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命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】



「お願いです!命だけは!」

悲痛な声で、蜘蛛が叫ぶ。
しかし、敵は聞く耳持たない。
容赦ない攻撃をすんでのところで交わした蜘蛛は、そのまま走ってその場を離れた。

少しでも遠くへ‥!
必死に足を動かした。
一体どうして、こんなことに。



始まりは、唐突だった。
家の中心で空を見上げていたら、突然の揺れに襲われた。
強い衝撃。
気づけば、地面に落ちていた。
痛みに襲われ、しゃがみ込む。

しかし、それがいけなかった。
敵は、蜘蛛が動きを止めるのを見逃さなかった。

「やめろ!俺が何をしたって言うんだ!」

蜘蛛が叫ぶ。
しかし、敵は怯まない。
蜘蛛は、覆い被さる影に目を瞑った。


「こら!クモさん踏んだらあかん!」

息子を抱き上げるが、一足遅かった。
1歳の息子の靴の下から、ぺしゃんこのクモが現れた。
ああクモさん、ごめんなさい。


この春、息子は初めて虫に出会った。
アリ。てんとう、ダンゴムシ。
みーんな踏んで、潰してしまった。
悪意はないが、躊躇もない。

子どもあるあると分かりながら、私は息子をたしなめた。
息子はきょとんとクモを見る。
ああクモさん、お願いですから化けて出ないで。

(465字)

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真っ先に息子が浮かんだお題だった。
最近、あたたかくなり虫によく遭遇するが、一瞬もためらうことなく、潰すか踏む。
いつか虫に呪われそうで、親の私が肝を冷やしている。

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