吞兵衛の、吞兵衛による、吞兵衛のための町「立石」。
この町にあって、いまも鮮やかに記憶に残っているのは、飲み屋ではなく「立喰 栄寿司」という寿司屋なんだ。
「よし、きょうは 寿司を食べに行くぞ」
朝っぱらから一張羅の背広に袖をとおした親に手を引かれ、電車に揺られて京成立石へ。すでに開店前から行列で、ようやく中に入ったと思ったら、淡々と食って店を出る。
「うまかったな」
「うん」
それだけ。
お洒落していくような店じゃないんだよ。立ち食いだから落ち着かないし、店内は殺風景で、あまり清潔とはいいがたい。でも安くてうまい。
けれど、しばらくこの町から足が遠ざかっているうちにコロナが広がり、町も変わり……そして、歴史ある駅舎にも最期の時がやってきた。
2023.11.25
喜びと感謝のうちにイベントはおわった。
まもなく工事が本格化し、次の春には駅舎も大きく変わっているだろう。
この町はさ、とにかく気さくなんだ。
ぜんぜんオシャレじゃないし、酔っ払いやガラの悪いおじさんもいっぱいいるけれど、酒も飯も安くてうまい。
立ち食い寿司屋で
「うまかったな」
「うん」
そんな町なんだ。
「また来るか?」
「うん!」
イベントの終了間際に、主催者から声が上がった。
「みなさん、おみやげのチューリップの球根をぜひ植えてくださいね。花が咲くころには工事も進んで、新しい姿が見られるはず」
新しい命が芽吹き、花を咲かせるころ、みんなは再びあつまって酒を酌み交わすんだろう。なんとも楽しそうに、そして実にうまそうに😁
過去を誇り、未来への期待を語るんだ。
不安がないと言ったらうそになる。だれだって、不安を抱えながら前を向いて進んでいるんだから。
そんなみんなの鼓動が、この町を突き動かしているのかな。
マスター、もう一杯ちょうだい!😋