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教師の心得 第10条 先手を打つ

これまで、教師の心得10ヶ条の9つまで説明してきました。

第一条 知的障害だからこそ丁寧に知的な面の発達を促す
第二条 見るだけではなく観察する
第三条 教えない 引き出す
第四条 想像力をはたらかせる
第五条 教師自身が教材になる
第六条 いっしょに遊ぶ
第七条 言葉を大切にする
第八条 心の底からおもしろがる
第九条 今まで育ててきた保護者に敬意を払う

どれも、そんなことは
わかっているよ、
ということばかりのはずです。

でも、いつも覚えていて、
かならず実行できていないかもしれませんよね。

しかも、どの心得も、
実は、常に学び続けなければならないないことばかりです。

知っている、と
できることは違います。

ぜひ、常に学びながら、
実践していってください。

そして、最後の教師の心得第10条は、
これまでの心得の、すべてにおいて必要なことです。

それは、

「先手を打つ」

です。

教師の心得の、極意です。

しかも、これは特別支援教育に限りません。
全ての教育の基本だと思います。

なぜなら、教育は全て
「意図的」「計画的」に行うものだからです。

「偶然成長した」というのは教育ではありません。
「偶然」さえも意図的、計画的に起こすのが教育です。

そして、先手を打つことで、
子どもたちが安心して学校生活を送ることができます。

保護者の信頼を得ることもできます。

先手を打つために必要なポイントは、3つです。

① アセスメント
② アンテナ
③ 知識

① 先手を打つための「アセスメント」

アセスメントとは、

検査や面談をはじめ、さまざまな方法を用いて子どもの状況を測定・評価しながら、そこから得られた情報を総合的に解釈し、その上で有効な方策を仮説として立てていく過程
みんなの教育技術

のことです。

子どものことがわからなければ、
先手を打つことはできません。
先手を打つために必要なアセスメントは、
子どもの行動面のエピソードではありません。

子どもの学習や遊び、言葉、態度などの行動が、
なぜ起こっているのか、を分析し、説明できることです。

なぜ、文字が書けるのか・書けないのか。
なぜ、ビーズとおしができるのか・できないのか。
なぜ、友だちに伝えることが難しいのか…など。

これらの行動について、
どんな力が関わっているのか、
わかっていなければなりません。

つまり、発達の道すじとつまづきの原因を客観的にとらえることです。

アセスメントとは、
「実態把握」ではありません。
実態把握とは、
今どんな状態にあるのかを見ることです。

アセスメントは、
その状態がなぜ起こっているのか、
これからどうなるのか、
どんな手立てが有効なのか、
を分析し、共有し、予測することです。

新学期、
アセスメントを基に個別教育計画を作成します。

新たな担任が、アセスメントを基に
保護者の知らない子どもの様子を伝えると、
「こんな短い期間にそんなことまでわかるんですか!」
と保護者の信頼を得ることができます。

先手を打つためには、
的確なアセスメントが大切です。

② 先手を打つための「アンテナ」

しかし、やみくもに先手を打つことはできません。

もちろん、全てのケースを想定していては、
いくら時間があっても足りません。

そのため、
アンテナを張り、
次に何が必要かを
常に受信することが大切です。

受信するためには、
チューニングが必要です。

子どもの発信する情報に
周波数を合わせる、
指向性を高める、
ということです。

特別支援教育のチューニングは、
子どもの頭の中に指向性を向け
家庭の周波数を
キャッチすることです。

子どもの頭の中とは、
何をどこまでわかっているのか、
今、何を見ているのか、
何に興味があるのか、
何をしようと考えているのか…
などです。

頭の中は直接目に見ることはできません。
しかし、
子どもの視線の先に何があるのか、
読める文字は何か、
昨日YouTubeで何を見たのか、
朝ごはんは何を食べたのか…
にアンテナを張って情報を受信します。

「過去」は「未来」を含んでいます。

たとえば、
集団からの飛び出しがある子どもに
刺激になるものは何か。
自傷がある子供は、
何を思い出しているのか。

あらかじめ想定していれば
大きな混乱や事故は避けることができます。

こうしたことは、
子どもの頭の中と家庭にチューニングしなければ、
見えてきません。

③ 先手を打つための「知識」

先手を打つために必要なことの3つ目は、
「知識」です。

特別支援教育の専門的な知識は
言わずもがな、です。

特に、学習指導要領に書かれていることだけではなく、
その背景となる考え方を知ることは、有効です。

学習指導要領を作った心理学者や教育学者が解説する本を出しています。

特に、心理学の先生が解説している本は、
小学校や中学校の子どもだけではなく、
障害のある子どもたちにも
当てはまります。

ぜひ、数冊読んで、
学習指導要領が示している言葉の意味を
より深く考えましょう。

そして、知識とは
専門的なことだけではありません。

子どもの家庭での生活についての知識も必要です。

家で見ているYouTube、
アニメ、ゲームはなにか。
キャラクターや技の名前まで知っていれば最高です。
「先生も知っている!」とわかると、
子どももうれしくなります。

さらに、家庭で使っている電化製品のことや
ペットの犬のこと、
新しく買った文房具のこと、
日曜日のお出かけするテーマパークのこと…など。

うまく言葉で説明ができない子どもが、
学校に来て呟いた単語の断片も、
家庭のことを知っていれば
意味が繋がります。

子どもを理解するための
保護者とのコミュニケーションも円滑になります。
授業の題材、教材を作る時にも、
そんな知識が生かされます。

日頃から、指導者自身の興味関心にとどまらず、
知識を広く、深く持つことで、先手を打つことができます。

先手を打つと幸せになる

どんな先手を打つことができるか、
と考えると、指導者自身が楽しくなります。

打った手がうまくいかなくても、
次にどうすればうまくいくか、
と考えるので、また楽しくなります。

「次こそは!」と、前向きに楽しみになります。

楽しそうにしている指導者を見ると、
子どもたちも楽しくなります。

楽しく学校生活を送っている子どもたちを見ると、
保護者も楽しくなります。

先手を打つと、みんなが幸せになれます。

教師の心得、
そして極意として、
先手を打ってください。

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