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【ゆる解説】セイバーメトリクスについて知ってもらいたい

こんにちは、助手ホワイトセルです。
最初の記事を書いてからだいぶ時間が空いてしまいまして、2023年のNPBも阪神タイガースが日本シリーズを制し閉幕を迎えました。

今季の成績が確定したという事で色々と振り返りと来季に向けた考察を進めていきたいと思いますが、今回その切り口となるセイバーメトリクスについて紹介したいと思います。

「なんか聞いたことあるけどどんなものかは知らないな」という方向けの記事として、今回はまず大まかな概要、歴史について紹介したいと思います。


【概要】セイバーメトリクスとは?

打率、安打、出塁率、三振、防御率、被打率、四死球、etc…
野球では様々な数字が登場してきますが、こうした数字を統計学を用いて分析し、勝利(=相手チームより多くの得点を記録する事)を目的とした作戦・采配に根拠を与えることを提唱された考え方です。

とまぁ難しく書きましたが、平たく言えば
「勝つための最善策を数字を用いて見出す考え方」
と理解して頂ければ概ね問題ないかと思います。

セイバーメトリクス(SABR Metrics)という名前は、アメリカ野球学会(Society for American Baseball Research)の頭文字と測定基準・指標といった意味を持つMetricsという単語の組み合わせからつけられています。

【歴史】いつから使われ始めた?

野球のボックススコアは1858年に発明され、以降試合ごとの記録がとられるようになっていきました。アメリカで最初に野球の試合が行われたのが1840年代とされている事を踏まえると、野球の歴史の最初期から安打数や打率、打点、得点といった指標は記録され、今日まで続いている事になります。

時は流れ1977年。ビル・ジェームズという一人の男がBaseball Abstractという本を発売します。
彼は本格的な野球の経験はなく、警備員の仕事の間に野球を統計的な分析を行った記事を作り続けていましたが、題材がマニアックすぎたがゆえ出版社には取り合ってもらえず、自費出版の形で自らの考えを世に発表しました。

この本では18の戦略について触れていますが、そのうち1つは
選手の価値の適切な尺度はより多くの打点を稼ぐことに貢献できるかである」
と提唱しており、これまで打者の評価基準として主流であった打率からほかの指標へ置き換えるべきと、現在では主流になりつつあるこの考え方についてこの時点からすでに彼は主張しています。

翌年も自費出版を続けると、1979年からはEsquire誌にて毎シーズンのプレビューが掲載されることとなり、Sports Illustrated誌の記者からも好評を受けるなど瞬く間に脚光を浴び始めます。

これらの分析手法は、1971年に発足していたアメリカ野球学会の頭文字を借りて、ビル・ジェームズの手によってセイバーメトリクスと名付けられる事になりました。
提唱から約半世紀ほどが経ち、分析家(セイバーメトリシャン)も世界中に増えていき今日も分析が続いています。

【事例①】MLBでの活用

セイバーメトリクスが野球の現場で取り入れられた例としてもっとも有名なのはオークランド・アスレチックスではないでしょうか。
アスレチックスは1990年代からセイバーメトリクスを生かした選手起用・補強を進めており、1997年にビリー・ビーンがGMに就任すると低予算でチームを強化。2015年までの在任19シーズンで地区優勝6回、WC獲得4回と目覚ましい成績を残しました。

このアスレチックスの躍進はビリー・ビーンを主役に据えた書籍マネー・ボールにて描かれ、2011年にはブラッド・ピット主演で映画化もされていますのでMLBマニアではない方もなんとなくご存じかもしれません。
(アメコミ映画好きの筆者としてはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのスターロードでおなじみのクリス・プラットの出演も魅力の一つだったり)

アスレチックス以外でセイバーメトリクスを用いた強化に熱心だったチームとしては、ボストン・レッドソックスが有名です。
レッドソックスは2002年にはビリー・ビーンをアスレチックスから引き抜く事を画策していましたがビーン自身がこれを拒否。
そこで2003年から2019年までセイバーメトリクスの祖とも言えるビル・ジェームス本人を球団アドバイザーとして招聘。在任中に4度ワールドシリーズを制する等こちらも輝かしい成績を残しました。

もっとも、2010年前後からMLBではセイバーメトリクスによるアプローチが一般化したこともあり、現在ではほぼ30球団全てでセイバーメトリクスを活用した采配・編成が行われています。

【事例②】NPBでの活用

申し訳なくもNPB球団内で強化・戦略についてセイバーメトリクスを用いた采配・編成を行ったという記事はちょっと見つかりませんでした…
日本においては監督やGMが采配や編成の根拠について言及する事がMLBと比較して少ない事が要因かと思いますが、編成や査定の過程では必ずセイバーメトリクスでのアプローチがなされているものと想定しています。

一方でNPBはNPB BIPというサービスを2018年4月から提供しています。
これは野球ファン向けサービスの開発や、研究者への分析データ提供を目的として、1995年以降の試合データ諸々を配信していて、試合情報・結果・年度別成績・通算成績・審判情報に至るまで色々な情報を取得することができ。
このデータはニュースメディアや球団のファン向けサービスに活用されているとのことです。
(巨人のファンクラブサイトで勝利可能性まで提供しているのは恥ずかしながらこの記事を書いていて初めて知りました…)

【まとめ】勝利に近づくヒントを得る切り口

ここまでセイバーメトリクスの歴史・運用事例について解説しましたが、簡単にまとめるとこんな感じでしょうか。

・勝利を目的とした際の作戦/采配に根拠を与える考え方
・脚光を浴び始めたのはここ20年前後と比較的新しい

かつてヤクルトスワローズを率いた名将、野村克也氏は「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」との言葉を残していますが、
セイバーメトリクスの視点を持っていれば負けた根拠はもちろん探れるでしょうし、もしかすると勝ちの根拠も探れるかもしれません。

野球をより楽しむための新たな視点としてより多くの方にセイバーメトリクスを知ってもらいたく、今後は様々な指標も解説して行きたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします!

【参考】セイバー勉強するなら

プロ野球・MLBが10倍楽しくなる! よくわかるセイバーメトリクス | 株式会社DELTA (deltagraphs.co.jp)
野球データの分析・研究を行う株式会社DELTAから発行されているセイバーメトリクス解説本。実際の選手成績も用いながら各指標の考え方・目的を解説してくれる入口にはもってこいの本です。

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One Point Zero Two|1.02 (1point02.jp)
株式会社DELTAが運営するデータサイト。セイバーメトリクス観点からNPBを分析したオリジナルコラムが分かりやすく、秀逸です。

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