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幽霊の宿る部屋

こんにちは。佑月です。
今日は、「引っ越した部屋に霊がいた」という、過去の体験についてお話します。

霊が見える人は、見たくもないのに見てしまい、嫌な気持ちになることがあると思います。一方で、霊が見えない人は、霊がいても気づきません。そして運悪く、霊の宿る部屋に引っ越ししてしまうこともあるのです。

実は、私は、シャンプーをするときに、背後や目の前に霊の気配を感じて、目をつぶることができません。人に話すと笑われてしまうぐらいの大変な怖がりです。ですので、幽霊の宿る部屋に引っ越してしまった経験は、今もトラウマになっています。

もし私と同じように、怪奇物件と知らずに不動産の契約をしてしまう学生さんがいたとしたら……。私と同じ思いはしてほしくない。そう思い、数十年越しに記憶のかさぶたを剝がしました。

東京での一人暮らし。吸い寄せられるように怪奇物件へ

私は東京の大学に通うことがきっかけとなり、一人暮らしを始めることになりました。
ところが、大学4年間で3回も引っ越しを繰り返してしまいます。その理由は、心霊現象です。
家族や知人には、はっきりと霊を見ることができる人もいます。一方、私は、ぼんやりと輪郭が見える、気配を感じる(気のせいのことも多いと思う)という程度です。

大学4年間で3回の引っ越しとなると、1年に1回引っ越しをした計算になります。そのたびに、高確率で怪奇物件を引き当てていたわけです。多額の礼金・敷金・引っ越し費用がかかるので、両親に相談するたびに、申し訳ない気持ちになっていたことを思い出します。

「どうして私は怪奇物件を選んでしまうのか!? 」

そこで今回は、怪奇物件をどのように見つけたか(積極的に見つけたかったわけではありません。むしろ出会わずにいたかった)お話ししたいと思います。
この記事を読んでくれたみなさんが、快適な部屋で暮らせますようにと願いを込めて。

唯一営業していた地元の不動産屋さんで

東京は土地勘もなく、仲の良い知り合いもいなかったので、地域の治安の良し悪しや、暮らしやすさなどなにもわからない状態で家探しをしなければなりませんでした。仕方がないので、大学に通いやすい路線で、大学から近く、急行も停まる駅を選びました。そして、地元の不動産屋さんに手あたり次第あたってみる作戦を考えました。

ところが、運悪く、その日は水曜日。駅前にある不動産屋さんはどこも閉店です。ですが、1軒だけ空いている不動産屋さんを見つけました。

そこは老夫婦でやっている、昔ながらの不動産屋さんでした。「明日帰るのでなんとしても今日中に物件を探したいです。予算は7万円で、オートロックの部屋がいいです」と要望をつげました。すると店主は渋々という感じで、1軒だけ紹介できる物件があると言いました。

駅から徒歩7分。築浅、オートロックの物件

不動産屋さんの店主は、歩きながら、なぜこの物件を紹介するのか話してくれました。合鍵は管理する不動産屋さんが持っていること、ほかの不動産屋さんが休みで鍵が借りられず内見できないこと、そしてすぐに内見できるオートロックの部屋が1か所しかなかったことなどなど。

徒歩7分と書いてありましたが、店主のおじさんの話に耳を傾けながら、活気のある商店街に目を取られているうちに、あっという間に現地にたどり着きました。
そこには真新しくてデザインも素敵で、幹線道路沿いの日当たりの良い物件がありました(みなさんが聞いたら必ず知っているだろう、有名な某マンションシリーズです)。

急行がとまる都心のマンション、駅から徒歩7分、家具付きのオートロック、築浅、ワンルームだが広い。

大人になった今なら、「これで7万円は安すぎだろう。ひょっとしたら事故物件?」と疑うことができます。でもそのときは、はじめての一人暮らしで、そんな勘は働きませんでした。希望の物件がすぐ見つかったことに安堵し、そそくさと契約を済ませました。

部屋番号は404号室。そして2か月目に気づいた異変

(404号室の水色のドア)

契約するときに気になったのは、部屋番号が404号室ということでした。

「部屋番号の末尾が4というのは不吉な感じがする。病院もホテルもマンションも、大概、4は飛ばして部屋番号を割り当てていくのに、なんでだろう?」

ですが気になったのは部屋番号がだけではありませんでした。この部屋が明らかにおかしいと気づいたのは、住んでから2か月たったときでした。

ある日、玄関のドアノブ辺りが、水色のカビで覆われていたのです。まるでチョークのように鮮やかな水色でした。ですが、近くで見るとやはりカビなのです。
水色のカビはドアノブからはじまり、徐々にドア全体に広がっていきました。濡れた雑巾で拭いてみましたが、簡単には落ちません。そのため、外出のたびに、水色のカビと握手をしてから外に出なければならなくなりました。異形の者と握手しているような、そんな不快感が離れませんでした。

「東京は梅雨があるからなあ」

と多少のカラ元気で、呑気そうに構える私に、大学の友達は反論。梅雨で湿気が多くてももそんなことにはならない、と口をそろえて言いました。
そうなんだ。うちがおかしいのか。

