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袖口から見えるもの

こんにちは、ものぐさ和裁師です^^

自分の着物を仕立てる時、どんな仕立てをすれば心地よく着続けられるだろか?と考えながら進めていますが、着物の部位の一つで『袖口』について思うところがあり、変化を加えて仕立てていました。

この寸法を加減すると見た目にどう変化を与えるのか。ものぐさの考えを写真と共に掲載しております。ご閲覧者の皆様にとってこれからの着物を考える参考になればと思っています。

◯袖口寸法の目安

袖口とは『袖から腕を出す口』の事で、袖山〜袖口留まりまでを測った寸法のことです。

6寸(22.7㎝)の袖口の見え方

着物を仕立てる際に基準となる袖口寸法の目安は以下です。

⚫︎成人女性の袖口寸法の目安は6寸(22.7㎝)

これに対し

⚫︎1歳の子の袖口が4寸(15.1㎝)
⚫︎14歳は5寸5分(20.8㎝)
⚫︎成人男性で7寸(26.5㎝)

となります。

◯袖口からの様子

袖口から見えるもの。と見出しを打っていますが、自分で袖口全体の様子をゆっくりと伺う機会はなかなかにありません。

↑写真は自分から見た時の袖口の様子です。

着物を楽しむ中で上半身を中心に衿の角度などに着目することはありますが、お客様から袖口へのこだわりを聞ける機会はありませんでした。それ程に気を止める必要のない寸法と言えるのかもしれません(^_^;)

敢えて着目するのは如何なものかと自分でも思うのですが、ものぐさなりのこだわりが伝わればと念じつつ書いていきます。

私が1番気に留めている仕草はこちら。
極端ではありますが、腕を真っ直ぐに伸ばした時の袖口の様子です。

袖口内側の様子が、身八つ口の向こうまですっかり見渡せます。

滅多に上記の様なポーズをとることはありませんが(賞状授与等かしら)不意に手を伸ばした時などの脇辺りまで見えそうな姿が上写真↑と重なるのですが、まさかこれを人様に見られたかと思うと冷っとしてしまうのです。ナイトハオモウケド。。。((((;゚Д゚)))))))

見栄えに働く感情は人それぞれで、見えるからこそ良い。と考える方も居って当然ですし、ものぐさとしては様々な感情に触れながら、着物の楽しみ方を増やしていきたいと考えています♩

腕を前方に突き出さなくとも、普段の仕草から袖口内側の様子を伺うことは可能です。

この写真の着装↑は、着物+長襦袢にその下は肌着としてキャミソール風の物を使用していますので、袖のある肌襦袢を着ていない。というのが、バレバレなわけです(^^;)ババシャツの日じゃなくて良かった〜〜

例えば肌着はどんな物を身に付けているの?
襦袢は誂えたものかしら?など袖口から予想できることは、意外にも多いです。

袖口や裾口はチラリと見える素肌に艶を感じさせますし、品位が表される部位でもありますから、お出かけ用着物と普段着とで寸法を使い分けて、見え具合を調整してみても良いかもしれませんね。

寸法調整しても違和感を与えないように

目安寸法である袖口6寸(22.7㎝)は、ものぐさにとっての正解寸法ではないと感じています。

◯目安寸法6寸が合わないと感じる理由

袖口寸法6寸が合わない時感じる理由は以下の通りです。

①風の通り

夏着物の様子
しっかり二の腕が見えちゃっています(ーー;)

冬は袖口から肌寒さを感じることはありませんか?
袖口の開きは体の熱を逃す作用が有りますが、冬には保温効果を求めて、開きを狭く調整しています。つまり夏袖口と冬袖口とでは寸法を加減した方が理にかなっていると思うのです。

②ドアノブに引っかかる

これは巷ではよく聞く話題ですね。
丸いものや、レバータイプのドアノブに袖口の開きが丁度引っかかってしまうのです。
急いでいる時などは特に、ここを引っ掛けて裂けてしまうなんてこともしばしばあります。現状は悲惨とも言えますね。

しかし予め寸法を調整することで、引っかかりを極力抑えることは可能です。

ものぐさは袖口寸法を変えてから今までに、ここを引っ掛ける回数は0になりました。
今は引っ掛けていないので、ドアノブを気にする事も無くなったために、危うくこの問題を忘れてしまうところでした。

③両袖口に手を通す

例えば着物の袖口に手を通して寒さをしのぐポーズ。

このまま両袖口に手を隠せば
『寒さをしのぐポーズ』

このポーズにする為には袖口に一定の広さがないと十分に両手を入れることができません。
そういった考えもあっての目安寸法なのでしょう。

現代においては寒さを凌ぐ便利な小物も豊富になりましたし、何より温度管理の整っている環境が常のことが増えましたのでこのポーズを見かけることも減りました。
この寒さを凌ぐポーズにしたところで冷たい風が入ってくることには変わりないのでそれ以外の回避策があるのではないかと思うのです。
例えばこの写真の着物で言えば、もう少し袖口を詰めれば風が通りにくくなり、保温効果も高まるでしょう。

