彦星誘拐【毎週ショートショートnote】
「あれえ、彦星さまがない〜」
長男が指差す方を見ると、たしかに「彦星」は消えていた。
昨日の七夕。
折り紙で作った織姫と彦星。
黒い画用紙に並べて、壁に飾ったはずなのに。
「誘拐されちゃったのかな‥」
最近、警察ごっこに夢中の長男が、彦星の身を案じる。
彦星誘拐事件。
二人の関係に不満を持つ身内の犯行か、はたまた誘拐に見せかけて、彦星が現状からの逃亡を図ったか。
長男と探すも、見当たらない。
作り直す?と聞いたが、長男は首を振った。
まあ、いなくなったからといって、すぐ新しい男に乗り換えさせるのもよくないか。
長男は切り替えて、警察ごっこを始めた。
私も付き合い、警察二人で誘拐犯を探して遊ぶ。
ふと次男が静かなことに気がついた。
1人遊びが上手な次男。
部屋の隅で静かにしている時は、大抵よくないことをしている。
いた。
ソファーの影で座り込む背中を発見。
「‥何してんの?」
ハッと振り向いた次男の手元には、破れてぐしゃぐしゃの青い折り紙が散乱していた。
____________
【412字】
お題がピンポイントなおかげで、逆に考えやすいように思えてきました。
我が家で頻発する、誘拐失踪事件は大体こんな感じです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?