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教師の心得 第4条 想像力をはたらかせる

◯ 氷山モデル

「そんなことをしてはいけません」

私たちは、つい、子どもの行動にこんな指導をしてしまいます。

子どもの行動や言葉の裏には、目に見えない理由が隠されています。

目に見えない理由を見ることで、問題解決に取り組む考え方が「氷山モデル」です。

海面に見える氷山は、海の中には、何倍もの塊があるということです。

◯ 目に見える行動や言葉の裏にあるもの

子どもたちの目に見えない行動や言葉の裏には、何があるのでしょうか。

例えば、自閉症スペクトラムの男の子が、落ち着かず、集中して課題に取り組めませんでした。
その時、「おそば食べたい…」とつぶやきました。

彼は、本当におそばが食べたいわけではありません。

次のような観点で見ていくことで、彼の言葉の意味が読み取れました。

・ 発達の段階
言語の獲得は、2〜3語文程度の段階です。
目の前にあるものや経験したことを、「誰が、どこで、何をした」や「何を、したい」と表現できます。

・ 家庭の様子
家族でいろいろなところに出かけ、外食することも多いです。
偏食は強くはありません。和食が好きで、外食が楽しみの一つです。
おいしいお蕎麦屋さんによく行くそうです。
出かけた時に、お母さんが「疲れたね。おそば食べようか。」と言っていたようです。

何度かそんな場面があり、疲れた時に「おそば食べたい」と言うようになったことがわかりました。

このように、目に見えない面を知ることで、行動や言葉の本当の意味を理解することができます。

目に見えない面を見るためには、想像力を働かせなければいけません。

◯ どうやって見るか

それでは、どのように想像力を働かせればよいでしょうか。
子どもの何を知れば、見えないものが見えるようになるでしょうか。

次の3点が、想像する手がかりになります。

① 目
② 言葉
③ 過去の行動

① 目

目は口ほどのものを言う、とは本当です。

「あんなところに面白そうなものがある!」
なんて言葉に出さなくても、子どもの目を見れば、そちらに向かって走り出していくのは想像できますよね。

子どもは見ていないようでも、好きなものはすぐに見つけます。

何に興味があるか、周りに何があるか、先生は先回りして周りの様子に目を向けておきましょう。

大切なのは子どもの目を見るだけではなく、先生自身の目を使うことです。

② 言葉

「わかりましたか?」と聞いて「わかりました」と答えるのは、「わかっていません」の意味です。

"専門性の高い想像力"をめざすなら、「わかりましたか?」と聞いてはいけません。
頭の中にある「単語」を引き出す質問をしましょう。

答えてほしい答えが帰ってきたら、次の3つの点で合格です。

一つは、子どもが覚えていて、正しく再生できたこと。
子どもにハナマルです。

二つ目は、先生の指導が適切だったこと。
指導が適切だっだから、子どもは頭の中から記憶を取り出し、質問に答えられたのです。

そして、三つ目は、先生の質問の仕方が適切だったこと、です。
質問の仕方が違うと、答えも変わってきます。
覚えたことにたどり着かず、迷走してしまい、結果「わかりました」ですませてしまいます。

子どもを単に「できた」「できなかった」で評価せず、何をどこまで理解したか、目に見えない頭の中を探る工夫をしましょう。

③ 過去の行動

想像力を働かせるためには、過去の行動の情報が大切です。
過去に何度か同じことをしていれば、当然再現性の高い行動が分かります。
「次もやるな…」とわかる、ということです。

もちろん問題行動だけではなく、学習したことも使えるということです。

さらに、その子どもだけではなく、他の子どもの例も駆使しましょう。
過去の行動は「データ」と考えましょう。

◯ 大切なものは…

このように、表面的には見えないことを、想像力をフルに働かせると、海の中の氷山が見えてきます。

海面に浮いている氷山が小さくても、海水には重く大きな塊があるはずです。
重さで沈んでいるからです。

「大切なものは目に見えないんだよ」
「星の王子様」のキツネの言葉を思い出しましょう。

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