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反射性住居

原広司といえば、2年間に渡る世界の集落調査を記録した「集落の教え100」(彰国社)が有名である。そんな著者の住宅理論、反射性住居は住宅の内部に都市や自然を映し出した(故に反射性住居)新しい形式も持つ住居である。
反射性住居の特徴は8つにまとめられる。

1.内核(スカイライトを持ち天井が高い通路と居間部分)
2.対称軸を基準としたものの配列
3.慣習的な住居の外観。あるいは周辺で目立たない外観。
4.必要以上に開口を持たない外壁。比較的閉じた住居。(しかし、自然に向けては大きく開かれた住居)
5.内核から採光する小さな個室群。
6.住宅内における季節に対応するゾーニング
7.そのための日本間
8.地形が傾斜であれば、傾斜に沿った床の高さの設定。

1.2.4.5は比較的都市を住居に映し出す理論、3.6.7.8は比較的自然を住居に映し出す理論という印象を受ける。前者は数学好きな原先生らしい形式的な理論で、後者は集落の調査から得た知見を応用した慣習的な理論といったところだろう。

一見すると相反するように思える理論だが、自然に対する建築の立ち方(外観)の理論がある事で、住居内に入った時に立ち現れる都市(内部空間)がより一層演出される=「反射がより強調される」という意味で理解すると合点がいく。

また反射性住居の理論で建てられた、栗津邸(1972)、原広司自邸(1974)、工藤山荘(1976)、ニムラ邸(1978)は自然の中に佇むように建っている。一見すると周辺の別荘地に馴染んだ建築の内部へ立ち入ると、異世界に迷い込んだように都市が立ち現れる。上部のトップライトから入る自然光は内核を通して各個室へ供給される。
自然/都市を何度も反射・反復する事で、多層構造、浮遊感といった建築的思想に繋がっていく。

幾何学的要素を使った住宅デザインの探求という印象が強かったが、幾何学があることで、自然がより際立ち、また幾何学もより際立つ。お互いに反射し合うことで生まれる住居の形式。この反射の間にインターナショナルスタイルと集落(ヴァナキュラー)という近代以降の二項対立を乗り越える突破口を見出したい。

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