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【Zatsu】次のトレンドを考える7

みなさんこんにちは。シリーズ「次のトレンドを考える」のお時間です。
第7回は、新しい空間プロデューサーを考えるです。

空間デザイナー、空間演出家、あるいは空間コーディネータなど、類似の表現は多数見られますが、ここは空間プロデューサーでひとくくりにさせていただきます(乱暴? ハイハイ、御明察)。

ひとむかし前はあやしいカタカナ商売があふれていたけれど、この令和の時代において生き残っているということは、「空間プロデューサー」は世間でも一定の認知が得られたということだろうね。

空間の話をするなら避けて通れないのが「こう」の概念。たとえば、普段の長距離移動手段といえば、たいていの人は自家用車か、あるいはバス・電車などの公共交通機関でしょ。
自家用車のなかは完全に自分だけの空間、「私」のスペースだよね。スピーカーから聞こえてくる音楽にあわせて大声で歌ってもいい。フォーマルスーツの上半身に、だらしない恰好の下半身でドキドキ運転ドライブおおいに結構。各自が自分の好きなように空間をアレンジすればいい。いってみれば、各々がセルフ・プロデューサーというわけだ。
一方で、公共交通機関だとそうはいかないでしょ。みんなが快適に過ごせる空間をデザインする必要があるんだ。

そこで、空間プロデューサーを自認するおれが普段からなんとかしたいと考えていたのが電車、それも地下鉄の車内です。
地下鉄ってとにかく騒音がすごいじゃない? 掘削工法の違いや列車のスピードにもよるけれど、あまりにうるさくて、となりの人とまともに会話できないことも多い。かねてから、なんとかできないかと思っていたんだ。

そんなある日、都内の某地下鉄に乗っておどろいた。ものっすごく静かなんだ。なぜだろうと思って見回したら、おそらくこれじゃないだろうかというヒントを見つけた。それがこちらです。


そこじゃありません。 もっと上!


天井の中央が蛇腹状になっているでしょ? 空調機器は天井の左右にあるから、中央の蛇腹部分はエアコンではない。となると、なんだ? ここからはあくまで想像なんだが、騒音緩和を目的としたデザインではないかと思っている。

音は空気の振動なのでのっぺりとした平面にぶつかると反射する。これが地下鉄の車内でとんでもない騒音の原因となる。ところが、天井の表面形状を複雑にして表面積を増やしつつ反射角度も調整することで反射率を下げたり、音同士が打ち消し合うなどの効果が期待できる。ちょうど防音室の壁の穴と同じ原理だ。
その結果、ほんとびっくりするくらい静かな列車内に感動すら覚えた。

しかし、だ。おれの心にひとつの疑問が浮かんだんだ、これでいいのか、これがほんとうに理想の地下鉄の車内なのか? と。

いまはまだ過渡期なんだろう。静かな地下鉄もあれば、轟音をとどろかせながら疾走する地下鉄もある。でも、いずれこの蛇腹天井の技術が発展していけば、あらゆる地下鉄の車内が図書館のようにしんと静まり返るようになる、そんな時代が来るかもしれない。

けれど、EV車があえて疑似エンジン音を搭載するように、地下鉄も騒音がないと落ち着かない、うるさくてナンボだろ、ああ騒音が恋しい、そんな揺り戻し運動が起きないとも限らない。
一方、蛇腹効果による静かさを歓迎する客も一定数おり(というかそっちが多数派か)、公共交通機関という「公」の空間をプロデュースする立場としては、みなさんに等しく快適さを感じていただくために頭を悩ませるところだ。

でもさ、さきに結論を言ってしまうとそんな都合のいい車体なんてないんだな。今の世間の流れから行くと静かな車体を基本とせざるを得ない。そのうえで、「騒音のない地下鉄なんて味気ない、少しくらいうるさくないと雰囲気が出ないよ」という人向けに、オプショナル・サービスで対応しようと思う。

まず改札を抜けて構内に入ると、すぐわきに格子状のパネルがある。顔写真が載っており、指名すると一緒についてきて列車に同乗するんだ。あいていた椅子にふたり並んで腰かけ、自分はスマホを適当にいじりはじめるんだけれど、その人は前を向いたまま微動だにせず。
そんなことをしている間にドアは閉まり、列車が走り出す。みんな手元でタブレットやスマホをいじっている。静まり返った列車内……のなかで、自分の隣から何か聴こえてくる。

んんー、んんー、ガタンゴトン、ガタンゴトン……


あれ、なんだろう、このなつかしさ。そう、そうだよ、地下鉄ってこういうものだよ。ウトウト😴

そして列車がカーブに差し掛かる。その人はおもむろにこちらに向き直ると、耳元で声を荒げて

ギィィィィ、コホォー!


と叫んだかと思えば、駅に着くとおもむろに立ち上がり、去っていく。
これで5万円は安いとみるか、高いとみるか。でも個別対応だからね。指名料も入っているし。
古き良き地下鉄空間をお届けする、まさにプロの職人芸。これを「地下鉄うるさい屋™」としていま各方面へ売り込みに躍起になっているんだが反応がイマイチで戸惑っているんだ。

タレントは常時多数取り揃え
路線ごとに専門アリ
主要駅には相談カウンターも設置しています

いま気づいたけど、これを運営しているおれは少なくとも空間プロデューサー……ではないな😝


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