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本の出会い系で名著とオフ会

とにもかくにも、本を読んでいる。
最近、「Chapters」という選書サービスを利用しはじめた。

Chaptersは毎月4冊の本だけを取り扱う月額制のオンライン書店です。どんな本かはあなたの元へ届くまでのお楽しみ。添えられた紹介文をもとに、気軽に一冊をお選びください。

名前が伏せられたままの本4冊の中から、紹介文を頼りに1冊を選ぶと、それが郵送で送られてくるシステムだ。

ブックカバーやしおりがオシャレで小粋

今回はその利用レポを書いてみようと思う。

本は友達であり恩師であり愛人であり人生の伴侶

本屋に足を運び、こころおもむくままにどれを読もうか選ぶ時間は、至福のひとときだ。

本はすごい。心温められるものも、絶望するものも、安らぎを分けてもらえるものも、恍惚なものもすべて、おしなべて本のかたちをしている。それが本当にすごい。

どんなに心が揺さぶられるものだとしても、本は物理的なその姿を変えないで静かにそこにいて、開かれるの待っている。この空間に置かれている物語に描かれた感情の総量ってどれくらいになるんだろう。それは私がすべて読みとくまでわからないままなのか――。

そんな妄想を膨らませて、うっとりしてしまう。

そのせいか、本屋を徘徊しているときの私は、すごくやましいことをしているような気分になり、呼吸が荒く、マスクの下の独りごとが格段に増える。

そんな毎日だが、最近、自分で選ぶだけではどうしても、作者やレーベル、装丁などで無意識に偏りが起きてしまうことにも頭を悩ませていた。そんなところにこのChaptersを見つけ、友人とともに始めてみることにしたというわけである。

己の選書センサーの外側にある、新しい本との出会い。
これはさながら、まだ見ぬ名著と毎月あいまみえる「出会い系」だ。

また、このサービスのさらなる特徴に、その本を読んだ人同士がマッチングして感想を言いあえる「アペロ」というオンラインミーティングの時間が設けられていることが挙げられるだろう。

本だけではなく、感想を言いあえる人間とも出会いたい欲張りさんに優しい仕様となっている。本の読み方は人によって千差万別、互いに感想を語り合うことで新しい視点が見つかるし、そのまま自分に運よくパートナー候補が見つかることがあるかもしれない。

私は前者だが、友人はもっぱら後者のようで、選書を読破し待ちに待ったアペロ当日、お相手が待ち合わせに現れず、左半分に映った自分と見つめ合いながら「…今日のお前、悪くないぞ」とマグマの溶解炉へと親指を立てて沈んでいった。(後日、別の方と再度アペロができるらしい)

かくいう私も、未婚の男性2名に囲まれ(私は既婚者)、なんだか申し訳ない気持ちとともに双方へ話題を振り続けてMC業に終始してしまい、せっかくの20分という貴重な時間を散らしてしまった(3名アペロの場合は所定時間を増やしてもいいかもしれない)。さらにうち一人は回線の状態が悪く、まともに話を聞くことも叶わなかったのが悔やまれるが、2人ともビジネス書を読むことが多いらしく、普段読まない分野のおススメ本が聞けたのは大きな収穫だった。


「君、どこの出版社? 書名は?」

さて、肝心な選書についてだが、こちらに関してはとてもいい作品に巡り会えた。人の意見などの事前情報が最低限な状態で、純粋に本と引き合わされ、それを受け容れて、静かに読みはじめる。選んで物を手に入れる性質上、こうした経験が貴重だということに気付く。最高のオフ会環境だと言えるだろう。

8月の選書テーマは「旅」。世界各地をめぐる物語のうち、私は「鹿児島」が登場する物語を選んだ。鹿児島という国内でさえ気軽に赴けなくなってしまったいま、「行きたいし行けるけど行けない」場所で展開される物語を読んで、そこに行った気分に浸りたかった。ほか3編よりも、暗そうな感じも好みだった。

読んだ感想について、ネタバレのない範囲でいうと、物語に登場する人物の数だけその人が過ごした年月の厚みがあるのを強く感じた。その人が生まれ、生きてきた場所、可能な選択、時代に翻弄されながらも生きることを諦めない美しさに、心うたれた。物語の後半、不覚にもうるっとしてしまった。

読了後、件のアペロで爆散した友人とも個人的に野良でアペロをするべく、友人が選択した「ハワイ」の選書も読んだ。穏やかで慈愛に満ちたハワイという場所で、主人公たちが日常をもう一度やり直そうとするさまが、しなやかで印象深かった。

「主人公が泣き虫だと思った」と友人に告げたところ、「主人公にとってハワイは涙をこらえなくてもいい居場所なんだよ」と言われ、(私は最近、いつ泣いたんだっけかな……)と、はっとした。

その直前3日前、ホルモンバランスの乱れで大号泣している自分にいとも簡単に思い当り、淡い感傷は即座に消えることとなった。

ともあれ、こうしたサービスを利用しなければ、2冊とも読む機会がないまま、私の人生は終わっていただろう。読了したいま、そんなこと考えるだけでもあまりに寂しすぎるし、案外こういうことの積み重ねで人生の秤は傾いたりするのかもしれないと感じている。

これから、秋の夜長、読書の季節へ本格的に突入する。9月のテーマは「モチベーション」。4つの職業を異にする主人公たちの物語から、あなたのこの秋を始めるのも、おもしろそうじゃないですか?

私の招待コードを貼っておきます。初月150円引きだそう。興味のある方はぜひ使ってみてください。招待コード:WJLAN




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