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ぼくにも、「選ぶ」権利がある。
「今日のズボンはどちらにしますか〜?」
そう言って、緑と黒のズボンを掲げると、「うーん、こっち!」と黒を選ぶ。
「では服は、どれになさいますか〜?」
「靴下は、どっちがよろしいですか〜?」
これは、朝のお着替え屋さん。
長男に、服を選んでもらうときに行う遊びだ。
時間と心に余裕がある時限定オープン。
長男は、この遊びが大好きだ。
もっと小さい頃。
長男はなかなか「自分で選ぶ」ができなかった。
お菓子も、服も、飲みたいものも選べない。
私の顔色を伺って、はっきり「それほしい」と言えなかった。
特に食べ物や飲み物を選ぶのが苦手で、それは、私に原因があるかもしれなかった。
小さい頃、便秘がひどかった長男。
私は食事中、いつも「これを食べたら?」「まずこれを飲んでね」と、事細かに指示をしてしまっていた。
その頃の長男は、食べる順番や飲みたいものを自由に選び、決められなかった。
長男にも、「自分で選ぶ」権利があるのに。
私はそれを、奪っていた。
もちろん、体調を思ってのことだ。
ものすごく極端な制限をかけたわけではないし、配慮しているつもりだった。
でも長男は、もともとはっきりと意思を示す方ではなかったので、すっかり私の言いなりだった。
その後、便秘も通院で解決し、いざ自分で選ばせようとしたときには、すでに私の存在が邪魔をして、なかなか自分で選べなかった。
これは、よくないよな。
申し訳ないことをしたな。
そう思ってあれこれ調べ、とにかく「自分で選ぶ」場面をどんどん増やそうと考えた。
そして、長男が選んだことに、なるべく口を出さないと決めた。
そして冒頭に戻る。
自分が着る服を「選ぶ」。
昨年までは「どれでもいい」とか、「よく分からへん」とか言っていたのだが。
年齢が上がり、服を選ぶ基準(暑さや寒さ、着心地、コーディネートなど)を少しずつ理解するようになったからか、だんだん自分で楽しんで選べるようになってきた。
さすがにまだ、引き出しからすべて自分で選び出してくることはできない。
たくさんの選択肢は、彼を迷わせ、不安にするようだ。
それでも二つから一つを選べるようになったことは、大きな進歩。
服選びは、毎日繰り返される「選ぶ」ことなので、この練習は大きくなっても役立つかも。
こんなふうに、「自分で選ぶ」は家の外にもたくさんある。
昨日、長男と買い物に行った際、珍しく「お菓子が欲しい」と言い出した。
食品売り場の駄菓子コーナーに連れて行くと、ずらりと並ぶお菓子たち。
ここで私なら、「こんなにたくさんのお菓子から選ぶなんて!どれにしよう!」とワクワクする。
でも長男は「決められないよお」と困っていた。
ひとつひとつがどんなお菓子で、どんな味で、どんな値段か。
何も情報がないんだから、そりゃ選べないか、と納得する。
私だって、異国の地で好きなお菓子を選べと言われたら困る。
時間があれば、一つずつ説明してやるのだが。
この時は、空腹のせいでヘニョヘニョだったので、絶対に好きな「ヤングドーナツ」と「ミレービスケット」の二つから選ばせた。
「長男ちゃんね、家にミレービスケットあるから、今日はドーナツの気分!」
セルフレジにも挑戦し、嬉しそうに話す長男。
惰性ではなく、彼なりの基準で選べたようで、満足げな表情だった。
その後、ケーキ屋さんでケーキも選んだ。
長男は、はじめてチーズケーキをチョイス。
夕飯後、おそるおそるチーズケーキを口にして、「うーんそっちの方が好きかな!」と、夫のショートケーキを指差していた。
どっちの方が自分好みか。
どっちの方がおいしいのか。
これも、自分で選んだから、比較できる。
もし私が勝手にケーキを買ってきて、「あなたはこれが好きでしょ」と決めつけてしまったら。
自分は一体どんなケーキが好きなのか、わからなくなってしまうんだろう。
こんなふうに長男は、少しずつ、ほんの一歩ずつだけど、確実に「自分で選ぶ」あるいは「自分で決められる」ようになっている。
そのことが、彼の世界をさらに広げ、挑戦への自信になり、次にまた自分で決める時の勇気を蓄えてくれている。
子どもにも、自分で選び、自分で決める権利があること。
親の私たちはついそれを忘れ、良かれと思ってあれこれ口を出してしまうけど。
そっと彼らの選択を見守り、失敗をともに笑い合い、次へのステップを応援できる存在でありたいと、常に思う。
つい忘れて、口出しちゃうんだけどね。
そんなことを思いながら、私もまた、ケーキ屋さんで選んだ濃厚チョコレートケーキを頬張る。
うん、おいしい。
レアチーズケーキと悩んだけれど、こっちを選んで正解だったな。
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