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社会とかかわる力を教科で育てる

社会とかかわる力とは

特別支援学校の目標は、子どもたちの自立と社会参加の力を育てることです。

障害のある子どもたち一人ひとりの「自立」と「社会参加」は、異なります。

「自立」とは、経済的な自立だけではありません。自分らしく生きていくことです。

「社会参加」とは、「してもらう」ことから「一緒にする」ことができることです。

周りの人と、時間、場、活動、そして気持ちを共有することです。

社会とかかわる力を支える「三項関係」

子どもたちの世界は、成長とともに家族から学校、地域へと広がっていきます。

社会科で扱う学習内容も、自分の住んでいる町から市、県、日本、世界の国々へと情報の内容も量も大きくなっていきます。

その土台となるのが、子どもと周りの環境との最小単位である「三項関係」です。

◯ 三項関係とは
自分と相手、自分と物という二者関係に対して、自分・物(対象)・相手の三者の間で行うやり取りのことです。

はじめに「わたしーあなた」の二項関係①が成立します。
主に、自分とお母さんです。

次に「わたしーモノ・コト」の二項関係②が成立します。
ガラガラやベビーベッドの上でクルクル回るモビール、口に入れても安全なおもちゃなどです。

その後に、「わたしーモノ・コトーあなた」の三項関係③が成立する、とされています。
お母さんやお父さん、おばあちゃんたちが、「ほらっ」と言いながら目の前でおもちゃを振って見せます。
興味のあるモノをもっと見たいときには、声を出したり泣いたりして周りの大人に伝えるようになりますよね。

 「わたし」と「あなた」の間に「モノ・コト」を置くことで、「社会」とかかわる学習がわかりやすくなります。

「三項関係」で育てる視点

◯ 三項関係を育てる6つの視点
このような社会とのかかわりの土台「三項関係」を育てるときには、次の6つの視点が考えられています。

「共同注意」
「情動の共有」
「目的の共有」
「役割の交替」
「状況判断」
「自己・他者理解」


◯ 「三項関係」を育てる手段
これらの視点を学校で育てるのは、授業です。
つまり、教科です。

どの授業、教科でも、この三項関係の視点で、子ども一人ひとりの課題を育てることができます。

① 「自分(わたし)⇄相手(あなた)
1) 音声言語(聞く、話す)
2) 文字言語(ひらがな・ カタカナ・漢字)
3) する ー される、あげるーもらう
4) 大人→ 子ども、してもらう→一緒にする
5) 1対1→ 多対1 → 1 対多
6) 社会性

② 「わたし⇄モノ・コト」
1) 知覚・認知
2) 興味・関心
3) 操作
4) 用途・目的の理解
5) ものの名前(音声・文字)
6) 教科等

③「わたし⇄モノ・コト⇄あなた」
1) 心の理論
2) 関係性の理解

モノ・コトを子どもとの”距離”でとらえる

また、子どもとかかわるモノ・コトを、距離でとらえると、学習する課題を考えやすくなります。

「家」と「学校」でかかわるモノ・コトは、自分に「近い」ところにあるので理解しやすいですよね。

「地域」「社会」とその距離が遠くなると、かかわるモノ・コトの理解は難しくなります。
目の前にないモノ、経験したことがないコトが増えるからです。

小学校の生活科や社会科、家庭科の単元は、まさに家庭から社会へと系統的に配列されています。

また、モノ・コトは、時間的な距離でも考えられます。
「これがおわったら」というすぐ後の時間や「昨日」の出来事、「次の日曜日」のお出かけ、「来月」の校外学習…など。
さらに、歴史では「江戸時代」、理科では「植物の成長」、「職業」では将来の社会生活など、現在から「近い」「遠い」と捉えることができます。

子どもとかかわるモノ・コトを、時間的な距離で考えると、子どもがどこまで理解できているか、なぜ理解が難しいのかをアセスメントしやすくなります。

モノ・コトと子どもとの空間的、時間的な”距離”を伸ばすことが、教科の系統性と言えます。
教科の内容を学習することで、「三項関係」を広げ、多くの人とイメージを共有できることにつながり、社会とかかわる力となります。

〈参考文献〉

◯  <特別支援教育の授業づくり>「社会とかかわる力」を育てる! 6つの支援エッセンス
 北村博之他著
◯ 「児童生徒の社会性を育むための生徒指導プログラムの開発」国立教育政策研究所生徒指導研究センター

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