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私達はどこまで自由なのか?文化ゲノミクス

人間のあり方は遺伝だけで決まるわけでもなければ、環境だけで決まるわけでもありません。環境が遺伝子のあり方に影響を与えることもあれば、遺伝子が環境に影響を与えることもあります。

例えば牛乳を消化できるかどうかに関わる遺伝子がありますが、乳牛を飼うような地域では、この遺伝子を持っている人のほうが生存確率が高まります。そのため時代を経るにつれて、ある文化の中で牛乳を消化できる遺伝子を持っている人が増えていきますし、それに連れて乳牛の飼育量も増えていくでしょう。

このような関係性は遺伝子と文化の共進化と呼ばれていますが、今回取り上げる論文は、このテーマについての総説論文になります。

社会・文化環境と遺伝子の共進化と相互作用:これまでの成果と今後の課題

多くの内容が取り上げられているのですが、以下にいくつかピックアップします。

・ドーパミンに関わる遺伝子であるDRD4のサブタイプが、新奇性や衝動性、文化への染まりやすさに関係している。
・セロトニンの代謝に関わる5-HTTLPR遺伝子のサブタイプによって不安感や集団主義に関係している。
・オピオイドに関わる遺伝子であるA118G遺伝子のサブタイプによって社会的な痛みに対する感受性が変わる。
・これらの遺伝子のサブタイプの多さは地域によって異なる。
・しかし近年行われている大規模研究の結果からは、これらの知見の信頼性が揺らいでいる。

ちなみに複数の遺伝子の効果を合わせて、その人のあり方(幸福への感受性や社会的成功、教育年数)などを予測する方法もあるそうですが、この方法であっても遺伝子で説明できるのは数%レベルであり、私達の有りようは遺伝子や環境だけで説明するには、あまりに複雑なのかなと思いました。

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