールをもらって時間を稼ぐプレーをまるでVTRのごとく何度も目の当たりにさせられることになった。
 それでも、連勝中にも所感として述べた通り、意外性のあるプレーがやはり少な過ぎはしないだろうか。想像の範囲内の攻撃が繰り返されるのを見るのは、サポーターとしては少々物足りないものがあるし、何より結果を出す=ゴールを決めるという命題において、J2とは特にゴール前でのブロックの強度が段違いであることを誰もが痛感する中、猛者揃いのJ1センターバックの強襲を退けてシュートコースを見出すためにその直前に時間と空間を生み出すプレーが必要なはずだ。頑張って相手の攻撃を受け止めて、ツートップに当ててそこを起点に雪崩れ込む、だけでは見てる方もわかりやすいわけで、プロとして周到に準備を重ねて試合に臨む相手チームに対しても、「台本通り」の守備を遂行しさえすればいい、というシンプルさをもたらしてしまっているように思われる。

 願わくば、J2で席巻したとは言わないまでも、リーグの中で最高クラスのクオリティを見せたパスワークにもっとチャレンジしてほしい。ジャメ・ペイショットのツートップも一定の脅威を与えられることはこれまでの収穫の一つだが、90分それ一辺倒では前述の通りわかりやす過ぎる。理想は、後半残り20~30分あたりでのペイショット投入か。それは一つのオプションに据えて、より自在性を持った布陣をベースにスタートするべきと考える。
 もはやワントップでもなんら不足感のないジャメのスタートは不可欠として、トップ下にはやはり平川を試してもらいたい。今節では左サイド→右サイド→センター(下がり目)とポジションを変え、ペナルティエリア前でらしさを感じさせるパス交換に絡んだシーンもあったが、悲しいかな、まだパスを"出させてもらってる"苦しい印象が否めない。受け手を操ってる感がない。こういう言い方は不遜かもしれないが、まだ磐田で上手い選手だと感じさせてくれていない。真ん中の最も得意とする、常に複数のパスコースを確保しやすい位置でチャンスを与えられないものか。
 付随して、平川=トップ下ならば、金子をどちらかのサイドに置くのが好相性ではないか。ボールの受け手としてのセンスも高いし、プレーに連続性があり、狭いスペースでのボール扱いにも長けている。今シーズンずっとベンチ外が続いているのにも何か理由があるのだろうが、見てみたいコンビではある。
 また、3列目には上原・中村のコンビがパスワークに関してはベストチョイスか。惜しむらくは、ドゥドゥがまだチームにいて左サイドに置ければ、平川・金子と2列目を組み、テクニックに運動量と球際の強さも担保した優れた中盤を構成できそうな気がする。

 今の時点では、武器となっているオプションは前述のツートップの強さ・高さと、後半ビハインドの時点での古川投入くらいか(同点の状況では、彼の投入はバランスを崩す怖さを懸念させられてしまう、正直なところ)。いくら何でも少なすぎる。まだ真価を見せていない、ペイショット以外のブラジル人選手たちのフィットもそろそろ期待したいところだし、現時点で控えの日本人選手たちの突き上げも、本当に必要になってくる。
 確か昨シーズンのアウェー金沢戦だったと思うが(定かではない)、DAZN中継の解説の人が「ジュビロはJ2のレアル・マドリーのようだ」と評していた。相手の勢いをいなす柔軟性があり、試合の流れを見極めながら隙を見てゴールを奪うのがうまく、また巧みな守備で時計の針を進めるのもお手の物、全般的にコントロールが行き届いている、という趣旨だったが、それを聞いてずいぶんと誇らしく思ったものだ。だが、今はそんな余裕もないし、コントロールしてる感じは希薄。むしろコントロールされてる感の方が強い。
 レベルの違い、ステージの違いと言えばそれまでだが、ここで現実路線に振り過ぎて、守備の強度とツートップのフィジカルにフォーカスする闘い方に傾注するのは危険と思われる。相手の守備だって同等以上に強度があるのだから、その上を行く武器を備えるしかない。できるだけ多く。
 同時にJ1に昇格した町田ゼルビアの戦いぶりを見ると、よく批判の対象となるロングスローも、立派なオプションとなっていることに気づく。他にも両サイドハーフの馬力や突破力、得点力やジュビロにはないものだし、ショートカウンター発動時のスピード感はJ1でも相当上の方だ。「大当たり」外国人選手であるドレシェヴィッチから機を見て繰り出されるロングフィードの精度にも驚かされる。おそらくロングフィードの「受け」も相当トレーニングしているに違いない。
 比較すると、こうして言語化できる武器が少ない。一にも二にも、その数を増やしていくことが残留の可能性アップに直結するはずだ。思えば3シーズン前のJ2鈴木監督体制から2シーズン前の伊藤彰監督体制移行期に、J1で通じるシステム構築を目指して、結果頓挫し、降格となったわけだが、伊藤監督解任時点でかなり取返しの付かない状況に陥ったにせよ、チーム作りがあまりに中途半端過ぎた。すべて相手の想定内で戦っているようだった。その時自分たちの武器を作ろう、磨こうという思考は無かったように思う。とにかく頑張るしかないのだ、というような。同じ轍を踏むわけにはいかない。相手の想定の上を行く攻撃。そのためのスピード、精度、アイディア、意外性。そこを追求してもらいたい。人選を含め。
 
 


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