この『寒さを凌ぐポーズ(勝手に命名を失礼します)』は、男性着物ではよくあることですが、女性ならマナー違反になるのかしら?この辺り詳しくなくてすみません。

私は袖にタスキを仕込んでいることもあるのでこの仕草はやりがちなのですσ(^_^;)
マナー違反かもしれないけど、使いやすいのに越したことはないのでお許しを!
袖口寸法が広いから狭くしたいという考えはありますが、女のものぐさでもギリギリ両手首が入る程度の寸法までに留めています。

6寸(22.7㎝)の袖口

⑤皆んな違う

こちらのnoteはものぐさの写真を中心に掲載して話をしていますが、背の高い方から低い方、身体の特徴は種々ありますが、数多の特徴に合わせて着る人を引き立てる寸法を決めたいと考えています。

袖口寸法もそれを考える大切な寸法の一つだと思うのです。



◯袖口寸法を考えるにあたり考慮すること


先述の目安寸法がものぐさには合わないと感じる理由から、寸法調整にあたり考慮する点をあげてみます。

①両手首が差し込める寸法にするかどうか
袖口の開きをどの程度にしたいか鏡を使って客観的に考えてみてもよいでしょう。両手がギリギリ入る寸法だと見え方は控えめになり、ゆったり寸法ですと大きな開きから襦袢のお洒落や色が伺えますので、お好みに合わせて決めてください^^

②冬なら控えめに、夏に着るならゆったりと。袖口から吹き込む風の通りを調整できるなら、夏着物と冬着物で多少寸法調整してもよいでしょう。夏着物より短く設定するのも有りです。

③生活スタイルに合わせましょう。ドアノブ問題回避!
ドアノブ問題は着物だからしょうがない。と言うよりも、着物の寸法のほんの少しの調整でストレスを軽減出来る可能性があるので生活しやすいスタイルに合わせて調整していきましょう♩
非常にせっかちなものぐさは、ドアノブに引っ掛ける度に時間のロスを考えてしまうために、同族の皆様に強くオススメしたいのです(^◇^;)笑

また、習い事等の流派の考え方によって着物寸法の変化は影響を与える可能性がありますので、よくご確認の上に寸法調整を行われてくだいませ。

④付随する寸法
上に着る着物寸法を調整されましたら、下の襦袢の袖口は大きい方の寸法に合わせてください。
例えば着物袖口6寸(22.7㎝)だと襦袢袖口はそれにプラス2㎝程。着物の袖口を大きくされた場合は大きくした寸法に襦袢を合わせておくとよいでしょう。

④全体を見て
手首の太さや、手の大きさは大小ありますから、自分にとって使いやすいサイズ感を考えてみてください。勿論、現状維持でも全く問題はありません。着物着用時に感じた些細な感情を大切にして、次の着物の仕立てに変化を加えることが出来たら、今よりももっと着物を着たい!と思える機会が増えるのではないかと感じています^^

それから、袖口は擦れたり汚れたり等のトラブルの多いところなので、注意が必要です。
仕立ての際にその程度を伝えられると対応も変わるかと思います。


◯様々な袖口寸法

ここからは袖口6寸に拘らないで仕立てた着物達の写真をご覧くださいませ♩

6寸ではない袖口寸法

着物の上から羽織ったコートです↑↑
襦袢と着物とコートと。それぞれに使いやすい寸法があります。

6寸よりも小さくしてみた袖口

この着物↑は袖丈が1尺7寸(64.3㎝)ありますので、袖口が小さいと見た目の印象も変わりますね。

こちら↑は着物もコートも6寸(22.7㎝)の袖口です。寸法を整える重要さが伝わってきます。(下写真では左側)

左写真が袖口6寸の様子

右の袖口と比べて、圧倒的に広いと感じさせる左側の袖口↑
雨ゴートに広い開きは必要でしょうか?目的に合わせて袖口寸法も細かく設定すると良いでしょう⭕️

こちらの朱赤の雨コートに関しては、以下のnoteも合わせてご覧くださいませ^^↓↓

↑この写真の結城紬に合わせた袖口寸法が、今のところものぐさに合っていると感じる寸法です⭕️


袖口寸法に関わらず、着物初心者の頃と、少し着慣れてきた頃と、はたまたどんな代物でも自分のスタイルに合わせて着こなしてしまう玄人の方と。一つの寸法に対しての受け取り方は着用するタイミングによっても全く変わります。

袖丈170分(64.3㎝)
袖口は6寸(22.7㎝)より少ない

着用時の補正や簡略の程度によって見栄えは変わってくるので、着装のお悩みや気になることがあれば、お気軽に仕立て屋にお伝えくださいませ。

尚、ものぐさ和裁師のnoteはものぐさの独断で書いております。その為に各縫製所によっては意見が異なる場合が考えられますので、仕立て依頼の際はご自身の希望寸法を、分かりやすくお伝えくださいませ。
ものぐさに直接メッセージをいただけますと、相談から受け付けていますので、はっきりとした寸法が分からなくても問題ありません^^

今回も簡単ではありましたが、袖口についての思うところを書きだしてみました。
寸法調整のニーズの少ない部位ではありますが、是非感想をお聞かせくださると大変参考になります^^

新しい年も皆様の着物生活の励みになるような投稿を心掛けていきますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。

ものぐさ和裁師はお客様のご要望に寄り添って仕立てを行います。
仕立て依頼等の各種相談は↑noteをご覧になった上でお問い合わせくださいませ^^

以上、ものぐさ和裁師でした🪡

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