住み始めて2か月目に抱いた違和感です。

これは怪奇現象?気のせいだと思いたかった

その後も、怪奇現象は続きます。次は、夜中に勝手にテレビがつくようになりました。

「買ってからまだ3か月だけどテレビが壊れたのかな? それか、隣の住人が同じリモコンを使っていて、たまたまうちのテレビが反応してしまったのかな? 」

ザワザワした気持ちで、オートロックのドアの外にある、1階の集合郵便受けを見に行きました。

「あれ、両隣がいない。引っ越ししたのかな……」

よく見ると、郵便受けの6割以上に名札が入っていませんでした。つまりこのマンションは空室だらけなのです。こんなに良い場所でリーズナブルなのに、なぜ入居者がこんなにも少ないのか。嫌な予感がしました。しかも、その後、名札をよく観察していると、新しい人が入ってきては、また引っ越しをしているようでした。

「これは本物の怪奇物件かもしれない……」

部屋にいることが怖くなり、ひとりで家にいることができなくなりました。実家が埼玉の友人が、毎晩のように泊まりに来てくれて、なんとかその部屋にとどまることができました。

ウジ虫の卵、ポルターガイスト。相次ぐ怪奇現象はもう気のせいではない

同居してくれた女友達は、夜間学部に通っていたので、彼女一人だけ家にいることがよくありました。
すると、ある日のこと私が家に帰るとまだ家にいた友達が、

「ねえ、佑月。この窓際に白いものたくさん落ちてるでしょ。これウジ虫の卵だよ」

言われてみてみると、確かに白い楕円形のものがびっしりと窓際の絨毯を埋め尽くしていました。

「あとさ、備え付けの冷蔵庫の中身も見たんだけど、何も入っていないのに、ここにもウジ虫の卵がたくさん落ちてるんだよね」

電源をいれず使っていない冷蔵庫を恐る恐る開けると、そこにも無数の卵がありました。

吐き気がして、思わずトイレに飛び込みました。

「今度掃除しておくから」

と友人は言いました。私が大学に出かけている隙を見て、卵に熱湯をかけて、すべて処分してくれました。

ところが、ウジ虫の卵が片付くと、今度は別の怪奇現象が起きるようになります。備え付けのベットだったのですが、住み始めて4か月目の頃から、夜になるとガタガタと揺れるようになりました。

「じぶんの思い過ごしではない。ここは間違いなく怪奇物件だ」

ぎゅっと目をつぶった私の顔の間近に、誰かの顔がぴたりと迫ってくるのを感じ、さらに強く目をつぶりました。

「もう限界。引っ越ししよう」

霊視の結果、思いがけない事実が

住んでまた4か月しか経っていないし、礼金と敷金も1か月分ずつ収めてしまった。だから親には言いづらいけど、この家で一人暮らしをすることはもう限界がきていました。

それと同時に、あのときの不動産屋さんのおじさんの顔を思い出しました。あのとき渋りながら紹介してくれたのは、ひょっとして私にこの部屋に住んでほしくなかったからじゃないのだろうか。なのに、無理に今日契約したいと言ったので、勢いに押されて仕方なく紹介してしまったのではないか……。

引っ越す前に事実を確かめたくなりました。ほんとうにこの部屋は怪奇物件だったのか。

そこで、霊能力があるという2人に知人に家を見てもらうことにしました。ところが、家に入ってすぐに、そのうちの一人に異変が起きたのです。

「霊が乗り移っている。すぐにこの家から出ないと危険だから、とりあえず外に出て」

言われるがままに着の身着のまま外に出て、タクシーに乗り、霊に取りつかれていない方の友人の家に行きました。その人は霊媒師まがいのことができるのだと言い、除霊作業を始めました。
私は数日間家で寝ることができず、憔悴しきっていました。時間もすでに深夜3時を回り、ぼーっとした状態で彼らの様子を眺めていました。

「休んでていいから。あとは任せて」

人がいる安心感。ここには霊はいないという安心感。緊張の糸がぷつりと切れて、私は崩れ落ちるように眠りました。

朝起きて、数時間に及んだものの除霊作業は無事に終わったと聞かされました。そして知人が言った一言。

「あのマンションが建っている土地は、もともと戦争で亡くなった人たちの遺骨がたくさん埋葬された場所だ。ベランダから外を見たのだけど、地上にも無数の霊が見えた。さらに部屋には霊力がものすごく強い男性の霊がいて、『お前は嫌いだから、彼女だけおいて早く出ていけ』と話しかけてきた。とにかくあの家は危険だから、一刻も早く引っ越しをしてほしい。」

寝ているときに顔の間近で感じた気配は男性の霊だったのか……。
引っ越し作業は、また誰かに霊が乗り移るおそれがあるのと、家具は備え付けで荷物も少なかったので、誰にも手伝いは頼みませんでした。

荷造りを終えて、部屋を掃除して、部屋のドアノブに手をかけたとき、ふと不安がよぎりました。

「もしかしたらこのドアは開かないかもしれない」

ドアと私の間には、確実に男性の霊がいることを感じました。ですが、霊は私に手を出すことなく、ドアは開き、エレベーターも動き1階に降りることができました。

「これでようやく新しい日常が迎えられる」

私は温かい風が吹く日常の世界へと解放されて、ようやく身体の血が流れだした気がしました。

【怪奇物件の見分け方】
・空き部屋が多い
・値段が安く設定されている
・頻繁に引っ越しをしていく
・カビが生える(おそらく霊の通り道に)
・ウジ虫がわく
・常に視線を感じる
・テレビの電源が勝手につく
・ベットがガタガタ揺れる




 

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