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世界がやってきた!Ⅱ

一足先に到着したクルーたちは、戸邊さんの家の周りを歩き回り、スマホで風景写真を撮影したりしながら思い思いに過ごしていた。

それから20分ほどしてからだろうか、残りのクルーを乗せたロケバスが到着した。
撮影コーディネーターの大友さんが、「申し訳ありません!!」と大慌てで出てくる。
運転していた日本人スタッフの男性が1名、外国人は女性1名と男性4名。

「みんな背が高い、、わぁ、、なんか綺麗、、かっこいいなー」、とドキドキした。
コロナの影響から海外旅行者も目にしなくなり、田舎に住んでいることもあって、欧米人の集団を目にすることも数年間なかったから、余計に新鮮な印象だった。
大友さんから、それぞれの名前や役割を教えてもらったけれど、一度に覚えることはできなかった。

番組のプレゼンターのヨセフが、私の着ていたトレーナーの近衛兵の刺繍を指差し「London!」といたずらっぽく言った。私は英語が話せないので、少しでも接点ができればいいなと着ていったものだったから、気づいてくれたことが嬉しかった。

戸邊さんの軽トラにロケバスが続く形で、田んぼへと向かった。
撮影現場の様子を見て、どこでどう撮ろうか、とクルーが相談を始める。
戸邊さんが頭にかぶっている手ぬぐいを、自分も着けたいとヨセフは言い、巻いてもらっていた。
ヨセフはサービス精神旺盛。とにかく明るく元気でノリがよく、コメディアンのようだった。

1年前、飛騰燈火の公式トレーラー動画を撮影するために、動画クリエイターの小口広希さん(PINTO.)と訪れた場所に、今はイギリスからのクルーがいる。。。とても感慨深かった。

撮影が始まると、まるでその場には戸邊さんとヨセフしかいないかのように、カメラマン以外は、はぜ掛けされた稲の裏に隠れた。音声担当者はマイクを伸ばし、他のスタッフもヘッドホンを装着して息を潜めている。

私はカメラに映り込まない場所まで離れて、その光景を見つめていた。
高性能のマイクはわずかな音でも拾ってしまうので、記録の写メが撮れなかったのが残念だった。

天気は快晴で、いつもなら日陰になってしまいそうな時間帯も、明るく美しい空や田んぼの様子を撮影することができた。
はぜ掛けされた稲も、撮影のためにこの日まで戸邊さんがとっておいてくださったものだ。
たくさんの人たちの温かな想いが、天に通じたのだと思う。

田んぼでの撮影がひと段落すると、クルーの男性陣が戸邊さんの一輪車を動かし、エセ農家風の写真を撮りあっていた。「国は違えど、なんかやっぱり行動が男子だな」と、密かに微笑ましく思ってしまう。

最後に、はぜ掛けされた稲の前で、皆で記念写真を撮った。
私は初めて、上の方に登らせてもらった。
最高の景色!!

その後は戸邊さん宅でのインタビュー撮影へ。

ヨセフは「この家は本当に落ち着きます」(英語)とコメントしながら、長い脚を伸ばし、自宅かのように寛いでいた。実際本当に落ち着けたのだと思う。
欧米の人たち、と一括りにしてよいかはわからないけれど、変に相手に気を遣いすぎないカジュアルなスタンスは、少し羨ましくもある。

戸邊さんは日本一高値のついた米の作り手として何度もテレビ番組に出演したことがあり、撮影自体に慣れていたとは思うものの、インタビューでは欧米人相手でも一切物おじも忖度もせず、いつも通り、自分の考えを率直に伝える姿が、改めて素敵だと思いながらやりとりを聞いていた。

インタビュー収録を終えて、待ちに待った戸邊家の昼食を皆でご馳走になった。
かまどで炊いた戸邊米や、戸邊餅、奥様がつくってくださった、添加物を一切使用しない汁物やおかずの数々。。
初めて食べるクルーの人たちも、感激していた。
玄米が大好きだというメイちゃんは、未だかつてない、戸邊米の玄米の美味しさに驚き、感動していた。

戸邊さんは、誰に対しても「他のどこにもない味」「食べて食べて!」と、自信と喜びが溢れた様子で自分の作った米を振る舞う。その姿は何度見ても気持ちがいい。

戸邊家の食事を通して、自然でまっすぐなエネルギーが、きっと各々の体と心に行き渡ったと思う。


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