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衣紋を控えめに

こんにちは、ものぐさ和裁師です^^
今回は新たにものぐさ用の着物と襦袢を仕立てたので、その仕立て目的について書き綴っていこうと思います。

◯用意した材料

着物用地

着物として用意したものは、古い着物を解いたものです。

襦袢用地


着物に続き襦袢も古い物を解いて仕立てることにしました。色の組み合わせとしてはミスマッチではありますが、無い袖は振れないので仕立ての目的だけを見据えて前進していこうと思います(*・ω・)ノ
どちらも古着で特に襦袢は汚れが目立つものでしたが、仕立替えによって改善していこうと思います。(汚れ裁ち合わせの工程はここへは記述していません)

◯仕立ての目的

この度の目的は繰越のない着物を私に合うように仕立てること。もう少し付け加えると衣紋を抜いても綺麗に見える衿元を作ることでした。

【男物着物】着用図
衣紋を抜いて着ています。
※ものぐさの仕立てではありません

男物着物をものぐさが着用した図↑ですが、男物は前提条件として衣紋を抜いて着ないためにこの着装は着物に無理が生じているということです。繰越がない=衣紋を抜かないと考えるので、写真のように着物の衿を首から離して着ると衿周りにシワが多く発生します。

衣紋を抜かない状態で着物を着ると、前から見た衿の姿は立ち衿になりますが、衣紋を抜いて着ると衿は立衿から、肩首に沿った寝衿に変わります。

ものぐさはどちらかと言えば、首周りに自信も無い上に衣紋を抜かない方が好みなので、背中側を大きく開けて着る着こなしよりも、衣紋は詰め気味で着用したいと考えています。

【男物着物】を衣紋を抜いて着用
前面は悪くない見栄えだと感じています

——仕立てはそのままで、所持している着物を衣紋を抜かないで着ればよいのでは???

はい、そうなのです。
ところがどっこい!普通に仕立てた着物を衣紋を抜かないで着用するとどうなるでしょうか?
前述した通り前から衿を見た時に、衿が立った状態になるのです。これは首の短いコンプレックスを持っているものぐさとしては、非常に不味い着付け方法なのです。無し中の無しであります(涙)
首周りをすっきりさせて着物を着たいのに、衣紋の抜き加減にこだわるあまり、前から見た様子に納得がいかなくなるのは本末転倒。。。。

仕立てにこだわらないままだと、繰越を小さくすればするほど、衣紋の量は控えめになり易いが、反対に衿周りのシワが目立つ結果になります。それがこちらの写真です↓(※仕立て屋によって見栄えは変わります)

繰越ゼロ0の【男物着物】

シワ、シワ、シワ…
着付けではどうしようもない程に現れる衿周りのシワです。

衣紋は詰めて着る為に仕立てられた男物の着物を、目的に沿わない着装をしたものですから、こうなる事は目に見えています。
単純なことなのですがもう少しシワを考慮した仕立ては出来ないものか?と疑問を持っていました。

そこでこの度の仕立ての運びとなったわけです。昨年にもこの様な内容をnoteに書いていたのですが、一年程経過してしまい恥ずかしながら漸く手を付けることができました。

◯完成図と比較

繰越を付けていない着物


トルソーさんが綺麗に着てくれています^^
横から見た図を比べてみます。

シワの多い上側の男物着物に比べて、下の纁色着物は全くシワがありません。
同じ繰越寸法0で寸法は変わらなくても、仕立て方を変えるとシワの量や見た目に違いが表れることがこの比較写真からご確認いただけるかと思います。

繰越が無いと言えども、後ろから見ても違和感はありません。

着用してみた図です

後入れ衿芯は入れていない状態でも、しっかりとお猪口タイプ衣紋は保たれていて、この仕立てで私の着装好みにまた一つ近づいたのではないかと感じています。

お猪口タイプ衣紋・盃タイプ衣紋の話はこちらからどうぞ↑↑

——衣紋は控えめにしたい!
だけど衿は寝かせた着姿が良い!!

こんな欲求をお持ちの方は一定数居られるはずで、決してものぐさだけではないでしょう。

トルソーさんには衣紋が詰まり気味の着装にしています。

衣紋を控えめに着ると、大きく抜いた時よりも若々しい感じを与えるので、いつもとは違った雰囲気で着物を楽しめると思います。

お茶席や学業に励む時などは、こういった着物を用意していても良いのではないかと1人感じています。昔は繰越のない着物が通常でしたが、近年は繰越を付けて着るのが当たり前になっています。勿論、繰越を付けて着るのは美しいです。しかし繰越を付けないで着ても美しいと思うのです。

皆さんの着物の楽しみ方を仕立てから応援したいと思っていますので、また好みなどをお聞かせ願えたらと思います。
最後までご覧くださいまして誠に有難う御座いました。
以上、ものぐさ和裁師でした🪡

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