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丁寧におさらいしてみませんか?新NISAの始め方 第1回 ~貯蓄から投資へ~

2024年1月に新NISA制度がスタートしてから約半年が過ぎました。NISAは個人の安定的な資産形成を促すことを目的に運用益が非課税になる税制優遇措置として2014年に導入されたものです。特に最近は電気料金や食料品などの物価高が続いており、貯蓄だけでは将来必要な生活資金を確保できないと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
 
今回のマネサプ記事では、物価高の背景、新NISAの概要、投資のメリット・注意点についてわかりやすく解説します。NISAを始めようかと悩んでいる現役世代の方は、ぜひ参考にしてください。


老後2000万円不足から老後4000万円不足へ

スーパーに行くと生鮮食品や日用品の値上がりを感じることがあります。実際、2023年平均の消費者物価指数は3.1%上昇するなど、その伸び率は40年ぶり以上の高い水準に達しました。2024年4月現在も前年同月比2.5%上昇とインフレは続いている状況で、家計への負担増加を心配する方も少なくないはずです。
 
このような中、さらに追い打ちをかけるように「老後4,000万円不足問題」がSNS等を中心として注目されています。もともとは、2019年に金融庁ワーキング・グループ報告書の「老後の不足額約5万円が毎月発生する場合、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」の部分を各メディアが大々的に報じたことで、「老後2000万円不足」が大きな問題となりました。
 
しかし、今回の件はテレビの情報番組が最近の物価高騰を受けて、3.5%の上昇が20年間続いた場合、現在45歳の人が65歳の定年を迎える際に老後資金として4,000万円が必要になると試算したものです。
 
国の機関が公表した数値ではありませんが、社会的な関心が強い背景として、物価高と将来の生活資金不足を不安に感じる国民が多いことを示しており、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の政策に合わせる必要性がますます高まっているのです。

新NISAは老後対策になる?

株や投資信託で運用益が出た場合、通常は20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金が発生します。運用益とは株式を売却した時の譲渡益(売却益)や配当金を受け取る際の配当益を指しますが、税金として2割も差し引かれるので、投資家にとっては決して小さくない金額です。

→株、投資信託とは
 
一方、NISAではこの税金が非課税になります。NISA口座で買い付けた株や投資信託から発生する運用益は課税されないので、利益をまるまる受け取れるのが大きな特徴です。特にNISAは長期・分散・積立に適した商品がラインナップされているので、10年・20年の長期間で非課税の恩恵を受けながら複利運用により効率的にお金を作れる仕組みになっています。
 
複利運用とは
 
2024年1月からスタートしている新NISAと従来の旧NISAの大きな違いは、①非課税期間が無期限に(旧NISAは最長20年)、②1年間の新規投資額360万円(旧NISAは120万円)に、③非課税限度額1,800万円(旧NISAは800万円)になった点です。
 
1,800万円の投資で10%の利益が出た場合、運用益は180万円です。NISA口座以外であれば20.315%の税金が発生するので、約36.6万が税金で取られ、実際に受け取る金額は143.4万円に減ってしまいます。
 
デフレが長らく続いた日本経済の今後は、インフレ基調が続くのではないかとも言われているので、貯金の取り崩しだけで老後生活を乗り切るハードルは年々高くなることが予想されます。

新NISAのメリット

つみたて投資枠と成長投資枠が併用できる

旧NISAでは「一般NISA」と「つみたてNISA」の併用は不可でしたが、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用可能です。
 
つみたて投資枠は、年間120万円を上限として、長期・分散・積立の運用に適した投資信託を購入できます。購入方法は、定期的に一定額を買い付ける「積立購入」のみとなります。例えば、毎月10万円を積立購入すれば年間投資枠の120万円をキレイに埋めることができます。対応商品数は289本(2024年5月15日時点)です。
 
成長投資枠は、年間240万円を上限として、株式・ETF・投資信託を購入できます。購入方法は、一括買付と積立購入の両方に対応しています。対応商品数は、上場株式なども対象なので投資信託と合わせれば数千本以上になり、選択肢の幅も広がります。

将来必要なお金を作りやすくなった

新NISAでは、運用期間の制限が撤廃され、保有限度額も1,800万円までと大幅に拡大されたことで、将来必要なお金を貯めやすくなりました。長期投資は利息を元本に組み込む複利運用と相性が良いので、運用期間が長いほど利益が膨らんでいく可能性が高まります。
 
また、積立投資は、対象商品の価格変動リスクを抑えて購入のタイミングを気にすることなく運用できる点も大きな特長です。例えば、一括投資で高値掴みをしてしまうと、市場の急落時には元本を割る可能性も高く、「さらに下落するのではないか」との不安から急いで売却して損失を確定するケースも少なくありません。
 
一方、自動的に定期買付する積立投資では、相場の好不調を気にすることなく、いつでも始められるので初心者の方にもおすすめの方法です。

新NISAのデメリット

非課税枠の再利用は翌年以降

例えばNISA口座で保有している100万円分の投資信託を売却した場合、100万円分の非課税枠を新たに利用できるのは翌年以降となります。なお、「100万円分の投資信託」とは購入時点の価格です。保有している間に評価額が120万円に増えていたとしても、120万円分の非課税枠になるわけではないので注意しましょう。

損益通算できない

本来であれば、1年間で生じた利益に対して、他で発生した損失を差し聞くことができる「損益通算」という制度があるのですが、NISA口座で損失が発生した際、他の課税口座(特定口座や一般口座)と損益通算できない点に注意しましょう。例えば、A証券会社の特定口座で10万円の損失が発生し、B証券会社の特定口座で10万円の利益が出た場合、両者を合算して利益をゼロにすることができるので、課税されません。
 
しかし、A証券会社がNISA口座だった場合、B証券会社の特定口座で10万円の利益が出ると、両者を損益通算できないため、10万円に対して20.315%の税金が発生することになります。

まとめ

非課税のNISA口座で長期の積立投資を行うと、まとまったお金を作りやすいですが、元本保証ではない点に注意も必要です。新NISAや投資のリスクについて、さらに詳しい説明を受けたい方は、弊社のファイナンシャルプランナーが最大2回まで無料相談を受け付けていますので、ご活用を検討してみてください。
 
監修:ファイナンシャルプランナー 福田 隼