和裁①【和裁とは】
こんにちは、ものぐさ和裁師です^^
今回からは【和裁】をより多くの方にご理解いただくために、僭越ながら簡単ではありますが触れていきたいと思います。
◯和裁とは?
【和裁】とは和服裁縫の略で、日本の民俗衣装である着物や浴衣など、日本の伝統衣装である和服の仕立てを行うことを言います。また、その技術を指して和裁と呼ぶこともあります。
※対義語として洋服裁縫を略した【洋裁】があります。
——洋裁なら知っているけど和裁って何ですか??
和裁士として、こう問われることは少なくありません。
昭和初期頃までは【和裁】と略されるよりも、「お針仕事」、「裁縫」「仕立て」という言葉で一括りに浸透していたと考えられ、ミシンの活躍と洋服の普及に伴って、洋裁と区別する為にこの言葉が使用されてきました。
どちらも同じ衣服縫製ではありますが、和裁ならではの道具を使い、独特の技術があるのも和裁の特徴です。
◯和裁の特徴
和裁の特徴を分かりやすく説明するために、洋裁との比較を交えて解説していきます。
今回書ききれていない補足はこちらからご閲覧くださいませ↓↓
・①【全てを手縫いで行う】
和服は解いて仕立て直しを行うことを前提として縫製が行われます。
縫製に便利なミシンが普及したにも関わらず手縫いに拘る理由は、ミシンの強い針目では、縫製の際に布を傷つけてしまう為、解いて仕立て直す際に元の跡が残ったままになってしまうためです。(元の跡=傷)
手縫い縫製ですと、針が布に優しく差し込まれていくので、縫い目に適度なゆるみが出来、布に掛かる負担を軽減する事ができます。
ミシン縫製についてはこちらを併読くださいませ↓↓
・②【型紙を使わない】
洋裁ではパターンと呼ばれる型紙に合わせて、布を曲線裁ちして必要部品を切り分けていきます。
和服は「反物」と呼ばれる布から作り出され、和裁は反物の布目を通してハサミを入れる直線裁ちを行うため、型紙は必要ありません。
・③【解くことを前提としている】
和服は全て解いて再度仕立て直しをすることが可能です。
一度着物の形にして、傷や汚れの為に着られなくなってしまった物でも、「洗い張り」をして反物の状態に戻すと、新たに生まれ変わる事ができます。
傷汚れの部位は別の部位と入れ替えたり、別の布を持ってきて繋ぎ合わす「繰り回し」という知恵を使って、仕立て直しが行われます。
着物から羽織、座布団や小物類に至るまでありとあらゆる物に仕立て直すことが可能ですから、長期に亘って活用することが出来る和裁の技術は、現代に求められている貴重な循環と言えるでしょう。
和裁と並行して、生まれ変わりの貴重な技術を育んでいる悉皆屋さん(洗い張りも行う)も、絶やしてはならない職業の一つです。
・④【縫い代は裁ち切らない】
仕立て直しを可能にする為に、縫い代は裁ち切らずに中に縫い込んで仕立てます。
縫い代をそのまま残しておくことで、寸法変更も行えますし、子供や孫世代にまで実用的に引き継いでいくことが可能になります。
布端の耳部分を活用しない洋裁とは違い、和裁は耳部分でも中に縫い込んでおきます。(洋裁の販売用の製品に耳が含まれていることは殆どありません)
この耳を残しおくことは、裁ち目のほつれが少なくなり再生可能な役割の一助となっています。
・⑤【縫い目は極力隠す】
これが和裁の面白いところで、内側で着用した際に見えない縫い目であっても可能な限り隠して仕立てるのが、上仕立てと呼ばれる和裁の技術です。
・⑥【和裁独特の道具を使う】
和裁には洋裁とは違う独特の道具がいくつかあります。
図の中で大きな違いのあるものは以下の三点です。
・コテ窯、コテ(洋裁ではチャコにあたるもの)
・かけ針、くけ台(洋裁には無い)
・尺物差し/鯨尺(洋裁ではメートル尺)
中でも、コテ窯コテに関してはこれが無ければ和裁はできないと思えるほど重要な道具です。使用方法は別のnoteで取り上げる予定です。
◯まとめ
《和裁とは?》
・【和裁】は和服製作の略。
・洋服とミシンの普及に伴い、洋裁と区別して使われるようになった言葉
《和裁と洋裁の違い》
🍓解くことを前提としている…和裁で仕立てた和服は解いて繋げると元の反物の状態に戻り、新たに生まれ変わることが出来る。
🍓型紙は使わない…反物を直線裁ちするので型紙が要らない。
🍓全てが手縫い…仕立て直しを行うには手縫いが1番デメリットが少ない。ミシン縫製は強すぎて布を傷を付ける可能性がある。
🍓縫い代は裁ち切らない…縫い代を入れ込んでおくことで、寸法変更等にも順応することができる。
🍓縫い目は隠す…着た時に見えない位置であっても出来る限り縫い糸目が外に出ない様に仕立てます。
🍓和裁独特の道具がある…手縫いならではの道具があります。
以上、簡単ではありましたが和裁①【和裁とは】としてまとめてみました。最後までご覧くださいまして誠に有難う御座いました。
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