言葉の獲得のメカニズム 〜制約理論〜
言葉を獲得する時のメカニズムに
「制約理論」というのがあります。
「制約理論」とは、
子どもが生まれたときから制約があることで、
モノの名前を効率よく覚えることができる
と言われるものです。
次の4つの制約が提唱されています。
①相互排他性制約
②急速投射制約
③全体物制約
④分類制約
一つずつ解説します。
① 相互排他性制約
ものは名称を一つしか持たないとすること。
厳密に言うと、一つのものでも種類や固有名詞はあります。
しかし、母親が赤ちゃんに犬を教えるとき、「ほら、樺太犬の太郎よ」とは言いません。「わんわん」ですよね。
これはスキャフォールディング(足場かけ)と言われる働きかけかたです。
② 急速投射制約
名前を知っているモノが目の前にある時に、違う単語を言われたら、名前を知らないモノのことだと思う、ということです。
犬を「わんわん」と知っている場合、「ニャーニャーもいるね」と言われると、隣にいる初めて見る猫のことだなと思うことです。
③ 全体物制約
新奇な単語を新奇なもののあるところで聞くと,その単語はそのものの全体を指し示すと理解すること。
初めて動物園で見た「ゾウ」に、親が「ほら、ゾウさんだよ」と言うと、「鼻」や「灰色の肌」のことや「動いている」という意味ではなく、動物そのものの名前として認識する、ということです。
④ 分類制約
新奇なものの名称を教わると,
子どもはその解釈を特定の分類学的カテゴリーに限定すること。
犬のことを「わんわん」と覚えている子どもが、
初めて見た馬を「わんわん」と呼ぶことはあるが、
車を見て「わんわん」と言うことはありません。
指導に生かす
どの制約の現象も、不思議ですよね。
生まれたときからこのような「制約」があるため、
言葉を効率的に獲得していくことができると言われています。
言葉の獲得が遅いと思われる子どもでは、
この制約がうまく働かないことがあるのかもしれません。
このようなメカニズムを知っていると、モノの名前、状態、動きの様子などの言葉を学習する時に、提示の仕方を工夫することができます。
私たち大人も、リンゴの絵カードを見せられれば、「全体制約」が働いて、はじめに思い浮かべる言葉は「りんご」ですよね。「赤」や「ツルツル」ではありません。
もちろん、「バナナより丸い」とか「赤と黄色」などの言葉も、まっ先には出てきません。
そのため、色の「赤 あか」の学習をするのであれば、
色に注目させる教材を工夫する必要があります。
例えば、りんごの形にくり抜いたシートの下に、「赤」の色画用紙を重ねて、「何色?」と聞きます。
「あか」と答えれば、色画用紙を抜き出して見せ、「そうだね、あか、だね」と確認します。
もし、「りんご」と答えれば、一度赤の色画用紙を抜きます。そして、りんごの型抜きに色画用紙を少しずつ入れながらもう一度「何色かな?」と聞きます。
少しずつ赤が見える部分を増やすことで、色に注目させることで、「急速投射制約」を活用した提示の方法です。
「りんご」ではなければ、「あか」のことだな、と注目させています。
このように、制約理論を活用して、「仮説ー実践ー検証」のサイクルを高速で回し、効果的、効率的に言葉の獲得を促しましょう。
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