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マリオの面白さの秘密を学校に生かす

スーパーマリオブラザーズ開発者 サイトウ・アキヒロ先生(亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授)の記事を読み、学校でも生かせるな、と感じました。

みらいぶプラス「スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか
~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

マリオの面白さの主な秘密は、次の3点が示されていました。

①ゲームの基本ルールをマニュアルを使わずに伝える
② 「発見する喜び」を用意する
③ 「段階的に難しくなっていく」

これをどのように学校に生かすことができるでしょうか?

①ゲームの基本ルールを、マニュアルを使わずに伝える

サイトウ先生は、スーパーマリオの基本アクションは、「敵をよけながら横に移動する」「ジャンプする」「ブロックを叩いてアイテムを入手する」の3つと述べています。

まず右に移動することを理解してもらうために、スタート画面でマリオを左端に置いています。
少し進むと敵か味方かわからない何か(クリボー)が出てきます。触るとあっという間にやられてしまい、開始2秒で「敵」だとわかります。
次は恐る恐る進んでいくと「?」が出てきて、ボタンを押すとジャンプすることがわかります。
そして頭がぶつかると、コインやキノコが出てきてパワーアップするぞ!となります。

このように、ゲーム開始15秒で、マニュアルを読まなくても基本的な動作が理解できるようにデザインされているそうです。

さて、学校の授業はどうでしょうか?

わからなければ、机に突っ伏して授業が終わるまで待つ。
答え合わせは、先生が「ピンポン」と言えば正解。
先生が「自由にどうぞ」と言うので、好きなキャラクターだけを選ぶ。
先生の説明をじっと静かに聞き、子どもの活動は数秒で終わり。

こんなルールになっていませんか?

研究授業を参観して、よい授業だなと思うのは、途中から教室に入っても、今なにに取り組んでいるのか、なにを考えればいいのか、がわかるアイテムが配置されています。

板書や掲示物、教材、教具など、すべてが課題に取り組むようにデザインされています。

だれでも、一目で、説明いらず。だけど、頭はフル回転。
先生も、授業デザインの基本ルールを探ってみてください。

② 「発見する喜び」を用意する

スーパーマリオには、難しい仕掛けの前には必ず抜け道を用意しているそうです。

アクションの苦手な人でも先に進むことができて、マリオの面白さを知ってもらおう、もっと先へ行きたいという意欲を刺激しよう、という仕組みです。

ただ下手だから抜け道へ逃げるのではなく、抜け道を発見した、という喜びを用意することが大切です。
しかも、抜け道にたくさんあるコインをいっぱい取れることで、「自分はダメ感」を減らし、ユーザーのメンタルな部分に配慮しているのです。

授業では、子どもがわからない時、できない時にどうすればよいか、手立てを用意していますか?

「できなければやらなくていいよ」と言う指導者がたまにいますが、それでは授業をやる意味も、ましてやチャレンジする面白さもありませんよね。

できることとできないことの間、助けがあればできるゾーンを、ソ連の心理学者ヴィゴツキーは、「発達の最近接領域」と呼び、まさに教育であると示しています。

達成は難しいけれど、あらかじめいくつかのツールを用意して選べるようにしておきます。
そうすれば、チャレンジしてできなくても、アイテムを自分で選んで、さらにチャレンジできますよね。

③ 「段階的に難しくなっていく」

「段階的に難しくなっていく」のもポイントです。

さすがにこれは、先生たちにはあたりまえの授業デザインでしょう。

マリオでは、最後は、階段をタイミングよくジャンプして旗竿の一番上に行きます。
1段ずつきれいにジャンプしながらポーンと飛ぶのは難しいので、一つ手前に練習ステージを作ってあります。誘導と練習のための場所を作ってあげることで、上達感が味わえ、ゴールできて達成感が得られます。

このように、マリオの画面に出て来るものには、全て理由があり、しかるべき場所に置いてあるのです。

授業でも、題材の難易度は考慮されていることでしょう。
しかし、提示する条件の数は意識していますか?
いきなり4つも5つも同時に提示していませんか?

「ゲームニクス」

こうしたマリオの面白さの秘密は、サイトウ先生が名付けた「ゲームニクス」という概念で説明されています。

「ストレスと快感のバランス」が、おもしろいゲームを作る上で一番大切なポイントである、ということです。

授業のデザインにもなくてはならない考え方ですね。
授業の達人の先生たちは、無意識のうちにゲーム作りの極意と同じ視点で授業をデザインしています。

そんな先生の授業は、どの場面でも、子どもが課題に向かって頭と体と心を最大限に使ってチャレンジする姿が見られます。
ゲームニクスから考えると、適度なストレスがなければ面白くない、と言うことになります。

授業を見ている私たちも、「できるかな…」「わかるかな…」「どんなふうに解決するんだろ…」と、ワクワクドキドキすること請け合いです。

ぜひゲームづくりの秘密を、授業のデザインに生かして、授業を受ける生徒も、授業を作る先生も面白がってほしいと思います。

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