【1夜目】スタア
5時に起きてごはん食べたあと勉強してた
ちょっと疲れたので仮眠とったらこんな夢を見た
冬の北国、音楽フェスの会場にいる。
まわりにはまだ雪が残っていて、朝のキンと冷たい空気のなか、空はきれいに晴れ渡っているんだ。絵具みたいに一色のスカイブルーが広がっていて、白い太陽が鋭く輝いている。
リハーサルかと思うほど客足はまばらで、周りに置かれた黒いごみ袋が目立っている。
全員アフリカ系の見たこともないバンドが演ってるのを遠巻きに観ていた。
ボーカルが日本語ペラペラだったのが印象的。でも音楽は覚えていない。10人くらいのバンドでスカみたいなやつだったと思う。
そのうち、ステージがひときわ盛り上がったので前にほうに行ってみると、人気のあるミュージシャンたちがゾロゾロ登場してきた。
最前列で興奮しながら見ていたら、そのスターのなかに白いステージ衣装の男性がいた。
この人を俺は知っている。
正確には、現実世界では会ったことも見たこともないんだけど、夢の中では以前から知っている(と思う)。彼も俺のことを覚えてくれていて、まっすぐ歩いてくると笑顔で「よぉ、久しぶり!」と声をかけてくれた。驚いたのは、服だけじゃなくて髪も真っ白、顔も真っ白(歌舞伎役者みたいにホントに真っ白)なこと。よく見るとすでに爺さんに近い年齢で、しわも多い。でも相変わらずカッコよく、いつもの屈託のない笑顔で気さくに話しかけてくれた。
だから俺もすぐに気を取り直して、笑いながら「そのうち、また来るから」といった。「いつごろ?」と聞くので「あと何年か・・・そう、あと1、2年したらまた来る」。すると、彼は少しだけ顔を曇らせた。一瞬だけだったけど、それがものすごく寂しそうで、でも今の俺にはどうすることもできなくて、あいまいな笑顔のまま、ただ彼を見つめていた。
彼はすぐに表情を取り戻すと手を振りながらステージ中央に戻っていった。そして往年のように歌いながらステージを駆け回りはじめた。でももう歳だから、ちょっと身体がついていっていない。それが見ようによっては滑稽で、まわりの若い子たちは少し嗤っている。でも彼は気づいていないのか、気にしていないのか、必死にステージングを続けている。昔みたいには全然できていないんだけど、それでも何とかやろうとしている。本当はもう引退していてもいいんだろうけど、でも現役で。昔のカッコよさを知っているだけに、見ていてツライ。
そういう「もろもろ」をぜんぶ度外視して、結果だけの滑稽さを嗤っているまわりの若い子に、猛烈に腹がたったんだけど、でも何もできなかった。それがまた寂しかった。