元気をくれる魔法の道
川端通りから一本入ったところに、
僕にとっての魔法の道がある。
観光街でもなくて、
多くの人にとってはただの路地だろう。
それでも僕にとっては、あそこのタバコ屋の角は
元気が湧いてくる魔法の道なのだ。
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人にはそれぞれ思い出の場所があると思う。
その思い出の場所を頭に浮かべる時、
その時に感じていたことや、一緒にいた人のことを思い出す。
喜びを噛み締めて歩いたこと。
今は自分の隣にいない大切だった人。
いろんなことに疲れてしまい、雨の中傘もささずに一人で佇んだ瞬間。
僕にとってこの道は、外国人観光客に少し道案内をした場所だ。
道案内といっても、学生時代にガイドサークルにいたから、
案内すること自体は日常の1シーンでしかない。
それでもこの出来事を鮮明に覚えているのは、
僕が不安な気持ちを抱えていたときに起きたことだから。
この道で正しいんだろうか。
目的地に辿りつけるんだろうか。
まだ新しい環境に慣れずソワソワした僕の気持ちが、不安そうに地図を見つめる彼女らと重なった気がした。
交わした言葉は大したことではなくて。
「いつ日本に来たの」とか「この辺りはもうたくさん歩いたの?」とか。
どれだけ役に立ったか、本当のところはわからない。
でも僕は、自分と重ね合わせた彼女らの安堵の表情をみて、ホッとした。
彼女らの道しるべとなれたことが、
不思議なことに、自分の道しるべにもなった。
自信を失いそうになった僕が、元気になれる魔法の道。
名前を知らない人と仲良くなることはあるけれど、名前を知らない道との出会いもあるんだな。
季節がバトンを渡そうとしているさなか、
その道は変わらず堂々として見えた。
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